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リボンワンピース・プリンス  作者: 月島
第二章 君を知る文化祭
20/54

20 信じて欲しい

 七月十二日の文化祭まで、残り約二週間。木崎学園高校の生徒達も、文化祭準備に本格的に動き出した。高校全体としても、毎週木曜日と金曜日の午後の時間割は全て文化祭準備に当てていいことになり、土曜日も文化祭準備の生徒向けに高校を開放している。(りん)達のクラスも順調に準備が進み、今日は衣装合わせと台本の読み合わせが行える状態だった。


(りん)様! 菖蒲姫の衣装ができたので着てくれますか?」

「分かった」


 (りん)は衣装担当の女子生徒から着物を受け取り、他の生徒に手伝ってもらいながら学校指定の半そで短パンの上から袖を通した。

 手作りのため、布は安価なものだ。しかし葵色の上品な色合いは一国の姫である菖蒲姫にぴったりで、薄黄色の帯の上の茶色い帯紐には、着物と同系色である深い紫色の丸い帯飾りが通されている。


「すごく綺麗だね……これ、手作りなの?」

「そうですよ! (りん)様に着てもらえるならって、みんなで張り切って作ったんです!」


 衣装担当の生徒は得意げに笑う。

 他の生徒達も、(りん)を見ながら口々に感心の声を上げていた。


「すごいの作ったなー」

(りん)様に似合ってる。すごく美しい……」

涼風(すずかぜ)って、そういうのも似合うんだなあ」


 肯定的な声を聞いて、(りん)は頬を染めながら衣装担当の生徒に頭を下げた。


「ありがとう。私に似合うように、頑張ってくれて……こんなに素敵な衣装が着られるなんて、嬉しいよ」

「そんな、頭を上げてください! 私も、(りん)様のお姫様姿が見られてすごく嬉しいです!」

「ふふ……ありがとう。本当に、お姫様になった気分だよ」


 心から嬉しそうな笑顔を浮かべる(りん)を見て、他の生徒達は心の中で「(りん)様、なんだか可愛いな」と声を揃えた。

 確実に、周囲の(りん)を見る目は変わってきている。(いと)はそれを感じ取って安心していたが……正直、可愛い姿の彼女が他人に見られて面白くなかった。思わず、赤い顔で眉間に皺を寄せる。


(周りの奴に見られたくねえ……くそ)


 彼女が自分らしく好きな格好で笑顔になれるのはいいことなのに、今まで自分が独占していた彼女の笑顔が他人にも知れたとなると、どうも腹が立ってしまう。思いのほか、(いと)は独占欲が強いようだった。

 (いと)が難しい顔をしていると、衣装担当の生徒が「日和(ひより)君も衣装着てみてよ!」と、着物を持ってきた。


「分かった」


 (いと)は着物に袖を通して、自分で帯を締める。すっかり着慣れた様子の彼を見て、(りん)は目を丸くする。


(やっぱり、お金持ちの家って着物とか着慣れてるのかな?)


