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3.決意を込めた覚悟

決意を込めた覚悟

―翌朝6時頃―


 バゴーン!バン!ドドドド!

 ズゥゥゥゥウン!バリバリバリッ、メキメキッ!

 

 家全体が大きく揺れる、騒音で窓ガラスが悲鳴を上げている。


 「な、なんだ!?」

 ヒベルは騒音に起こされ、ベッドから飛び起きた。


 「汝、外が随分と騒がしいぞ。我を身に着け外へ。」

 腕時計は静かに鋭く指示を出す。


 「わ、わかってるけど、着替えぐらいは……」

 落ち着こうとしても、動揺してしまうぐらいさっきの音は尋常ではなかった。

 ヒベルは服を慌ただしく着替え、靴を履き、腕時計を身に着け、玄関を開ける。


 「な、なんだ、どうなってるんだ!?」

 目の前に昨日まであったはずの住宅やお店が、まるで隕石でも落ちたような状況だった。


 「誰か、助けてくれ!娘が瓦礫の中に!」「早く、逃げないと」「誰か、誰か、」

 悲痛な叫びや助けを求める声が鳴りやまない。


 「汝!ぼさっとしている暇はないぞ。恐らく、魔物の仕業であろう。今、汝に出来ることをするんだ!」

 腕時計が初めて声を少し荒げる。


 「そうだ、俺に出来ること……もう冒険者なんだ!魔物を見つけて倒す!カブルツさん!変身できそう?」

 ヒベルは学校方面へ無意識に走りながら腕時計に問いかける。


 「願え、それに応えよう。」

 「カブルツさん、お願い!もう一度あの力を!みんなを救うために必要な力を僕に!」


 キュイーン!ピカン!

 腕時計が光を発し、文字盤は大きくなり、ヒベルの両手に剣が出現する。


 その時、目の前にはヒノック・ドラゴンが3体現れる。

 体長は2メートルほど、真っ赤で4足歩行の羽の生えた魔物だ。


 「ピギャーーー!」

 ヒベルの存在に気付き3体から同時に威嚇される。


 (どうしてだろう。魔物と戦うのは2回目なのに、あんまり怖くない。)

 ヒベルは意外と落ち着いていた、初めての戦闘が巨体なロック・ゴーレムだった彼にとっては目の前の敵が小さく感じたのかもしれない。


 カブルツが静かに言葉を発する。

 「汝、何時を刻む?」

 「12時!」

 両手が天を指す。そして振り下ろす。

 「いっけー!」

 スパン!3体のヒノック・ドラゴンが一撃で縦に真っ二つ。

 今度はヒベルも認識出来た。剣を振り下ろした瞬間に飛ぶ斬撃が放たれた。


 「すごい、カブルツさん!すごい力だよ!」

 自分でやったことなのに喜ばずには入れらなかった。


 「汝、まだだ、魔物がうじゃうじゃいるぞ。気を引き締め直すんだ。」

 腕時計は落ち着いた声で諭すように促す。


 「うん!でも、街の人たちも救わないと!」


 「はぁはぁ、おい!君!学生か?冒険者か?」

 息を切らしながら自警団員が話しかけてきた。


 「冒険者です!町の人が下敷きになってると思うので、今から助けようとしてます。」

 「それは我々が引き受ける。冒険者ほどではないが、魔法を使って町の人々を守るのが我々だ。君はすぐに冒険者学校に向かってくれ、なぜだかわからんが、この魔物たちはそこを目指してるそうだ……頼んだぞ、若き冒険者よ。」


 「はい!わかりました、自警団員さんも気を付けて!」

 ヒベルは再び走り出す。

 (魔物が学校を目指してる、そんなことあり得るか?そこまで知能が高くない魔物がどこかを意図的に目指してる。それも集団で。おかしい。)

