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歪みの苑  作者: みづき
二章
22/82

<11>

「――嗅ぎまわっておられるようですが」

 黒い闇に身を包んだ老いた男――ドーリックは、目の前にいる主を見つめた。

「そうみたいだな」

「よろしいのですか」

「どうせわからない」

 あの日と違ってこの部屋は明るいのに、主――彼の表情はぞっとするほど無表情だった。

 何が彼をここまでするのか。

 彼ならここを出ても十分生きていける。障害は多いが、彼ならできるだろう。

 なのに、この部屋の主はここから出て行こうとしない。

 ドーリックにとって、彼が幸せになってくれるのが一番の望みである。そのためなら、何でもしようと。

 部屋の外から、わずかに声が聞こえる。途切れ途切れの声は、主に使われる廊下からはかなり遠いことを知らせる。普段からあまり人を寄せ付けないからなのか、訪問者は限りなく少ない。

 老人は俯き加減だった顔をあげ、

「本当にやるのですか?」

 と聞いた。

 彼のためなら何でもしようと思う。けれど、今回はどうなのだろうか。

「俺に口答えするのか?」

 ふっと、瞳が細められる。

 射るような眼差しは底なしの憎悪に塗り固められ、それは今でもふつふつとつのっていく。

「……いえ」

 日の差し込む今はずいぶんと目立つ、闇を纏った男は頭を垂れる。

「――あなたの、御心のままに」

 主である彼の後ろには、大きく構えたカルティア城があった。

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