chocolate
チョコレートには何とかっていう成分が含まれていて、食べると女の子は幸せな気分になれる。
そんな記事を何かの雑誌で読んで以来、私のカバンにはチョコレートが常備してある。
何か嫌なことがある度に、退屈でどうしようもなくなる度に、甘くて幸せな香りのチョコレートを食べた。
それは、いつからか毎週になり隔週になり、気づけば毎日になっていた・・・
「お前、俺といても楽しそうじゃないし、俺もそんなお前と一緒だと楽しくない。」
そう言われて振られたのは3年前。
怒鳴りたくなったけど仕事が忙しくて疲れていた私は、ぼんやりと彼の顔を眺めるしかできなかった。
そして、そんな私の様子を見た彼は迷いなく、私を置いてきぼりにして去った。
そういえば、あれは冬だったな。
一人暮らしの部屋には小さなバルコニーがあって、そこには夕方から降り出した雪がうっすらと積もってた。
白く染まった外の世界を眺めながら、3年前の失恋を何となくでも思い出した自分が少し滑稽だった。
「・・・やだやだ。」
癖になった独り言を呟いて、フロアに放ったままのカバンを引き寄せて中を探る。
友達には何が入っているのかと思うほどの荷物持ちがいるけれど、私は逆に心配されるほど物が少ない。
まず重たいのは嫌だし、持ち歩かなきゃいけないものなんてそんなにない。
財布、携帯、リップクリーム、たまにMP3プレーヤー。
だから、お目当てのものはすぐに見つかった。
小さな外国製の青い箱。その中には3粒のチョコレート。
今日の昼に一粒食べたから、あと二粒入っているはず。
パッケージと同じ青い包み紙を開くと甘い香りが漂ってきた。
そっと手に取って口に運んだ瞬間、私は世界で一番幸せな気分になる。
そう、これが離れられないチョコレートの魔法。