 ヒベルは疑問を抱きつつ、進む足は止めなかった。

 途中で目の前に現れた魔物は大きな技を使うほどではなく、ヒベルの訓練された剣術で何とかなる程度だった。


 ―学校、正門前―


 ヒベルはようやく学校に着いた、道中の魔物には苦戦することなくたどり着いたが、校庭ではダグビル教官含め教官たち4人ほどが巨大な魔物と対峙していた。


 巨大な魔物:「グギャーン!!!」

 モグラス・オウ。体長7メートルほどの鋭い爪が生えた、黒いモグラのような魔物。


 「なんてデカさだ。本来モグラスはせいぜい3メートルほどだろう。どうなってんだ、まったく。それに、硬いうえに速い。」

 ダグビル教官含め、他の者たちも動揺が隠せない。


 「ダグビル教官!大丈夫ですか!」

 正門を抜け、走りながら声を掛ける。


 「ヒベルか!無事だったんだな、よかった。こいつがボスみたいだが、恥ずかしい話、歯が立たない。なんとか、ならないか?」

 ダグビル教官は卒業試験で桁違いの斬撃を放ったヒベルを評価し、もう一度あの時の技を使えないか尋ねてくる。


 「はい!やってみます!さっきもそれで道を切り開いてきました!カブルツさん!お願い!」

 

 「汝、何時を刻む?」

 「12時!!」


 ヒベルが両手を天に掲げる。そして一気に振り下ろす。

 ザッ!……シーン。


 「え?なんで?」

 飛ぶ斬撃が出ない、ヒベルは間抜けな声を出す。


 その時、巨大なモグラス・オウがこちらに向かって突進してくる。

 「まずい!みんな、避けろ!!!」

 ダグビル教官が叫ぶ。


 (速い!?ぶつかったら……死!やばいやばいやばい。)

 ヒベルは咄嗟に前へ盾を構える。


 「ニットン!ワイヤーロック!」

 ヒベルの構えた盾とモグラス・オウの間にいつの間にかカノミュとニットンの姿が。

 そして、カノミュの被っていた帽子がシュルシュルと糸を出し姿が小さくなる。伸びた糸が魔物の足へ蛇のように絡みつく。

 「そのまま、ぎゅっと結んじゃって!」

 その声とともに、足に絡みついた糸が巨大な魔物の足を縛り上げる。皮膚の硬い魔物のはずだが、苦しそうに倒れて悲鳴を上げている。

 「グギャーン!」

 

 教官たち:「おー!やった、すごいぞ!嬢ちゃん!」 

 「助かりました、カノミュ様。後は我らでとどめを。」

 ダグビル教官がカノミュに礼を伝え使命を果たすため剣を構え直す。

 

 カノミュとニットンのおかげで勝機を得た教官たちが歓声を上げる。


 「ダメダメ!最後はヒベル君に決めてもらわなきゃ!ここに来たって事は覚悟は決まったんでしょ?」

 ヒベルに優しく声を掛ける。

 「誰でもいいからさっさとしてくれ!いつまで縛ってないといけないんだ!お前!不発だったろ!ふざけてんなら帰れ!」

 カノミュの頭の上で小さくなったニットンが叫ぶ。

 

 「こら!ニットン!なんでそんなに怒るの!あなたどうせ、ちぎれないんだからいいでしょ!」

 カノミュは片足を地面に強く踏み込みながら上を見上げて声を張る。


 「カノさん、ニットンさん、ありがとうございます。でも、僕はもう技をだせないみたいです。さっきも不発でした。」

 

 「なに、バカのこといってんだ!そんな技一発で元勇者なわけねぇだろーが!おい!腕時計!もったいぶってないで教えてやれよ!」

 ニットンはしびれを切らしている。


 ……ガンガン!

 その時足を縛られてるモグラス・オウが爪を地面に立て穴を掘ろうとしていた。

 ニットン:「まずい、逃げられるぞ!早くしろ!」

 カノミュがモグラスに向き合い戦闘態勢に入る。他の教官たちも顔つきを変えて再び武器を構える。


 「カブルツさん!どうすればいいですか!さっきはなんで不発だったんですか!」

 ヒベルは剣を構えながら必死に問いかける。

 「汝、今日はもう12時を刻んだではないか。」

 腕時計はなぜか冷静にその問に答える。


 (12時はもう刻んだ……もしかして、別の時間なら……)


 モグラスが地中に潜り、地面を巻きあげながらこちらに進んでくる。


 ダグビル教官:「くそ、地面のせいで雷魔法が効かない!」

 ニットン:「まずい、一度拘束を解くぞ!お前ら避けろ!」


 全員が地中からの攻撃を回避する為、身をのけぞる。

 ヒベルを残して。

 「ヒベル君!一旦体制を整えるために避けないとダメ!!」

 カノミュはヒベルに叫びながら手を伸ばす。


 「避けるんじゃない、進むんだ。」

 その目に迷いはなかった。しっかりと前を見て両手の剣を逆手に持ち替える。

 

 「汝、何時を刻む?」

 「6時30分!!!」


 そう叫んだ瞬間、左腕の短剣と右腕のロングソードは真下をしっかりと指す。

 そして……剣を思いっきり地面に突き刺した。


 ズサズサズサズサ!