 他の生徒達も同じような感想を抱きながら、(いと)の着替えを見守った。


「……こんなもんか?」


 (いと)は青い帯をパンパンと叩いて、首を傾げた。

 (いと)が演じる朝霧は平民であるため、着物も地味な水色で、布も薄く軽い様子だ。刀で戦うシーンがあるのも考慮してか、動きやすそうな素材で作ったらしい。

 実際には裕福な家に暮らす(いと)だったが、このように質素な衣装も不思議とよく似合っていた。


日和(ひより)君、似合うじゃん!」

「ほんとだなー。ちょっと意外だけど、かっこいいんじゃね?」

「ねー! あ、ちょっと(りん)様と並んでみてよ!」


 衣装担当の生徒に促されて、(いと)(りん)の隣に並ぶ。すると、周囲のクラスメイトから黄色い声が上がった。


「ひゃー! めっちゃお似合い!」

「王子様二人が並ぶと眼福だわあ」

「ブロマイド撮ったら高値で売れそうだな」


 はしゃぐクラスメイト達を「こら、撮るんじゃねえ」と睨みながら、(いと)は溜息を吐く。


「着物着ただけで大げさなんだよ」


 そんな彼に、(りん)は明るい笑顔を向ける。


「いと君、すごく似合ってるよ」

「おーおー。そうかよ。まあ、お前の隣に並んで褒められるのは、悪い気はしねえな」

「ふふ」

「何笑ってんだよ」

「いや、本番はその衣装で格好よく刀振ってるいと君が見られるんだなーと思って」

「ああ……まあ、期待に応えられるように、頑張ってやるよ」


 (いと)は顔を赤らめて頬を掻く。(りん)はそんな彼に微笑んで、衣装担当の生徒に「他の役の衣装も作ったの?」と尋ねた。


「ああ、はい。今日できたのは、二人の他に殿様役と、あと(かなで)君の月彦の衣装ですね。でも、(かなで)君、今朝お仕事してたからなあ」

「そうだね。今日、来られるかな……」


 (りん)はそう呟きながら、教室の扉の方をちらりと見た。すると丁度その時、扉が開いて(かなで)が入って来たのだ。


「ああ、周防(すおう)君。お仕事お疲れ様」


 (りん)は笑顔を作りながら声を掛けた。

 (かなで)は彼女に笑顔で返そうとして……目を見開いた。


 ——葵色の着物。大切な彼女によく似た顔。


 心臓がドクッと脈打つ。頬に冷や汗が伝った。

 ずっと、(りん)に会いたかったはずなのに、彼女に会えば、波立った心も落ち着くと思ったのに……。


「……葵衣(あおい)

「え?」

「ごめん」


 そう言うや否や、(かなで)はバタバタと教室から飛び出して行ってしまった。


(かなで)君!?」


 周囲の生徒が驚きの声を上げる。そんな中、(りん)は迷わず、着物姿のまま走り出した。


「私が追いかける! みんなはそのまま準備を続けて」

「え!? あ、ああ……はい!」


 文化祭準備で賑わう廊下を逃げていく(かなで)を、(りん)は必死に追いかける。


周防(すおう)君! 待って!」


 精いっぱいの声で呼びかける。しかし、(かなで)は立ち止まらない。それでも、(りん)は諦めずに走った。


(見失っちゃダメだ。絶対に捕まえないと! 周防(すおう)君と向き合わないと!)


 (かなで)は階段を上がって、特別教室棟へ走っていった。(りん)は着物を乱しながらも、なんとか彼に追いついていく。

 やがて、(かなで)は扉の空いた教室の中に入って行った。バタン、と勢いよく扉を閉める。(りん)が確認すると、そこは第二音楽室だった。


「はあっ、はあっ……周防(すおう)君! お願い、開けて!」


 (りん)の声を聞きながら、(かなで)は扉の前で浅く呼吸をしていた。彼女がドアを開けられないように、ドアノブを強く握る。向こう側からドンドンと扉を叩く音がした。


「私、君と向き合えないままなんて嫌だよ。君が何か抱えてることにも、君が私を好きだって言ってることにも、もう逃げたくないんだ。……お願い。少しでいいから話をさせて」

「……ごめん」


 震える声が、第二音楽室に零れ落ちる。


「どんな顔をして、どんな声で、どう話していいのか分からないんだ」


 泣き出してしまいそうな彼の声が聞こえて、(りん)は息を飲む。


「今、君と話したら……君に、嫌な思いをさせるかもしれない」

「……それでもいいよ」

「国民的アイドルの僕しか知らない(りん)ちゃんは、きっと幻滅するよ」

「そんなことない。だって……周防(すおう)君が、アイドルである前に一人の高校生だってこと、私は知ってるから」

「え……?」

「だから、安心して」


 優しい声を必死に作って、(りん)(かなで)に語りかける。

 彼の心の傷が、どれほど深いのか、(りん)には分からない。分かることもできない。

 だって、自分の痛みは自分にしか分からないのだから。

 しかし、それでも……その痛みに寄り添うことはできる。大丈夫になるまで、傍にいてあげることはできる。昔、同級生に襲われて、涙が止まらなかった(りん)の傍に(いと)がいてくれたように。

