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5.初めての旅路

初めての旅路


―午前10時過ぎ―


 ヒベルたちはまだ、魔物の襲撃によって復興できていない町を背に出発していた。


 「汝よ、リナスマ都市とやらへはどれほどの時間を要するのだ?」

 歩き始めてすぐにカブルツがヒベルに尋ねた。

 「ケッ、変な事きにするな!あんたにとって時間なんて、あってないようなもんだろ!俺はもう時間を数えることなんか忘れちまったぜ!」


 「もう!なんでもっと仲良く出来ないの!ニットン!そんなんじゃ人間に戻れても誰も相手してくれないからね~世間話の一つや二つはできるようにならないとだよ!」

 ヒベルの回答の前にカノミュとニットンのいつものやり取りが始まっている。


 「多分だけど、3日ぐらい歩けば着くはずだよ!小さいころ父さんに連れて行ってもらったと思うんだ。全然覚えてないんだけどね(笑)」

 

 「そっかそっか!3日ぐらいか~、ヒベル君にとっては冒険者として初めての道のりだもんね!先輩としてしっかりサポートしてあげるからね!」


 まだ、生い立ちなどは深く聞かずに世間話を2人と二個は話ながらひたすら目的地に向かっていた。

 

 ―三時間後―


 「そろそろこのあたりで一休みしましょう!お腹もすきましたよね!」

 ヒベルが川沿いの砂利道で声を掛ける。

 小川が近く休憩するにはうってつけの場所だ。


 「そうね!ご飯休憩しちゃおっか!ヒベル、川から水を汲んできて!私とニットンで薪を拾っておくから、スープでも作ろうよ!」


 カノミュは小走りしながら、ニットンが無言で木の枝を拾い集める。

 ヒベルは背負ってるバックパックから中ぐらいの鍋を取り出して川の水を汲み元の場所へ戻った。

 「水汲んできました!カノ、ニットン、薪拾いありがとうございます!ライターを持ってきたので火を点けますね」


 ヒベルがバックパックからライターを取り出そうとしていると。

 「おい!お前それでも現代人かよ!いくら魔法が使えないって言ってもいちいちそんなもんに頼ってんじゃね~よ」

 「ヒベル!任せて。ここは私の出番だね!」

 ヒベルはニットンの言葉にダメージを受けながら、カノミュの動きを少しワクワクしながら薪の束を見ていた。

 カノミュは薪の束を指さす。


 「えい!」

 バチバチバチッ!ボウ。

 カノミュの指の先から白色の雷が一瞬出たのをヒベルは見逃さなかった。


 「すごい!カノは雷魔法が適正なんだね!しかも白色の雷って見た事ない!ダグビル教官も雷魔法だけど、確か青色だったはず。」

 「へへ!大正解!実は雷魔法を使えるの!ニットンともそれで連携したりするんだよ!」

 「ふん!俺だけでも十分だが、確かにカノの雷は強力だ、だが気を付けろよ。近くに居たら感電するどころじゃねぇ。丸焦げにされちまうぜ。」

 「もう!そうやって私からヒベルを遠ざけようとしないでよ!大丈夫!ちゃんと制御するために頑張るし、ニットンが雷の方向変えてくれれば済むでしょ!」


 鍋を火にかけて、簡単な野菜と肉を入れながらヒベルが温かいスープを作っている時。


 「汝、何か来るぞ。構えろ。」

 ヒベルはカブルツの声にハッとして、気配がする方向、小川の反対側の森の中に目を凝らす。ガサガサ。

 

 カノミュとニットンも無言で戦闘態勢を取る。


 (あれは、なんだろう。ハッキリわからないけど、数が多い)

 「ゴブリンね。でも数が多すぎる。20は居るわね。」

 カノミュが呟く。


 さっきまでの和やかムードでヒベルは忘れていた。

 この旅は冒険者の旅だ、常に危険と隣り合わせ。

 

