10.必死になる理由
必死になる理由
―ミミナの家の前―
ミミナの大声が辺りをシーンとさせた。
「あ……ごめん、なさい。その理由を話すから、みんな魔動車に乗ってほしいっす。」
ミミナは暗い顔のままガレージに停めてある魔動車に向かって歩き出す。
カノミュは勢いよく駆け上がった階段をとぼとぼと下りてきて言葉を発する。
「ごめん、何も考えずに玄関まで駆け上がっちゃって。」
「いや、違うんっす。理由があって、マジで長くなっちゃうから、向かいながら話すっすよ。」
何とも言えない空気が流れてヒベルは言葉に迷いながら魔動車を見る。
銀色の鉄の様な物質で出来た車輪が4つある乗り物だ。
馬車の荷台の様なイメージで屋根は茶色い開閉式のシートで被われている。
本来、馬がいる正面には杖の様なものが立っていて、てっぺんに青色の水晶が光っている。
「ミミナとプラメンで運転するから、カノ先輩とヒベルんは後ろに乗ってくださいっす!」
ミミナは正面からカノミュとヒベルは荷台になってる部分に後ろから乗り込む。
中も意外と狭くなく大人3人ぐらい座れそうな長椅子が向かい合わせに備わっていた。
ヒベルとカノミュは一番先頭に近い椅子に向かい合わせで腰掛ける。
「それじゃ、プラメン。お願いね!」
ミミナは水晶の付いたハンドル代わりの杖を両手で握る。
すると、茶色い彫刻の掘られた試験管からちゃぷちゃぷんと音を立てて水があふれてくる。
それが青い水晶に振れた瞬間。
ボ、ボボボボボ!
魔動車の車輪が青く光りゆっくりと回り始めた。
魔動車は街の中をゆっくりと走り南ゲートを抜け、3人と3個は無言のまま速度が上がる、クエストの目的地である山を目指して。
数分後。
「……実は、」
沈黙を破ってミミナが話し始めた。
カノミュとヒベルは自然にミミナの声に耳を傾ける。
「家族が全員、病気になっちゃったの。なぜかわかんないけど、灰色の肌になって意識がないの。パパもママも……弟も。もしかしたらうつる病かもしれないから、玄関を開けてほしくなかったの。ミミナだけなぜか平気だけど。ごめんねこんな状態で一緒にクエストなんて。」
ミミナはいつもの喋り方ではなく、本気で伝えようと言葉を選んだ。
ヒベルは胸が締め付けられるような感覚に襲われた。
2人は無意識に視線を落とし、かける言葉を探していた時。
「けっ!辛気臭いな!そのためのホカ草だろ?石化を解く薬草だからな!」
ニットンの言葉にミミナはびくっと少し身体が跳ねた。
「え、ニットン。ホカ草の事しってるの?」
カノミュは目を丸くして自分の頭の上に乗ってるニットンを見ようとする。
「知ってるさ、昔からある。俺の故郷ならそこら中に生えてたぜ。今はしらね~が、石化する病気ってより、魔物の能力で石化しちまった奴を治してたな。」
「そう、そうなんす。ホカ草は石化を解く特効薬!マジでニっちゃん物知り!そして……それがやっとクエストの報酬としてリナスマ都市にやってきたんす!」
ミミナはさっきまでの暗い顔ではなく、少し笑顔になって時々振り返りながら言葉を出していた。
「まってください、ミミナさんはヒーラーだから回復魔法が得意なんじゃ?」
ヒベルは頭の中で状況を整理しながら疑問をぶつけた。
「ふふ、ヒベルちゃんいいところに気が付いたわね~。」
ずっと水魔法で魔動車を動かしていたプラメンが言葉を発した。
「あ!プラメン!ダメ!ミミナがちゃんとマジに話すから!」
ミミナは腰に付いた試験管を見ながら顔を横に振った。
「あの、また隠してたこと何すけど、実は、回復魔法使えないんす……」
この衝撃発言に対して。
「……え!?」
カノミュとヒベルは息の合った声を出した。
「でもでも、ヒーラーには変わりないっすよ!薬草にミミナが魔法をかけて、煎じて飲めば!状態異常も!骨折も!ちぎれた手足も!心臓が動いてる限りは元通りに出来る自信があるっす!味はマジで保証しないっすけどね!」
ミミナは自信満々に運転している状態で立ち上がり、右手で飲み物を飲むジェスチャーをしながら元気よく発言した。
「……薬草を……煎じて……飲む。。。」
カノミュとヒベルは、ぽかんっとしながら、またまた息の合った言葉が喉から出てくる。
「だから、ホカ草が必要なんす!それで全員治して、幸せなミミナライフを取り戻すっすよ!」
後ろを見ていないミミナは元気よく声を上げる。
「そっか、とにかく。家族を助けるために必要ならなおさら早く報酬を手に入れたいね!全力で力を貸すよ!」
ヒベルが我に返ってミミナに声を掛ける。
「あ!ヒベルん!やっとミミナにタメ口使った!そのままミミナって呼んでよ!」「はい!練習!練習!ミ!ミ!ナ!」
「あ、え、、み、みな。」
「うんうん!ミミナさんなんてやめてよね!」
ミミナとヒベルが距離の縮むやり取りをしている中、カノミュは小声でぶつぶつ言っている。
(冗談でしょ、、薬草を飲む。。塗るじゃなくて?いや、魔法が効きにくい人に飲ませるとかは聞いたことあるけど。。薬草、、絶対。まずいよね。)
「汝は、おなご達によく言葉を指摘されておるな。ミミナ殿。我にもそのうち良い呼び名を頼むぞ。ニっちゃんのようにな。」
「うぉい!おっさん!てめぇ!喧嘩売ってるだろ!買うぞ!!」
「みんな、マジ感謝!ありがと!」
カブルツの言葉にどんな意図があったのかは誰もわからないが、魔動車は着実にガチョウチョウの住処へと賑やかに近づいている。