 だから、(りん)(かなで)を諦めなかった。


「……君を、信じてもいいの?」


 (かなで)は潤んだ声でそう尋ねた。

 その声に、(りん)は迷わずに頷く。


「信じて欲しい」


 彼女の力強い声に心を動かされ……(かなで)は、ゆっくりと扉を開けた。


* * *


 (りん)(かなで)が出て行ってしまった教室は、すっかり混乱状態だった。


(かなで)君、大丈夫かなあ。なんか顔色悪かったけど……」

「さっき、『あおい』って言ってたよね? 誰のことだろ」

「てか、涼風(すずかぜ)も大丈夫なのか? 着物のまま走っていったけど……」


 口々に心配するクラスメイトを、(いと)も不安げに見つめていた。


(こいつらの不安も分かる。(かなで)の様子は明らかに変だったし、(りん)も走りづらい格好で追いかけていったし。でも……あいつはきっと、(りん)にしか救えない)


 だって、他ならぬ(いと)もそうだったのだから。

 心に空いた穴は、別の何かで埋めるしかない。

 (いと)の脳裏に過去のことが蘇る。




 小学生に上がりたての年の梅雨。自室で弾いていたバッハの「コラール一番」を聴いて、両親が嬉しそうに微笑んでいてくれた時のこと。

 二人の笑顔を見ているだけで、(いと)は幸せだった。

 しかし、小学四年生の春休み……。


「小学生の坊ちゃんを家に残して海外に行く? これが坊ちゃんのためだと言うのですか!?」

(けい)さん、落ち着いてくれ。僕は何も、(いと)君に寂しい思いをさせたい訳じゃないんだ。ただ、あの子のピアノが認められないから――」


 あの日のことが、断片的にフラッシュバックする。

 香田(こうだ)の強い声と、それに反論する父の焦った声。

 その時、両親の部屋の外で感じた絶望感。

 それ以降、(いと)は不良となり喧嘩もするようになって、何も頑張れずに酷く落ちぶれてしまって……でも。


 ――別に怖くないよ。日和(ひより)君、意外と真面目だし、不器用なだけでいい人だよね。

 ――いと君のピアノ、私すごく好きだよ。なんていうか、すごく……綺麗なんだ。いと君の音色は、透き通って感じる。


 (りん)の言葉が、優しさが、その心の穴に温もりを注いでくれたのだ。

 彼女が救ってくれたから、今の(いと)がある。

 (かなで)のことも、そんな風に温もりを注げる人でなければ救うことができない。

 だから、(りん)でなければダメなのだ。

 逆に言えば、(かなで)にとって重要な存在で、心優しい彼女なら、きっと(かなで)を救うことができるだろう。


「大丈夫だ。信じて待とう」


 (いと)はハッキリと、大きな声でそう言った。

 クラスメイト達も落ち着いた様子の(いと)を見て、顔を見合わせながら頷く。


「そう、だね……(りん)様が行ってくれたなら、きっと大丈夫だよね」

「うん、信じて待とう」


 徐々に落ち着きを取り戻していくクラスメイト達を見て、(いと)も表情を和らげる。


(大丈夫だ。(りん)なら、きっとあいつを救ってくれる……)