 「カブルツ!」

 その言葉で、腕時計から光が発せられ、盾と剣に姿を変える。


 「来るよ!あいつらはズル賢いから石とかも投げてくる!爪からは毒が生成されてるから絶対に引掻かれちゃダメ!」


 カノミュの言葉を合図にしたのか、一斉に森の茂みからこちらに向かって緑色のゴブリンが走り出してくる。体長は1mほどだ。


 そして、川に足を入れたゴブリン数匹が悲鳴を上げる


 ゴブリンたち:「ギョエェーーー!」

 5匹ほどのゴブリンが足を川に突っ込みながら、丸焦げになっていく。


 「な~んてね!すでにニットンの糸を川に伸ばして電流を流しておいたんだよ~!これでこっちには渡ってこれない!ご飯は絶対渡さないから!」


 残りのゴブリンたちは後ずさりをして川に入るのをためらっている。


 「すごい。このまましばらくすればきっと逃げてくれるはず!」

 ヒベルは安堵の声を漏らした。


 その時。空から蚊のような見た目の昆虫型、体長1.5mほどの魔物が羽を高速に動かしながらゴブリンたちを持ち上げだした。

 ブーーーン。ギギギギギ

 不快な音が耳を攻撃してくる。


 「な、なにそれずるい!モスキートルがゴブリンを運んでる!こっちに来る気ね!」

 「ケッ、無い頭使いやがって!お前ら!自分の身は自分で守れよ!」


 モスキートルもゴブリンと同じぐらいの数だ。

 ヒベルたちの上空が黒い影に覆われてゴブリンが落下してくる。


 「汝、来るぞ!」

 「おりゃ!」

 ヒベルは目の前に落ちてきたゴブリンを剣で切り倒す。

「ゴギィーー」

 一体一体はそれほど強くない。


 カノミュもニットンの糸を相手に巻き付け白い電撃を浴びせる。

 カノミュ:「くらえ!」

 ビビビビビッ

 ゴブリン:「グァリャー」


 ゴブリンたちはヒベル達を改めて排除すべき存在と認識して、落ちている石を拾い剛速球で投げてくる。

 体長は小さいがすごい筋肉だ、飛んでくる石がまるでピストルの弾丸だ。

 

 ヒベルは咄嗟に盾を構える。

 ニットンは糸をカノミュの周りに張り巡らせドーム型の守りの壁になった。

 ガンッガンッ

 一発当たっただけで致命傷になりかねない、ヒベルは冷や汗を掻いた。


 「おいおい、キリがねぇぜ。このままじゃ攻撃が出来ねぇ!」

 「ヒベル!まだ空にも敵がいる!何かいい方法ない!?」

 

 「大技を使うにも隙がないです!ずっと石が飛んでくる!」

 石を飛ばすゴブリンの勢いが増す。

 ガンガンッガン


 空からはモスキートルが口から生えてる毒針で今か今かと狙ってきている。

 ブーーーン、ブーーーーーーン。

 不快な音が集中力を削ぎ落とす。


 「汝、何時を刻む?」

 カブルツが静かに問いかける。

 「今は無理だよ!12時も6時30分も盾を構えてたら使えない!」

 思わず焦りの声を上げた。

 

 「今の構えでも刻める時はある……汝、何時を刻む?」

 (盾を左腕で構えてるこの状況で刻める時間……左腕は右を指してるから、そうか!)

 「カブルツ!刻むよ!3時15分!」


 ヒベルの左腕は盾を構えながら右を刺し、右手のロングソードも右を刺す。

 ヒベルの身体がシューーーッと音をたて、蒸気のような熱が身体を覆う。


 (なんだ!?石が飛んでこなくなった!)

