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婚約破棄された代筆令嬢は、満員の寺で恋の俳句を売る

作者:乾為天女
最新エピソード掲載日:2026/03/27
 春澄王国の古都・志和。月暁寺の縁句祭で、没落寸前の下級貴族の娘・恵美子は、三年間支えてきた婚約者の店から、人前で切り捨てられる。恋文の代筆も、売れ筋の札の文句も、客の心をつかむ言い回しも、裏で考えてきたのは恵美子なのに、商家の跡取り・徳博はその功績を自分の手柄として語り、新しい婚約相手まで披露したのだ。しかも大人気の恋札に書かれていた「いつもあなたの夢を見ている。」は、恵美子が誰にも見せていない没案帳の一節だった。
 居場所を失った恵美子が月暁寺の門前で思わず「これ、何の行列?」とつぶやいたことから、眼鏡の監察官・隆冶と出会う。彼は、境内の混雑を一目で読み取り、恵美子の観察眼と文才にもすぐ気づいた。通子や日依、虎哲に助けられながら、恵美子は寺の片隅で、一人ひとりの願いに合わせた俳句札を書く小さな売り場を始める。
 大量生産の甘い言葉ではなく、自分の胸に本当に合う一枚を欲しがる客が集まり、恵美子の札は少しずつ評判を広げていく。やがて徳博の帳簿のごまかしや無断使用も明るみに出るが、恵美子はもう、誰かの店を支える影では終わらない。自分の名で働き、自分の言葉で生きる道を選んだ先で、彼女は三年目の春、ずっと値切らずに見守ってくれた隆冶から、本当の告白を受け取る。
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