 

 ヒベルが突き刺した地面から真正面に銀色の大きい棘のようなものがいくつも出現し地中からこちらに向かっていたモグラスに突き刺さる。

 「グゴギャー……」

 断末魔のような悲鳴を最後に、モグラスは動かなくなった。


 ……一瞬の静寂ののち。

 「やったー!すげーなヒベル!」「まさかお前がこんなこと出来るなんてな!」

 教官たちが剣を地面に突き刺したままのヒベルの周りに集まり声を掛けてくれた。

 「はあ、はあ、」

 ヒベルは息を切らして地面に剣を突き刺したままだった、足に力が入らないような感覚を初めて覚えた。


 「お前たち!まだだ!学校の外にまだ魔物がいるかもしれん!動けるものはすぐに向かうぞ!学校を解放し負傷者の手当てを第一だ!急げ!」

 ダグビル教官は緩みそうな顔を引き締め直し告げた。


 教官たち:「はい!」

 教官たちも歓喜の顔を引き締め、再び戦場へと走り出す。


 「やったね!ヒベル!すごい技じゃん!まさか地面から棘が出てくるなんて思わなかった!腕時計さんもさすがだね!」

 拍手をして飛び上がりながらカノミュが声を掛けてくる。

 「ふん、お前らもっと早くそれを使えよ!何のために足止めしたのかわかんなかったじゃねーか!」

 いつの間にか元に戻ってるニットンは相変わらず不機嫌なようだ。


 「すまなかったな、すべてを教えて出来るのと。汝が考えて成長するのとじゃ天と地ほどの差が生まれる。汝よ、よくやった。」

 「うん、ありがとう、カブルツさん。カノさんとニットンさんも!助かりました!」

ヒベルはようやく立ち上がり、嬉しさと強敵を倒した高揚感でニヤニヤしながら言葉を発した。

 

 その時、空から声が聞こえた。ドスの効いた、まさしく邪悪な声が。


 「オイオイ!これはどういうことだぁ?校長を攫う計画はうまくいったのか?見事に俺のかわいいペットが串刺しにされてるぜ!」

 鬼のような仮面をつけ、黒いローブを着た、ガタイのいい男が、空中でそんなことを言っている。


 ビューと強い風が吹いた直後。

 「オーガ、お前はこの作戦の裏方役だろ。なんでここにいる。」

 今度はヒベルたちの後ろから声がする

 咄嗟に振り替えると、そこには、鳥のような仮面を付けた人物が、脇にボロボロの人を抱えて立っている。


 「おう、くそ鳥野郎!そのボロボロの雑巾みたいなのが校長か?ならさっさと暴れさせろ!用は済んだんだろ!」


 「全く、どうしてあなたが幹部なのか疑いたくなりますよ、幼稚な言動が多すぎです。」


 ヒベルとカノミュは本能的に距離を取る。心臓が警鐘のように激しく鳴り、全身の血の気が引くのを感じながら、鳥の仮面を付けてる人物に校長先生が捕らえられてるのを理解した。


 「お前たちは何者だ!校長先生を離せ!」

 ヒベルはらしくもなく声を荒げ剣を再び構える。

 「あなたたち、おとなしく言う事を聞きなさい!」

 カノミュもヒベルの言葉に続く。


 「あら、こんなところに人間がいたんですね、これはこれは失礼いたしました。わたくしは、ハゲタカと申します。あの空で騒いでいる声の大きい方はオーガ。我ら魔王直属の幹部。カタクリズムのメンバーでございます。以後お見知りおきを……それでは。」

 ビューーーーと風が吹き荒れる。


 「おい!この風やめろ、くそ鳥野郎!俺は暴れるんだよ!」

 「ダメです。まずは魔王様の命令が最優先。帰りますよ。」


 宙に浮いていたオーガとそれを追うように空を飛ぶハゲタカ。

 地面に突風が吹き荒れ風圧でヒベルたちは身を屈める。


 「待て!校長先生を返せ!」

 ヒベルが剣を構えたが相手ははるか彼方に飛び去ってしまった。


 「ヒベル!カノミュ様!今のは!?」 

 ダグビルが異変に気付き走りながら問いかけてくる。


 

