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第二五話 魔法の顕現

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「んなの後で良いでしょ?」

「良くない。大いに良くない。主にこのマントを持っているというのが良くない」

 ちっちっちっちっ、と小さく舌打ちを繰り返すミト。どうやらこれは彼が怒ったりいらだったりした時の癖らしい。

「でもさ、魔法も駄目、剣も駄目、しかも抜けられない空間と来たらもう手出しできないんじゃない?」

「だから!抜けられるように考えるんだろ?!」

「無理無理。頭の回転があまり良くない僕たちが考え込んだところで何がわかるのさ」

「それはっ、それ……は、ううううう」

 けらけらと笑いながら返されたチャルスの台詞に、頭を抱えてうずくまるミト。

「ほら、だって僕たちって特待生扱いだったし。もちろん剣と魔法だから学力とかは関係なっしんぐ」

「思い出させるなテストの成績を」

「毎回テストの後は地獄の補習だったよね。哀れに思った上級生たちがあげくの果てに勉強を教えてくれるようになるまでだったし」

「もう聞きたくない」

「それでも僕はまだ大丈夫だったんだよ、ワカちゃん。ミトは本当に酷くてね」

「ふえっ?!」

 いきなりお(はち)を回されたワカはびっくりして変な声を出してしまう。

「ふえって……可愛いなぁ。反応とか人間と何も変わらないじゃんか。本当にホムンクルスなの?」

「その疑問二度目ですね」

「いいじゃん教えてくれたって」

 ねえねえ、と頭を撫でくり回された。

「……そうだ」

 その時、ワカの頭にある一つの案が浮かんだ。

「ホムンクルスについてもっと教えてくれたらホムンクルスにしか出来ないことをしてあげても良いですよ?」

「「え、本当?」」

 ちょっと待てなぜミトが(よみがえ)っている。

 そして異常なまでに食いつきの良い二人に、ワカは軽く引いたのだった。


「えっと、僕が知ってるのはあれかな。主人の命令は絶対って」

「もう聞きました」

「俺の知っているのはあれだな。『変身』出来るって」

「それも聞きました」

「じゃ、じゃあ『変身』するとき服の生成が出来ないって」

「身をもって知ってます」

「……すまん、もう知らない」

 二、三既知のことを言っただけで二人はへばった。

 ああでもないこうでもないと頭を絞り始める二人に、ワカは苦笑する。

「代替案で行きましょうか」

「「それでお願いします」」


 結局ワカが出した案は、二人に一つずつ魔法を教えてもらったら(服があるなら)『変身』しても良い、というものであった。

「えっと、まずは体内にある魔力を感じるんだ」

「どうやってですか」

「ミト、どうやるんだったっけ」

「多分、目を閉じて集中すれば良いんだろう?」

「多分って何多分って」

「完全に覚えてない奴には言われたくないな」

「それもそうですけどぉ」

 終始このような状態で、放っておいたらコントが始まるという。

 漫才では無い。コントだ。少なくともワカはここに至るまでに四つは小ネタを見た。全部微妙に笑える内容だったというのが何とも残念な感じを(かも)し出している。

「とりあえずワカちゃん、目を閉じて集中してみて」

「は、はい」


 とりあえず言われた通りに、目を閉じて、集中。

「で、後はどうするんだったけ」

「俺に訊くんじゃない」

 集中。

「ミト以外に誰に訊くのさ」

「空気に」

「訊けないからね?精霊とかだったらまだしも空気と話してたら僕不思議ちゃんだからね?!」

 集中。

「不思議ちゃんで済めばいいけどな」

「え、じゃあ何になるって?」

「そろそろ疲れたのだろう、住処(すみか)へ帰れ、という強制コマンド」

「それクビだよね!僕まだクビにはなりたくないから!」

 ……集中。

「お前が伝説の王様近衛症を発症するとはな。ゆっくり療養しろ」

「確かにあの王様といたら毎日心は病みそうだけどっ。そんな優しい目で僕を見ないで!泣いちゃうから!」

 …………集中、出来ない。

「すいません、ちょーっと静かにしてもらえます?」

「チャルスが邪魔をしたな、すまん」

「主に邪魔したのミトだから!僕は被害者だから!」

「「うるさい」」

「ごめんなさい」


 静かになったところで、ワカは再び集中。

「……お?」

 他のところとは少し違う、何か温かい物が身体の中に。

「ワカちゃん、何かつかんだ?」

「えっと、温かいです」

 即座にミトの口からぽつりと。

「それは心臓だ」

「「え」」

 まあ。

 言われてみれば、何か脈打っているような気がしなくもない。

「心臓の感覚つかむってどれだけワカちゃん集中したの」

「わかんないです」

 しかもそんなのあまりつかみたく無かったな、と内心うげっとしたワカ。

「チャルス、うるさいぞ。えっと……ワカ、ちゃん。魔力って言うものはもっと何かこう、硬い感じがするんだ」

「あれ、ミトが人をちゃん付けするの珍しいね」

「うるさいぞチャルス」

「黙っててください」

「あれ、何だろう、目から塩分が」

「身体の中に宝石があるみたいな感じか。そんな感じだ。それを念頭に置いた上で集中してみろ」

「はい」

 集中、集中。

「……お?」

 ころり、と何かが身体の中で転がるような感覚。

「つかんだか?」

「あ、はい、多分これです」

「じゃあ話は早い。丁度良いことにここには魔法を受けて傷つくようなものは無い。向こうに思いっきりそれを投げつけるんだ」

「……投げつける?」

「そう。本来は修練場とかでするんだが、それが一番手っ取り早くて扱いやすい魔法だ。属性も確かめられるしな」

「えっと、これを、」

 ワカは胸に手を当てた。中にある硬いものを取り出すようにイメージすると、それは手のひらに移る。

「向こうに、」

 向こうとは本来ワカたちが進もうとしていた方向。ワカはそれをぐっと振りかぶって、

「えい」

 投げる。


 ぷつ。


 そんな気の抜けるような音がしたと思ったら、

「「「…………え?」」」

 ワカたちの前には、険しい顔をしたハバモンドが立っていた。



 ハバモンド は おこっている !



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