 (いと)はそう強く信じて、二人のことを待った。


* * *


 (りん)が第二音楽室の扉を開けると、潤んだ目を伏せている(かなで)が立っていた。彼の長い睫毛も、涙で濡れている。


「……周防(すおう)君。大丈夫?」

「うん。大丈夫。……ごめん、逃げ出したりなんかして。中で少し話そう」

「うん」


 (かなで)に促され、(りん)は第二音楽室の中に入った。

 ピアノの他には、第一音楽室の予備の机と椅子が少しだけ置かれているだけの教室。普段は(いと)のピアノを聴きに来ているため意識していなかったが、音楽が無いと、恐ろしく殺風景に感じる。外は雨が降っており、サー、と雨音が聞こえてきた。そのせいで余計に第二音楽室の寂しさが増している。

 二人は教室の壁際に座り込んだ。


「ねえ、周防(すおう)君。さっきはどうして逃げたの?」


 (りん)が尋ねると、(かなで)は寂しそうに苦笑いして口を開いた。


(りん)ちゃんが、あまりにも似てたから、驚いたんだ。……葵衣(あおい)に」

葵衣(あおい)……?」

「うん。僕の、世界で一番大切だった人。もう、この世にはいないけど」


 ——やっぱり、周防(すおう)君の心の闇は、大切な人との死別だったんだ……。 (りん)はそう思いながらも、彼の言葉に耳を傾ける。


(りん)ちゃんには、前に話したよね。昔、熱を出して死んじゃった大切な人がいたって。それが、葵衣(あおい)なんだ。葵衣(あおい)は、僕の腹違いの姉で……顔とか、見た目の雰囲気が(りん)ちゃんにそっくりだった。だから、君と初めて会った時……すごく驚いたんだ。葵衣(あおい)が生き返ったんじゃないかって」

「じゃあ、運命の人だとか、占いがどうとか言ってたのは……」

「うん。咄嗟の冗談。とにかく、君を引き留めなきゃって必死だった。でも、驚いたよ。まさか(いと)と仲が良い子だったなんて」


 (かなで)はククッと笑う。彼の言葉を聞いて、(りん)は初対面の時に(かなで)(いと)が険悪そうだったことを思い出した。確か、あの時は彼のことを「ピアノの腕を競い合っていたライバル」と言っていたような。


周防(すおう)君は、いと君のピアノのライバルだったんだっけ」

「うん。向こうがそう思っていたかは分からないけど」

「いと君に一回も負けなかったんだよね?」

「まあ、結果的にはね。でも……才能は完敗だった。僕のピアノは、楽譜で指定された以上の音色にはならなかったんだ。でも(いと)の音色は、表情豊かで美しかった。まるで透き通った世界が、目の前に広がるみたいだったよ。あいつの指には、間違いなく神様が宿ってる。父さんもそう言ってたし、僕もそれは認めてた。悔しいけど」


 (かなで)は悲しそうに目を細めると、続けた。


「僕の父さんはね、『ピアノの才能がある子供』が欲しい人だったんだ。でも、僕のピアノは凡人だった。だから、僕達家族を見捨てて、家を出て行ったんだ。父さんがいなくなって、経済的に苦しくなって、母さんも弱っていって……そんな中、葵衣(あおい)が病気で高熱を出した。当時、僕はまだ中学生でさ、何もできなくて……葵衣(あおい)を、助けることができなかった」


 (かなで)の瞳から、涙が零れ落ちる。


「僕のせいで、葵衣(あおい)は死んだんだ。僕にピアノの才能があって、もっとしっかりしてたら……葵衣(あおい)は死ななかったのに」

周防(すおう)君……」


 何と言ってよいか分からず、(りん)は俯く。

 目を閉じて、必死に考えて……ようやく、一言発することができた。


葵衣(あおい)さんは、きっと、自分の死を君のせいにはしたくないと思う」

「え……?」

「綺麗ごとかもしれないけど……私も、自分が葵衣(あおい)さんの立場なら、そう思うから。私ね、もし大切な人と別れることになっても、相手に自分のことを後悔し続けて欲しくない。自分との思い出を悲しいものになんてせずに、楽しかった思い出を懐かしんで欲しいなって思うんだ」