 ヒベルは自分の身に何が起きたのかまだわかっていない。

 飛ぶ斬撃や地面からの棘ではない。なにも発動してない。


 「汝、しっかり前を見るのだ。まだ戦闘は終わっておらんぞ。」

 ヒベルは構えていた盾を少しずらし前を見る。

 こちらに石が飛んできているが、すごく遅い。

 ほとんど止まっている。


 「こ、これは、バフ!?」

 「そうだ、ただ、長くはない。恐らく40秒ほどしかもたないぞ。一気に片を付けるんだ。」

 「わかった!いくよ!」

 スパッ!ザシュ!ザザザ!

 ヒベルの鍛え上げられた剣術とカブルツがもたらしたバフで状況は一変する。


 「すごいよ!カブルツ!周りが遅く見えるだけじゃない!力も瞬発力も格段に上がってる!僕の動きじゃないみたいだ、まるでお豆腐を切ってるみたいだよ!」


 ゴブリンは次々にヒベルの刃に切りつけられ、すべてのゴブリンに致命傷を負わせた瞬間。

 ヒベルから立ち上っていた蒸気が静かに消えていく。

 ゴブリン達:「ゴギャー!」「グギャー!」


 ヒベル:(うっ……体が急に重く……腕が痛い)

 剣を持つ手が震えている。

 強力なバフの代償なのか、ヒベルの肉体に痛みが走る。

 

 ゴブリンたちは全員横たわり、カノミュとニットンは何が起こったのかわからずにいた。

 「あれ!?さっきまで石を投げてきたゴブリン達は!?」

 「きっと、おっさんと小僧が何とかしたんだろ。カノ!まだ空に敵がいる!今度は俺たちの番だぜ!」


 ニットンは空に飛んでるモスキートルの身体に糸を巻き付ける。

 20匹全部に一本の糸で巻き付き、そして。

 「おりゃ!逃がさねぇ!」

 ニットンが力を込めると、糸がギュッと結ばれるようにモスキートル同士がくっつき始める

 「ほらよ!最後は頼むぜカノ!」

 「うん!ありがとニットン!いくよ!」

 カノミュは空で塊になったモスキートルに向かって右手の5本の指を向ける。

 「白雷!ドーーーン!」

 カノミュの5本の指から一直線に伸びる白い雷がニットンの糸を伝って空中で塊になってるモスキートルを直撃。

 バチッバチバチバチ!ヒューーーバッシャン!

 モスキートルだったなにかが空中から川に落下した。


 「やったね!ニットン!ヒベルとカブルツもさすが!何をしたのか後で教えてよね!」

 「やっぱり、すごいよ!カノもニットンも!息がぴったりだった!」

 ヒベルは自分の腕をさすりながら、カノミュは微笑みながら、リナスマ都市に着いた際、換金する為に倒した魔物の爪や羽根を集め。

 煮込みすぎたスープを飲んで今回の戦闘を振り返った。

 

 そして、また歩き出す。


 ―その日の夜、21時頃―


 「今日はだいぶ歩いたね~!今日はこの辺で野営にしようか!もう真っ暗だし!」

 川沿いを歩き続け森の道へ進む前にカノミュが提案する。

 

 「そうだね!そうしたらお昼と手順は一緒で!水汲んできます!」

 2人はそれぞれ野営の準備に入る。

 初めての旅。まだ、慣れてないメンバーのはずなのに、一日歩いただけでかなり気兼ねなく接するようになっていた。


 カノミュは小走り、ニットンが枝を集め、ヒベルが水を汲み、カブルツが時を刻む。


 焚火に当たりながら、カノミュがカブルツを見ながら話しかける。


 「ねえねえ、カブルツは一体いくつの技が使えるの?飛ぶ斬撃と地面からの棘、身体強化のバフ。しかも全部強力で魔法のようで魔法じゃない。凄すぎるよ!」


 「元々わしが使っていた技がすこし違う形でヒベルと一緒なら刻める感じだ。一つの技は一日に一度だけ針が重なる瞬間にな。」

 ヒベル:「そっか、確かに。針が重なる構えの時に大技が出せる。」

 「だが、過信はするでない。最後は汝の努力だけが残るのだ。わしは自分の力に過信していたのかもしれん。汝には同じ過ちをしてほしくない。」


 「なんだよ、またもったいぶりやがって!全部の技を試してみればいいじゃね~か!1時5分!とか、10時50分!とかよ!取り敢えず自分に何ができるのかわからねぇ~と連携のしようがねぇよ。」

