味覚の錬金術師
「ジャン、お前は今日限りで馘首だ」
「えっ!? 何故?」
「自分の胸に手を当てて考えてみろ! 初級ポーションもマトモに作れないお前をここまで使ってやった温情に感謝しろよ」
「でも!」
「出来損ないのポーションは餞別にくれてやる。とっとと出ていけ!」
投げつけられたポーションを何とか受け止めて踵を返す。
どうやら此処に僕の居場所はないらしかった。
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街を彷徨うこと数刻、行く宛など無い。
喉が渇いたオレはポーションを飲んだ。
「不味い…!」
魔力水の精錬度が足りてなく喉越しが最悪だ。
ニポポ草の下処理が不十分で苦味がしつこい。
こんなモノをオレは作っていたのか。
反省だ…!
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「なんだ、ジャン。なんか用か?
」
「マヤ、実はかくかくしかじかで…」
「自業自得だな」
「返す言葉も無いよ」
「それで、ジャン。お前はどうしたいんだ」
「せめて初級ポーションをマトモに作れるようになりたい」
「仕方ないな。一肌脱ぐか」
「ホントか? ありがとう。恩に着る」
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「まず魔力水の精錬度を上げるには徹底した煮沸が基本よ」
そう言いながらマヤは魔法でフラスコに入った魔力水を煮立たせる。
豊富な魔力を持つマヤだから出来る力技だ。
そうしながら精製水に魔力を込めていく。
「ニポポ草の葉っぱはみじん切りにする。細かければ細かいほど良い」
まな板と包丁を取り出して、物凄い勢いでみじん切りにしていく。
「錬金釜に入れて混ぜれば完成だ」
「おお~」
これほど繊細でスピード感溢れる錬金をオレは知らない。
「呑んでみるか?」
「いいのか?」
「もちろん」
差し出されたレードルで釜から直接ポーションをすくう。
「!!!!!!!!!!!!!」
「喉越しはまるで北方の霊峰ドゥマイガングに湧くという清水の如くだ!」
「それだけか?」
「いや、ニポポ草の苦みは全く感じられず、むしろほのかな甘みが舌の上でシャッキリポンと踊っている!」
「それから?」
「それどころか初級ポーションというには疲労回復効果が段違いだ」
「そうだろう」
今までのオレは間違っていた。
これほどの高みを見せてもらったからには…
「マヤ、オレを弟子にしてくれ!」
「そう言うと思ったよ。
まずは下働きから、我慢出来る?」
「もちろん。
ありがとう」
マヤの手をとって激しく振った。
オレの錬金術師人生はこれからだ!!
おわり