 カノミュは一瞬、ダグビルを睨むような眼をして言葉を発する。

 「校長先生が目の前で連れ去られてしまいました。連れ去った人たちはおかしなお面を付けて、カタクリズムと名乗り……魔王直属の幹部と言ってました。」


 「なんだと、校長が……町の混乱や学校への襲撃は校長を攫う為だったのか、だが歴代最高魔導士の校長が連れ去られただと……それも、魔王の幹部に……」

 「事情はわかった。とにかく怪我人の手当てが最優先だ。町に現れた魔物はほとんど片付いた。君たちも落ち着いたら校長室まで来てくれ!なにか、あいつらの手掛かりがあるかもしれん。」


 ダグビル教官は今すべき最優先事項をこなすために動いた。その表情は時折、悲しさを混じらせながら。


 人々の救助が落ち着き、混乱が収まった頃。

 ヒベルとカノミュは校長室の前で教官を待っていた。


 「なあなあ、先に入っちゃっていいんじゃね~か、こんな場所で突っ立てないでよ~」

 ニットンは待ちくたびれたのか不満を漏らす。

 「ダメよ、勝手に入っちゃ……私も知らない人が自分の部屋に入ってきたら嫌だもの。おとなしくダグビルさんを待ちましょう。」

 ヒベル:「あいつら、何者だったんだろう。」

 「魔王直属の幹部、カタクリズム……当たり前かもしれんが、500年前には存在せんかったな。」


 暗い雰囲気の中、カタカタと足音が廊下の奥から聞こえる。ダグビル教官だった。


 「待たせてすまなかったな。校長室の鍵を借りるのに手間取った。中の物には触れないように、だがなにか変わったものがあればすぐに報告すること。敵も息をひそめてるかもしれん。」

 ダグビル教官が鍵を扉に挿そうとした時、ギギギーと自動で扉が開く。

 鍵は掛かっていなかった。


 「鍵は壊されていたか。全員、中に入るぞ。」


 全員が中に入り、扉がまた自動的に閉まる。

 そして、部屋中のかがり火に火が灯る。


 部屋の中が明るくなった時、全員が驚愕する。

 「これは、ひどいな、魔物が何十体も暴れまわった後のようだ……」

 本が床に散乱し、壁には巨大な爪痕、家具はほとんどが原型をとどめていない。


 「でも、おかしいですよ。いくら外が騒がしかったとはいえ、校長室がこんなことになってるなら誰かが気づくはずです。」

 

 「敵の能力か何かじゃないか、俺たちの背後に現れた鳥仮面は音も気配もなく現れたぜ。」

 ヒベルは冷静に分析したが、珍しく真面目にニットンが口を挟む。


 「これじゃ、何かを探すのは無理そうね……」

 上を見上げながら諦めたようにカノミュがつぶやく。

 「あれ?天井の照明になにか引っ掛かってない?」


 全員が一斉にカノミュの視線を追う。

 「なんだ?紙のようなものだな、手紙か?」

 ダグビル教官が目を細める。

 

 カノミュ:「ニットン!取って!」

 ニットンは無言で糸を伸ばし紙に巻きつけダグビル教官へ手渡すように降ろす。

 「これは、校長が残した手紙みたいだな……」

 全員が静かにダグビル教官の言葉に耳を傾ける。


 「読むぞ……『これが誰かに読まれてるという事は、わしは殺されたか、攫われたであろう。まずは皆、落ち着くことじゃ。老い先短い老人のことなど気にするでない。未来ある若者を育てるのじゃ。魔王の狙いは恐らくわしの幻影の力じゃろう、だが恐れるな。やっと勇者の芽が育ち始めた。しっかりと成長を見守り送り出すのがこの学校のあるべき姿、深追いはせず。己のすべきことを全うしなさい。 校長:シュルベイツ・アブイル』」


