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第二四話 レクチャー開始

多少短めです



「王様って、あの王様ですよね?」

 わたわた慌て始めた二人に、ワカは冷や汗ぽたりそう訊ねる。

「「いえすあの王様です」」

 綺麗にシンクロして目が死んでいる二人。予想を裏切らないその答え。

「どうしようほんとどうしよう」

「何で俺こんなん掴んで来たんだろうか」

 ぐへぇ、と何とも形容し(がた)い表情を浮かべるミト。

「ほんとに僕の非番が潰れたらお前のせいだからなぁ」

 今にも溶けそうにでろでろしているチャルス。

 王様、王様。

 この状況をどうしようか考えている内に、ワカの脳裏に浮かんださっきのあの光景。

「にっぎゃああああああああああ!!」

 ぼっと火の出そうに真っ赤に染まった顔を手で覆って、ワカはしゃがみこんだ。

「「ワカちゃん?!」」

 はっと気が付いたように現実に立ち戻った二人に心配されるが、今ワカはそれどころではない。

「とまれとまれとまれとまれどっかいけえいぞうどっかいけぇぇぇ」

 口からはひっきりなしに怨嗟(えんさ)の声が。

 それを見た二人は悟った。ワカはきっと王様のことでトラウマを抱えているのだと。

 言葉なんか無くても分かる。だってあの王様のことだもの。でもこの格好良い台詞はもっと他のところで使いたかったかも知れない。

「……おとなしく返しにいくか」

「それがいいよね、きっと」

 自分たちに極力トラウマを残さないためにも。

 理解した二人は、同時にため息を吐くと床に置いていた王様のマントを手に取ったのだった。


「……え、何で私抱えられてるの」

 正気にかえったワカがふと気付いてみると、そこはチャルスの腕の中。

「んー、あんなところに一人放置してくのも可哀想だと思ったからかなあ」

「てか降ろしてくださいいい」

「え、何で?」

 チャルスは美形であった。

 王様見たいなオーラを発していないだけ間近で彼の顔を凝視するはめになったワカは、顔を真っ赤にして黙り込んだ。

「しかし歩けども歩けども王様の私室に着かないのは何なんだろうか」

 不満そうな表情で呟くミト。


 てくてくてくと、マントを片手に廊下を闊歩(かっぽ)中の三人は気付かなかった。

 自分たちが実はどこを歩いているか分からないことさえも。

 違和感は無い。

 しかし、無いことこそが違和感なのだ。

 王様の部屋に近づきつつあると言うのに、全くもって両側の部屋の構造が変わっていないと言うこと。

 それに最初に気付いたのは抱えられたままで歩いていないワカだった。

「……ね、さっきから人の姿を見かけないんですけど」

 あたりをきょろきょろと見回しながら、不思議そうに一言。

「え?」

 その言葉につられて同じく周りを見回したチャルスも首を(かし)げる。

「あ、ほんとだ」

「何だって?」

 ミトもきょろきょろ。

 二人合わせて、足を止めた。

「おかしいな、王城でこんなに人がいないことなんて無いのに」

「そうなの?」

「うん、こんなに前を見ても後ろを見ても誰も見えないってのはありえないんだよね」

「普通はな」

 チャルスの後を継いで、ミト。

「まあ何がしかに巻き込まれたと見た方が良いかも知れないな」

 うーん、とワカはその言葉に首を傾げた。

「でも、私がミトさんとチャルスさんと会うまでもこんな感じだったんですけど?」

「「え?」」

 良くシンクロする二人だなあ、と。

 言葉が出かけたのを抑えて。

「だって私、言ったでしょう?何でこんな人通りって」

「あ、確かに」

「と言うことは、この場所が問題なのか」

 小難しい顔してミトが呟くが、何かどう見ても宿題忘れてきて先生に怒られている図のようにしか見えない。

 だって子供。青年と言うより少年。

 自分のことは棚に上げて、ミトを見ながらそう考えるワカであった。


「んー、ドアは開かないみたいだね」

 がちゃこがちゃこと両側に並ぶ扉のドアノブを回してみるチャルス。しかしノブはびくともしない。

「……魔法も跳ね返るみたいだ」

「あれミト、どうしたの?大丈夫?」

 チャルスの視線の先には、髪の先をちょっと焦がしたミトが。

「大丈夫。うざい」

「酷い!」

「子ども扱いするなっ」

 一応自覚はあるらしいミト。まあ確かに子供なんだけど。

「成長期はまだ来ないのかな?」

「うーるーさーいー」

 ……うん、二人とも子供だ。

「ああ魔法使うとこ見逃した」

「え、ワカちゃん魔法見たかったの?」

「うん。て言うか、使いたい、です」

「じゃあ僕が教えてあげよう」

「チャルスさんが?」

「こう見えて僕魔法剣隊だからね」

「まほうけんたい?」

 また知らない単語が出てきた。

「……なあ、で、どうするの?」

 ミトが苦虫でも噛み潰しそうな顔で。

「魔法の話?」

「閉じ込められたかも知れない話!!」

 それはそれはいらっときているのがとても良く分かる語気でした。



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