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9.それぞれの遺物

 それぞれの遺物


―11時30分頃―


 ヒベルたちは雑談をしながら歩いていた、元気もりもり亭を目指して。

  

 「え!ヒベルん18歳っすか!タメじゃん!ミミナも18だよ!」

 ミミナは嬉しそうな声でニコニコと話している。

 あだ名で呼ばれたことのないヒベルは戸惑っていた。


 「へ~!なら、22の私が一番のお姉さんになるね!ふたりをしっかり守ってあげなきゃ!」

 カノミュは胸を張りながら声を出す。


 (カノって22だったのか、あれ?2~3コしか変わらないって言ってたのに、4つも年上だった。)

 ヒベルは内心びっくりしたが、敬語禁止条例を思い出し、失礼じゃない事を再認識していた。


 「カノ先輩とヒベルんはなんでパーティ組んでるんすか?昔からの知り合いとか?」

 疑問に思っていた事をミミナが口にした。

 カノミュとヒベルが言葉に詰まっていると、割り込むように声が響いた。

 「ふん、俺たちは魔王を倒すために集まった変わりもんだぜ、ギャル娘!」

 ニットンがカノミュの頭の上から口を出してきた。


 「ちょっと!ニットン!自己紹介するにしても早すぎ!びっくりさせちゃうでしょ!」

 カノミュは以前もやっていたようにニットンの口なのかわからない場所を両手で抑えながら慌て始めた。


 「マジ!うそ!プラメンの仲間じゃん!ねぇ!みっけたよ!」

 ミミナは驚いて腰のベルトに刺していた試験管の一つに声を掛ける。


 「ふふ、本当に私と同じように姿を変えられたヒトと出会えるなんて……坊や、お名前を教えてくださる?」

 ミミナの腰に刺さった彫刻が刻まれてる茶色い試験管から、大人びた美しい女性の声が聞こえる。

 「ミミナも勇者だったの!」

 臨時パーティのミミナが遺物を覚醒させた勇者だったことにカノミュは驚いて目を丸くして声を出す。

 ヒベルも驚きつつ、これから何が起きるのか固唾をのんで見守っていた。


 「おい!誰が坊やだ!俺はニットンだ!てめぇなんか知らねぇよ!」

 「ふふ、なにをそんなにムキになってるのかしら……でも、そうね、ニットンなんて名前は聞いたことがないわ。」

 「ニットンって名前なんだ!じゃあ、ニっちゃんね!でも、プラメンの仲間じゃ……なかったみたいだね。」

 「うぉい!誰がニっちゃんだ!ニットンだ!いや、ニットンさんだ!!」

 ニットンは怒りながらツッコみをいれる。

 

 「ニットン殿よ、いい呼び名をもらったではないか。我はカブルツ。残念ながら我もプラメンという名には聞き覚えがない。」

 カブルツも言葉を発する。


 「え!ヒベルんも勇者さん味方にしてるじゃん!マジすご!」

 「ふふ、魔王に挑んだ戦士たちに会えるなんて、今日は忘れられない日になりそうね。私の名前はプラメン。たぶん、50年前に魔王に挑んであなた達と同じ運命になったわ。」

 ミミナは声がしたヒベルの腕時計に顔を近づけニコニコしているが、プラメンはどこか悲しそうな声で言葉を発していた。


 「え……50年前ですか?カブルツは500年前って言ってたけど……」

 ヒベルが驚いて口を挟む。


 「やはりか。そんな気がしていた。我は500年前、魔王に挑んだ、その数百年後にニットン殿。そしてプラメン殿は50年前に挑んだ勇者になるわけだ。」

 「でも、確か校長先生が、魔王に挑んで遺物に変わったのは50人って……」

 「けっ、そんなの大昔の話に決まってるだろ!魔王はずっと生き続けてるって事だ!」

 ヒベルは混乱しそうになる頭を必死に抱えて整理しようとするが、魔王の強大な力を想像して顔が引きつる。

 


 「つまり、遺物に変えられた勇者たちは増え続けてるって事ね!そして今!その魔王を討伐しようとしてるのが、私とニットン!ヒベルとカブルツってわけ!」

 カノミュがようやく明るい声でミミナの質問に答えを出した。


 「なるほどっす!魔王に挑もうとしてるなら、ガチョウチョウなんて余裕っすね!昼食ってサクッと行っちゃいましょ~!」

 カノミュとミミナは明るく歩き出す。

 ヒベルは内心、恐怖していた。

 自分も姿を変えられてしまうかもしれない事実に。


 3人と3個はようやく元気もりもり亭に到着した。

 昼時なので店内はほとんど満席で外まで音が漏れるほどガヤガヤしていた。


 扉を開けると音はさらに大きく。笑い声に混じってジョッキをぶつけ合う音まで聞こえ、肉や魚が焼けたような香ばしい匂いが鼻を刺激して一層食欲が増す。

 「いらっしゃいませ~!あら、カノミュさん達!それに……ミミナじゃない!久しぶりね!」

 昨日と同じウエイターが店の中心から入り口に駆け寄りながら声を掛けてくる。


 「こんちゃ!マジで元モリって感じ!席空いてます??ろく、じゃなくて……3人!」

 ミミナは両手で6本の指を立てようとしたが、慌てて左手を後ろに隠し、右手の人差し指と親指を折ってウエイターに見せた。


 「はいはい!3名様!丁度、席片付けてるから奥に来てください!」

 ウエイターに案内され、ヒベルたちは丸テーブルの席についた。

 それぞれが好きなものを注文して、ガチョウチョウ討伐について話始める。


 「ここから、半日歩いた場所が目的地って資料には書いてあるから今から出発したら夜中になっちゃう。」

 「さすがに、体力も持たないし、夜の魔物は危険だしどうしようか。」

 カノミュとヒベルは資料を二人で見ながら頭を悩ませる。


 「え!カノ先輩たち歩いて行こうとしてるんすか?ミミナのうちに魔動車があるっす!それに乗れば2時間ぐらいで着けるっすよ~!自然系の魔法を使える人しか動かせないけど、プラメンが得意なので余裕っす!食べたらみんなでミミナの家に行くっすよ!」

 ミミナは元気よく笑顔で発言した。


 「魔動車持ってるの!すごいじゃん!しかも、プラメンは魔法が使える元勇者なんだね!」

 「カブルツもニットンも魔法なのかはわからない能力だけど、プラメンさんは自然系の魔法が使えるの?」


 「うん!プラメンは水を操るのが得意だよ!ガチの時は炎も出ちゃうけどね!」

 ミミナの腰についてる試験管から、ちゃぽんと水の音が聞こえた。


 全員食事を済ませ、ヒベルとカノミュは自分の部屋から旅に必要なものを取って全員でミミナの家に向かった。


 元気もりもり亭から歩いて5分ほどの大通りから少し離れた場所にミミナの家があった。

 石でできた三階建ての大きい戸建てで一階は吹き抜けのガレージのような作りだった。


 「わあ、立派なお家だね!ご家族の方に挨拶しないと!魔動車借りちゃうわけだしね!」

 カノミュが元気よく二階の玄関に向かうため階段を駆けだした瞬間。


 「玄関開けないで!!」

 ミミナが大声を出した。いつものニコニコした表情は面影もなく、睨みつけるようにカノミュを見ていた。

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