 ダグビル教官は歯を食いしばりながら手紙を読み上げた。


 ヒベル:「これは、遺書……校長先生の想いですね。」

 カノミュ:「……校長先生は魔王に狙われてる事を知っていたみたい。それなのに生徒を送り出すため、学校で立派に責務を果たしていたんだわ。」

 二つの古代遺物は口を挟まず黙っている。


 「校長の意思、汲み取らなければ。君たち今日は帰りなさい。カノミュ……さんは、近くの無事な宿屋を取らせます。」

 ダグビル教官は言葉に詰まりながらカノミュに告げた。


 「いやいや、町も学校もこんな状況で私だけ宿屋に泊まるなんてできないわ!」

 数秒の沈黙、カノミュはヒベルを見る。

 「そうだ!今日はヒベル君の家に泊めさせてよ!」

 顔を近づけニコニコしながらヒベルに言い寄る。


 「え、別にいいですけど……なにも面白い物なんてないですよ。」

 ヒベルは以外にもすんなり了承した。町の現状を加味してのことだろう。


 「やった!じゃあ決定!ヒベル君の家にレッツゴー!」

 敢えて明るく振る舞う。

 ダグビル教官に気遣ってのカノミュの優しさだった。


 ―19時頃、ヒベルの家―


 「ここがヒベル君のお城って事だね!ちゃんと掃除もしてるし、年下の男の子って思えない!一人暮らしなんだよね?」

 カノミュが明るく問いかける。


 「そうですよ。一人暮らししてから長いので、掃除も料理もなんとなく出来るようになりました。」

 ヒベルは肩に掛けたポーチを外し、カノミュが座るテーブルの向いに座る。


 「いや~、よく坊主の家は無事だったな!野宿にならなくてよかったぜ!」

 カノミュの頭の上から帽子が嬉しそうに声を発する。

 「ニットンはどこでも寝れるでしょ!レディのことを気遣いなさいよ~!」

 いつもだとありえないぐらい賑やかなヒベル宅。


 「そんなことよりよ~、腕時計!お前は誰だ?あまり突っ込まないでいたが、俺の時代にいたのか?」

 

 数秒の沈黙の後、カブルツが声を発する。

 「我はカブルツ。ニットン殿とは違う時代の勇者になるだろう。戦いと言えば、剣と盾だ。そなたのように糸で戦う者など私の時代には居なかった。」

 その場にいる人間たちは声を出さずに会話を聞いてる。

 「なるほどな、じゃあおっさんは剣と盾で戦ってた勇者なんだな。遺物になった勇者は本来の能力を、覚醒してもらった人間と使えるようになるってところか。思い出したくもないな、帽子に変えられて数百年。どれだけ長かったか……」


 「恐らく、その様だ。魔王の幹部と名乗る者もあらわれた。これは偶然では説明がつかん。ヒベルよ、明日にでも旅立ち、お互いの目的を果たそうぞ。」


 突然話を振られたヒベルは少し動揺したが、しっかりとした顔つきになり。

 「そうですね、ここに居ても何もできない。せっかく冒険者になったんだ。僕と家族の為に明日。この町を発つよ!」

 しっかりと前を向き発言をする。


 「はいは~い!もちろん、私とニットンもついて行くわ!そのためにあちこちのギルドを手伝ってお金を稼いで、仲間を探してたんだから!古代遺物を覚醒させた、同じ勇者をね!」

 椅子から立ち上がり手を挙げながら元気よく声を出す。


 「おいおい、カノ、ほんとにこんな奴らが最初の仲間なのかよ、魔法が使えないガキと古い戦いしかできない腕時計だぜ?全く先が思いやられる。」

 「もう!なんでニットンは素直じゃないの!さっきのヒベル君とカブルツさんの技を見て言葉失ってたくせに!!自分よりすごい技を出されて嫉妬してるんでしょ!」

 そのやり取りを聞いてヒベルが笑みをこぼす。


 「ありがとうございます。カノさん、ニットンさん。是非!一緒に冒険しましょう!」

 「我からも頼む。汝らの力を貸してほしい。今度こそ魔王を倒し世界を平和へ導く使命を果たす。」


 ヒベルはカブルツを着けてる左腕の拳をカノミュの目の前に突き出す。

 「もちろん!これからどんなことがあってもみんなで乗り越えましょ!」

 と笑顔でグータッチを交わす。


 「おい!俺の意見は無視かよ!くそ!お前ら!俺がこのパーティのリーダーだ!ちゃんと働けよ!」

 「ちょっと!いつからリーダーになったのよ!帽子のくせに!」

 その発言でみんなが笑い合う。

 

 夜明けとともに困難があり、強敵と対峙した2人と2個の旅が始まろうとしている。

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