【4話-4】現代のねずみ小僧騒ぎで大パニック!
全社員が一列に並ばされ、身体検査を受ける。その背後では、別の社員が検査を受けている社員の机や持ち物を徹底的に調べていた。
パーテーションで簡易的に作られた衝立ついたての向こうでは、
「舌の裏を見せろ!」
「手のひらには何も隠し持っていないな…」
「尻の穴のなかは異常ありませんでした!」
と、およそ現代文明に生きるものと思えない野蛮な身体検査が行われているのが耳に入る。肛門まで調べ上げるとは、ここは明治時代の刑務所か。まだ持ち物検査の方がマシだな。
「こいつ、彼女に作ってもらったお弁当を持ってきてやがる!」
「『たっくんへ♡』だってよ!くそ、むかつくぜ!」
「先に食ってやる!」
…前言撤回。どっこいどっこいの野蛮さだった。ブラック企業は人間性をなくすというが、世間一般の定義と弊社の社員では大きくかけ離れているようだ。
そうしているとテトがフロアにそっと入ってきた。
(テト…!)
横目で視線を送ると、こちらに軽くひらひらと手を振ってテトが俺のデスクにするりするりと近づいていく。盗賊なだけあって、滑らかな身のこなしだ。余計なことにお金をかけないブラック企業の精神が生きた誰でも出入り自由な入口から悠々と中に侵入したらしい。
(盗賊がスキルも使わないほどガバガバなセキュリティの会社って…)
本当になんでこの会社に入ったんだろう…。俺が悲しい自問自答している間に、テトは持ち物検査をしている社員に見つからないよう死角に潜ひそみつつ、順調に書類の入っているデスクに接近していく。
あと、もうちょっと…!テトの手がデスクの引き出しに迫った、そのとき!
「諸君、これは何の騒ぎだね?」
堂々とたる声がフロアに響き渡り、ブラックな弊社のトップ――社長がとうとう出社してきた。




