8.最初の依頼
最初の依頼
―リナスマ都市ギルド・クエストボード前―
「あーーー!!!やっちゃった!」
突然カノミュが大声を上げる。
ヒベルはびくっと身体が跳ねて、カノミュの方を見る。
カノミュはクエストボードを見つめながら涙目になっている。
「狙ってたクエスト全部剥がされちゃった~もう、Gランク以下のクエストが残ってないよ。」
「あ……いろいろ巻き込まれてるうちに全部取られちゃったんだね。しょうがないよ、今日は素材の換金だけしてまた明日、早くこようよ!」
ヒベルはカノミュを気遣って声を掛ける。
「換金、そうだね!今日はお金に変えてリナスマを見て回ってもいいし!早めに元もりに帰って明日の為に眠ろう!」
カノミュは素早く考えを切り替え明るくなる。
元気もりもり亭を元モリと略すぐらいに。
「さっき、受付嬢さんが素材の換金もここで出来るって言ってたよ!」
ヒベル達はクエスト選びを諦め、再び受付に向かう。
「ね~いいじゃん!ミミナひとりでマジ余裕だから!このクエストをうけさせてってば!ちゃんとランクは到達してるじゃん!」
ヒベル達が受付に到着する前に、なにやら受付が騒がしい。
「ダメです。シニパリナ様は確かにHランクですが。ご所望のクエストは、危険度が高いと判断しておりますので人数指定クエストとして三名以上のパーティが条件になります。残り二名以上。もう一名Hランク以上の方をスカウトして再びお越しください。」
受付嬢が無表情に淡々と説明している。
「やば!も~頭固いんだから~!報酬のホカ草ないとマジ詰む!ヒーラーなのに~」
あの無表情の受付嬢に食い下がっている女性は、身長はそれほど大きくなく金髪のツインテールで褐色の肌。
腰のベルトにはカラフルで細長い筒の様な物が沢山刺さっている。
赤、黄色、青、緑、そして一つだけしっかりと彫刻が施された茶色いのに美しい試験管だ。
「ねぇ!あなた、ヒーラーなの?私Gランクだから一緒にそのクエスト受けれるよ!」
ヒベルの横で立ち止まっていたはずのカノミュはすでに金髪の少女の横に立ち声を掛けていた。
「え?やば!マジっすか!Gランク冒険者!マジ神!でも、あとひとりメンバー必要みたいなんすよ……」
再び落ち込みかけた少女にヒベルも声を掛ける。
「あ、あの、一応僕もいます。Jランクですが……」
「え!Gランク先輩とJランクの男子!マジ神!これでホカ草ゲット!でも、ふたりはミミナとガチで一緒でいいんすか?」
受付嬢は一連のやり取りを黙って聞いていたが口を開いた。
「マリアーク様、レリックス様。パーティを組む人間の素性もクエスト内容も確認せずにその様な判断は軽率だと考えます。ですので、クエスト内容の説明をさせていただきます。」
「シニパリナ様が選んだHランククエストはこの町から半日ほど歩いた森林伐採場に大量発生した”ガチョウチョウ”の殲滅になります。毒や痺れの鱗粉をまき散らしながら森を埋め尽くしてるそうです。受注条件は3名以上且つ2名のHランク以上のライセンスをお持ちのパーティになります。」
「報酬は金貨9枚にホカ草一束。それと、ご自身たちで集めていただくガチョウチョウの素材になります。ホカ草は南の地域にしか生えない少し珍しい薬草で近隣の町では出回ってない品になります。」
ふーっと少し息を吐き、呼吸を整えながら淡々と話し続ける。
「クエストの内容は以上です。それではお三方で話し合い受注するか決めていただけたらと思います。10分ほどお待ちします。時間が過ぎた場合は放棄とみなし再びクエストボードに掲示いたします。」
受付嬢は無表情のまま説明を終える。
すると間隔を空けずにヒベルが言葉を発する。
「受けます!この三人でそのクエストやらせてください!」
ヒベルはいつも以上に力強く発言をする。
受付嬢は目を見開き少し驚いた表情になる。
「すぐに決めなくても、お時間をあたえましたよ。先ほども申し上げた通り素性も知らない方との臨時パーティは危険です。失礼ながら、Jランクのレリックス様には荷が重いかと。」
再び無表情になり少し強めにヒベルへ向けて言葉を放った。
「でも、シニパリナさんがすごい困ってそうでした。あんなに必死に頼んでたんです。必要なものが僕たちの助けで手に入るなら、手伝いたいんです!」
ヒベルは珍しく他人の目を見て力強く発言する。
「うんうん!私もヒベルと同じ気持ちだよ!数少ない女の子の冒険者同士、手を取り合わないと!」
カノミュもミミナの両肩に後ろから手を乗せてウキウキしながら受付嬢に伝える。
「おふたりとも、マジで神!あざ!感謝!あ、ミミナって呼んでいいっす!呼び捨てでおけ!」
受付嬢は目の前の光景が初めての体験で少し笑みをこぼした。
「承知いたしました。こちらの”ガチョウチョウ殲滅クエスト”はカノミュ・マリアーク様、ヒベル・レリックス様、ミミナ・シニパリナ様。三名で受注させていただきます。詳細の資料を一番ランクの高いマリアーク様にお渡しいたします。ご武運をお祈りしております。」
受付嬢は説明後に資料をカノミュに渡し、無事を祈りながら頭を深く下げた。
「あ、素材の換金!お姉さん!私達、換金してほしいものもあるの!」
カノミュは思い出したように伝える。
受付嬢は無表情に戻っていた。
「失礼いたしました。送り出すのが早かったですね。換金する素材をそちらのカウンターの上に広げておいてください。量が多い場合は換金計算に時間もかかりますのですぐにお金が必要ではない場合は今回のクエスト終了時にお渡しさせていただきます。いかがいたしますか?」
受付嬢はカウンターの方を指さしながら丁寧に説明をしてくれた。
「クエストの後で構いません。並べて置いておきます!よろしくお願いします!」
ヒベルは肩に掛けていた大きめの鞄からリナスマ都市に来るまでの道中で採取した魔物の爪や羽根、角などを並べ始める。
「お~結構倒したんすね!もしかして先輩たち鬼強い?マジ期待!」
ミミナはうきうきした顔を隠さずに嬉しそうだった。
素材を並べ終え、受付に頭を下げてリナスマ都市ギルドを出た。
直後、ぐ~~っと誰かのお腹が鳴る。
「今の聞こえたっすよね……マジはずい!」
ミミナは少し顔を赤らめ、恥ずかしそうにお腹を押さえる。
「あはは!わかる!お腹空いたよね!準備もしないとだし、元もりに一回戻ってからクエストに出発しよ!ミミナとも仲良くなりたいし!」
「お~!先輩たち、元もりに泊ってんすか!ミミナの家も近くなんすよ!一緒に昼行きましょ!」
カノミュとミミナは楽しそうに会話している。
(元気もりもり亭は略すのが正解なのか?)。
2人の少し後ろに居たヒベルは少し困惑しながらそんなことを考えていた。
こうして、2人と2個は臨時パーティメンバー1人?を連れて元もりに向かって歩き出した。