 (りん)はそう言うと、(かなで)を真剣な目で見つめた。


周防(すおう)君も、そうじゃない?」


 吸い込まれそうな黒い瞳が、(かなで)を射抜く。この意思の強そうな目まで、(りん)葵衣(あおい)にそっくりだった。

 ——楽しかった思い出を懐かしんで欲しいんだ。

 まるで、葵衣(あおい)がそう言っているように感じた。

 脳裏に、高熱を出して寝込んでしまった、終末期の彼女の姿が蘇る。

 あの日も、今日と同じ雨だった。

 ベランダに打ち付ける雨音と、一日のほとんどを眠ったまま過ごしている葵衣(あおい)。彼女の手を、(かなで)はずっと握っていた。


「……(かなで)


 か細い声が聞こえて、(かなで)は目を見開く。

 葵衣(あおい)が、こちらを見て微笑んでいたのだ。


「私ね、ずっと……親に、愛されたかった」

「え……?」

「お父さんは、ピアノが下手な私のこと、全然気にしてくれなかったし、お母さんは離婚してから一回も顔を見せてくれなかった。それから、美鳥さんはお父さんのことばっかりだったでしょ。だから、すごく寂しかったの。……でもね、(かなで)が私を大事にしてくれたから……それだけで十分幸せだった」


 葵衣(あおい)はそう言うと、(かなで)の手をギュッと握った。


「ありがとう。大好き」


 その弱々しい愛の言葉に、(かなで)は涙を頬に伝わせながら、静かに頷いた。


「うん。僕も、大好きだよ。葵衣(あおい)




「……そうだね。葵衣(あおい)は、きっと……僕のこと、責めたりなんてしないね」


 (かなで)の瞳から、大粒の涙が滴り落ちる。悲しくて歪みそうな顔で必死に笑顔を作りながら、(かなで)は続けた。


「僕、ずっと誰かから愛されたかったんだ。父さんからは愛して貰えなかったし、母さんも僕より父さんの方が大切な人だったからさ。だから葵衣(あおい)がいなくなってからは、尚のこと寂しかった。誰かから、大事にされたかったんだ……」

「……うん」

葵衣(あおい)に似てる君なら、僕を愛してくれるかもって……この寂しさを埋めてくれるかもって思ってたんだ。だから、君にアプローチしてた」

「そうだったんだね。君の気持ちは、すごく分かる。でも、ごめんなさい。私は、葵衣(あおい)さんの代わりにはなれない」


 (りん)はそう言うと、真剣な顔で(かなで)を見つめた。


「だけど、クラスメイトとして……君の痛みを受け止めたいよ。君が辛い時には、頼れるような人になりたい」


 (りん)の言葉に、(かなで)は目を見開く。

 初対面の時からずっと自分のことを警戒していた(りん)の口から、そんな言葉が出てくるだなんて信じられなかったのだ。

 驚いた顔の(かなで)に、(りん)は優しく微笑む。


「同じクラスの仲間として、仲良くできたら嬉しい」


 ——ああ、本当に、(りん)ちゃんは優しい。でも、相手のことを考えて、必死に気遣う控えめなところは、活発で押しの強い葵衣(あおい)と似ていない。(りん)ちゃんは、葵衣(あおい)じゃないんだ。でも……。


 先日のカフェでのしらべの言葉が蘇る。


 ——友人とは、メリットがあるからなるものではないのですよ。相手を知りたいと思う過程で、自然になるものなのです。


 しらべの言葉が本当なら、お互いを知ろうとしていた(かなで)(りん)も、友人になれるはずだ。

 恋愛の愛情ではない。でも友人の愛情だって、自分の心の穴を埋めてくれるだろう。今の(りん)を見て、(かなで)はそう思えた。

 ——僕は、もう一人じゃないんだ。


(りん)ちゃん」


 (かなで)(りん)に明るく微笑む。


「友達になろう」


 まるで憑き物がとれたように笑う(かなで)を見て、(りん)は優しく微笑んだのだった。

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