第14話:伝説級大剣の重さ
煉獄の巨人が光の粒子へと変わり、部屋全体が静寂に包まれた。
爆散の余韻がまだ空気に残り、漂う光がゆっくりと沈んでいく中、床の中央にひとつだけ影が生まれた。
光の粒子が消えていくにつれ、その影は形を取り始め、やがて巨大な物体が姿を現した。
それは大剣だった。
ただの大剣ではない。
奈落の第1層では超低確率でしか落ちないと噂される伝説級のレアドロップ。
刃は黒鉄のように重く、表面には赤い紋様が走り、柄は岩盤を削り出したような質感を持ち、存在しているだけで空気が震えるほどの威圧を放っていた。
大剣は床に深く沈み込み、持ち上げることすら困難なほどの質量を持っていた。
触れた瞬間、腕に重さがのしかかり、肩が沈み、体がわずかに傾いた。
持ち上げるのは不可能だった。
だから──
引きずった。
床に擦れる音が響き、岩肌に火花が散り、重さが腕に食い込み、歩くたびに大剣が床を削り続けた。
その姿は、伝説級の武器を手にした英雄というより、ただ重いものを引きずって歩く配信者だった。
だが、その異様な光景は逆に視聴者の興味を強烈に引き寄せていた。
光の粒子がまだ漂う中、巨大な大剣を引きずって歩く姿は、奈落の最奥の静寂と奇妙に調和し、画面越しに強烈な印象を残していた。
視聴者はその重さを想像できず、ただ画面に釘付けになっていた。
大剣は床を削り続け、岩肌に深い傷跡を刻み、歩くたびに火花が散り、部屋の空気がわずかに震えた。
その重さは、ただの武器ではなく存在そのものが危険であることを示していた。
奈落の第1層のボスが落とす伝説級の大剣は、確かに本物だった。
視聴者数はすでに膨れ上がっていたが、さらに異変が起きた。
元事務所の先輩配信者──シオンが、自身のSNSでこの配信を拡散したのだ。
彼女は画面を見つめたまま震える指で投稿した。
「この配信、マジで本物です。今すぐ見て」
その一文とリンクが拡散されると、彼女のフォロワーが一斉に流れ込み、通知が止まらなくなり、視聴者数とは別に登録者数が急上昇した。
SNSのタイムラインが一気に騒がしくなり、配信のリンクが次々と拡散されていった。
100人
200人
300人
400人──
そして
500人へ到達した。
底辺配信者だったチャンネルが、奈落の第1層の最奥で伝説級の大剣を引きずりながら歩く姿によって、一気に人を集め始めていた。
シオンの拡散は、ただの宣伝ではなく事件の共有として扱われ、SNS上でも騒ぎが広がり続けていた。
大剣を引きずる音が響く中、配信は新たな段階へ突入していた。
奈落の最奥で、伝説級の武器を引きずりながら歩く姿は、視聴者の想像を超え、SNSの拡散によってさらに広がり続けていた。
静寂の中で響く大剣の音は、次の物語の始まりを告げていた。
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