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第十八話 暗闇は怖い?

 短いですが、キリが良いのでこれで。

 後二話ほど昔の話は続くと思われます。






 ズキズキと頭が痛む。

 身体の全てが痛みを訴えている。

 そして痛みに引きずられるように、私は目を覚ました。

「……起きたか。カッテ、来い」

 声が聞こえる。

 最近聞いたことがある声。……サーレ、だったか。


 ふつふつと怒り。

 身体を動かそうとして、鋭くなった痛みに顔をしかめた。

 辺りが暗い。夜なのだろうか。だとしたら、私は何時間眠ったのだろう。

「んあ?ようやくかよ、っと」

 今度はカッテの声。と、どすんと床にでも座り込んだような音。

「小僧、見えるか?」

 ひんやりとした感覚。どうやら額に手が当てられたようだ。


 私の目は開いているはずなので、ということは……見えて、いないのか。

 身体中に走る痛みにも勝るその事実に、私はかすかに絶望を覚えた。

 私の身体は一体何をされたのだろう。

「小僧?」

 額からの熱によってじわりじわりと温まっていた手のひらがどけられるのが感覚で分かった。

「……見えていないようだ。副作用か?」

 サーレが言った。

 副作用?何だ、それは。

「小僧、耳は聞こえているか?」

 今度はカッテ。

「小僧、じゃ……ない。ライナ、ス」

 動かしにくい喉を無理に動かし、咳き込む。

「……っつ、う……」

 それによって更に痛みが増した。痛い。


 サーレが言った。

「耳は聞こえている。だとすれば副作用か。お前、目が見えなかったということは無いな?」

 そして訊いてくる。

 そんなことあるはずが無い。痛みに耐えながら、私はゆっくりとうなずいた。

「何日かは身体が痛むだろうし目も見えないだろうが、心配はいらない。説明は治ってからだ」

 その言葉を最後に、ガチャリと扉の閉じられるような音がして、カッテとサーレは部屋から出て行ったようだった。


「ふぅ……う」

 それから私は何度か身体を起こそうとしたが、その度に失敗してベッドに倒れこんだ。痛みは時間を増すごとに増大していっている。

 本当に治るのだろうか。

 ここはどこなのだろう。

 身体の痛みで訊くことの出来なかったいくつもの疑問が、私の内をぐるぐる回った。



 ごそごそと、耳元で何かが動いているような音がする。

 誰かが喋っているようだ。

 まだ夢の中にいるような半覚醒状態で、私はその音を聞いていた。

「……小僧はまだ少年じゃないか。王様は一体何を考えてんだ」

「知らない。どうせ、また道楽のようなものだろう」

「代替わりして…………この国は……」

「わからない。何せ……」

「……教育係…………」

 そこまで聞いた所で、私の意識はふつりと細い糸のように切れてしまった。



「小僧、食え」

 カッテの言葉に従って口を開ける。

 スプーンのようなものに乗せられた汁物が口の中に流れ込んでくる。私はむせないように気をつけながら汁物をゆっくりと嚥下(えんか)した。

 最初に目が覚めてからもう二日が経つと言う。相変わらず目は見えず、しかし身体中の痛みはもうほとんど無視できるレベルにまで達していた。

「美味いか?」

「ん、おいしい」

 カッテの言葉にうなずく。ここ数日間でカッテは決して悪い人では無いと気が付いた。サーレもだ。

 私に少々厳しく当たるのは本心からのものではなく、(少なくともカッテはそうだ)恐らくは上の人からの命令なのだろう。あの夜に聞こえた断片的な会話から、何となくそう思う。


「目が見えるようになるまで、もう少しだな」

 私にカッテがご飯を食べさせてくれている横で、サーレはいつも私の目の辺りをじっと見ている。

 見えないが、何となく気配のようなものを感じるのだ。

「んぐ。……ありがと、カッテ、サーレ」

 小さく呟く。悪い人ではないと理解してはいても、まだ状況説明すらしてもらっていないので正直疑念が(ぬぐ)えない。

 だからお礼の言葉などが恥ずかしさもあいまってつい小さな声になってしまうのだが、二人はちゃんと聞き取ってくれる。

「ああ。気にするな、小僧」

「小僧じゃないって」

「俺にとっては小僧だ」

 このやり取りも何度目だろう。きっと、片手の指では足りない。


「それにしても、お前変な髪型してんなぁ」

 私は周りの男の子たちと同じように髪の毛を肩にかかるかかからないかぐらいの長さで切っているのだが、その子達とは少しばかり違って、丁度耳の辺りの髪の毛を一房切らないでずっと伸ばしているのだ。両側とも。

 普段は両方とも団子型に結っているが、今は目が見えないので上手く結う事が出来ず、垂らしたままだ。カッテはこの二房のことを言っているのだろう。

「変って言うな。大切な意味があるんだ」

 私は口を尖らせて言った。

「それは何だ?」

 興味があったのか、サーレも口を挟んでくる。

「言わない。よっぽどのことが無い限り言わないようにしているから」

「そうか。じゃ、ま、続きを食え」

 まだあったのか。

 私は素直に口を開けた。




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