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第二二話 本性ってものすごく怖い

お気に入りがお気に入りがお気に入りが……っ!


ありがとうございますありがとうございます


ハバモンドと王様がいちゃつきます。そういうのが嫌いな人は回避してください。




 何が、あったのだろう。

 ワカは予想を越えた事態の連続に、途切れがちになる頭で考えた。

『おねえさま』

 横に浮かぶユリシェリナが心配そうに。

「……う、ん、大丈夫」

 ワカはふうっとひとつ大きく息を吐くと、少し落ち着いた。

「……お父様、何やってるんだろう」

 いきなりといっても良い程に王様にべったべたされているハバモンドは、騒ぐ周りを押しのけてまたワカたちの方へ。


「や、ごめんねワカ、リズ、心配かけて」

「即刻説明を要求します、お父様」

『そっこくせつめいをようきゅうします、おとうさま』

 ぽかんと半ば放心状態でワカの言葉に続く、ユリシェリナ。

 だって、王様の目が何か既に危ない人のそれ。

「ライナス、ライナス、こっち向け!」

 そして言動もどこか変。

 ハバモンドはそれに苦笑すると、ワカたちに。

「ごめんね、ちょっと矯正する。リズは見ないほうが良いよ。できればワカも」

『はいっ。うしろむいてる!』

 くるりとハバモンドに背を向けるユリシェリナ。

「え、一応見ておきたいな。今後何かあった時のために」

 何があるんだ、とは突っ込むほうが負けである。

「んー、覚悟しといてよ?」

「ライナス、何をするんだ?楽しいことか?」

 ハバモンドの声を聞く(たび)頬を赤く染めて焦点拡散中の危ない目を輝かせる王様は、ちょっと見ない方向で。だって目に毒。一応はキラキラなオーラが出てますから。

 って言うかハバモンドの口調もどこかおかしい。

 言外に猛毒を含んでいると言うか、何と言おうか。

 正直、怖い。

「えっと、ちょっと使用人さんとか近衛さんたち、王様を部屋に引きずってって良いかな?」

 軽く首を傾げながらド迫力なハバモンドに、皆様(そろ)って勢い良く首を縦に振ったのは言わずとも伝わるであろう。



 ふたりしてぽかんぽかんしたワカとユリシェリナは、まず足取りに何の迷いも無くハバモンドが城内を闊歩(かっぽ)していることに驚き、だらしのない笑みで王様がそれに付いて行っていることに驚き、そして王様の私室の広さに驚いた。

 広いなんてもんじゃない。こんなのが一個人の私室として存在することが問題で罪だと声高(こわだか)糾弾(きゅうだん)出来る程の広さ。

 その部屋の中にあったこれまた大きなテーブルの周りに無造作に散りばめられた椅子の一つにワカは腰掛け、何かおかしい二人を少し遠くから眺めていた。物理的にも心理的にも。

 ちゃんとユリシェリナは後ろを向いている。そして耳も押さえている。賢明な判断だろう。


 さて、ここまで細かにワカが部屋の描写をしたのには理由がある。

 ふっふふふ、目の前ではちょっと理解したく無い光景が繰り広げられているのだ。

「ティル、久し振りだからひとつだけ願いを聞いてあげよう。私に何をして欲しい?」

「いじめて欲しい!」

 誰か、誰か来てくださぁい!

 末期患者が二人もいます!一人は既に瀕死(ひんし)です!

 ワカは心の中で大きく叫んだ。

 本当に声に出さないのは双方ともから(すさ)まじい殺気……もといキラッキラオーラが発散されていて、ワカが目をそらすことすら出来ない状態であるからだ。

 ああ、必死に猫耳を押さえるユリシェリナの何と可愛らしいことか。果てしなく和む。

「最近は叱ってくれる人が増えたがそれでも皆叩くには至らないのだ。だからライナスを心待ちにしてたんだよ!ライナス、僕のライナス、僕はいっぱい悪いことをしたんだ。叩いてくれ!」

 助けてください。

「それは残念だったねティル。では心ゆくまで叩いて差し上げよう。でもそれが終わったら正気にかえらないといけないよ?」

「かえる。かえるから、早く!!」

 助けてください。

「それなら王冠は外しておかなければいけないね。ほら、頭をこっちに向けて」

「うん」

 助けてください。

「……はい、取ったよ。じゃあ」

 ばしん。

 小さな音。

「はぁあ、これだよこれ!ライナス!」

 王様が、うっとりしながら頬、を、染めて……。

「あああああああああああああもう!逃げるよリズ!」

『はいいいいおねえさまああああ!』

 何とか根性で二人から視線を外したワカは、完全に耳を(ふさ)ぎ切れていないため顔を真っ赤にしていたユリシェリナに声をかけて、王様の私室から脱兎のごとく飛び出したのであった。


「ぜえ、はあ、ぜえ、はあ」

 ワカは息も絶え絶えである。

 ついでに言えば、途中でユリシェリナともはぐれた。

 そして王城は広い。

 とどのつまり、ワカは今紛うことなき迷子であった。

「……ここ、どこ」

 まだまだ豪華そーうなレッドカーペットとかシャンデリアとかコピペの連続のような扉の数とかは健在である。

 ワカが後ろを向こうと、前を向こうと何ら変わりの無い造形が連なっているわけで。

「……って言うか、人どこ」

 人通りも少ないところなのか、人っ子一人見当たらない。

「地図が欲しい」

 まあそれはとてもとても切実な叫びであった。


「あれ、ワカ出て行っちゃたね。まだ序の口なのに」

 嗜虐的(しぎゃくてき)な表情を浮かべて、ハバモンド。

「小娘のことなんか知らない。それよりもっと、もっとだ!」

 半ば恍惚(こうこつ)としている王様。

「はいはい。私の大事な娘を小娘呼わばりした分も追加ね」

「むしろ歓迎だ!」

「ん」

 古くからいる使用人しか知らぬ光景が、また。


「んにゃっ」

 どん、とワカは何かにぶつかった。

「……お?」

 反応。

「あれ、そいつあのハバモンド様が連れてた」

 またさっきぶつかったとは別の人の声が聞こえて。

「……あ、あああ!お付きAさんとBさん!」

 ワカは本日何度目になるか分からない驚きの声をあげた。

 そこにいたのは、王様が王冠を投げたときに注意してた人と、無視されたその人を慰めてた人。

「「その呼び名は心外だ」」

「うわごめんなさい!」

 気付けば、ワカは結構な人通りの中にいた。




そして悪ふざけは加速する。


何かごめんなさい。



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