 「確かに、ニットンの言いたい事もわかるけど。多分それだと、その能力に頼り切って、強くなったって勘違いするのがいけないって事じゃないかな?もちろんヒベルの剣術はすごいけど。魔王に勝つための旅だもん。ここぞって時の切り札になってもらう必要だってあるんだから!」


 「その通りだ。剣術だけで冒険者になったヒベルにはその資質がある。だから全てを知るのはまだ早い。」

 「わかった、いつか使いこなしてみせる。最高の剣術でカブルツの技を使わせてもらうよ!」


 「ところで、ニットン殿。」

 

 カノミュの頭に乗っていたニットンが少し驚いた口調で声を出す。

 「あ?なんだよ!なんか文句あんのか?」

 「お主はどうなんだ?昔の仲間とは会えたのか?お主らはどこから来た?」

 

 カノミュの視線が少し下がる。ニットンも口を開かない。

 「ごめんね、どこから来たかはまだ言いたくない。だけど、ニットンとは半年前に出会ってそれから旅をしてきたよ!そして……もちろん古代遺物とその覚醒者にも会えた。」

 

 「あ~会ったぜ!腑抜け野郎共とな!おっさんを含めたら4つだ!残りの元勇者さん達はもう魔王と戦いたくないってほざいてたよ。魔王にアホみたいな姿に変えられえたはずなのに、それに慣れちまったのさ。それと恐怖。それに抗えなくなったクソ野郎共だったぜ!」


 ニットンの声に怒りが混じっているのが分かる。

 カノミュの視線は下がったままだ。

 

 「そうであったか。やはり立ち向かえる者ばかりではないか。」


 カノミュはやっと顔を上げて言葉を発する。

 「でも、やっと見つけたの!一緒に魔王を倒してこの世界を救いたいって同じ気持ちのヒベルとカブルツに!」

 

 「最初はダメだと思ったけどな!お前らの最初の戦いとそのあとの逃げ腰に、お前たちも腰抜けだと思ってたぜ。だが今は少しだけ感謝もしてる。カノの力になってくれたこと。」

 ニットンが柄にもなく素直な気持ちを言葉にする。

 

 カノミュがすかさず茶々を入れる。

 「え~!珍しい!ニットンが誰かに感謝するなんて!」

 「そうやって茶化すから嫌いなんだよ!こういう話は!!」

 すかさずいつもの突っ込みをするニットン。


 ヒベルは少しクスッと笑いながら。

 「カノもニットンも大変だったんだね。どこから来たとかは二人が言いたい時に話してくれればいいよ。そしてありがとう。僕とカブルツを見つけてくれて。こんなに心強い仲間は他にいないよ!白い雷を操る魔法使いに何でも糸で解決できる帽子なんて探しても絶対見つからないと思う。だから一緒にこの世界を救おう。何年掛かっても僕達は決して諦めない。」

 

 「汝の言う通りだな。立ち向かえる者たちだけでもヤツを止めねばならぬ。たとえここに集う者だけだとしてもだ。」

 カブルツもヒベルの言葉に続く。


 「けっ!あ~くせぇくせぇ、やめだやめだ!感謝なんかするんじゃなったぜ。」

 ニットンは照れ隠しだと言っている様な発言を口に出すしかなかった。

 「私からもありがとう。」

 カノミュは珍しく明るくない真剣な感謝の気持ちを伝える。


 「そろそろ休もう。明日もずっと歩きっぱなしだからね。」

 ヒベルがバックパックから二人分の寝袋を取り出しながらつぶやく。


 こうして、旅路の一夜が静かに終わりを告げた。

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