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【4話-2】現代のねずみ小僧騒ぎで大パニック!

数時間前。


「ふ~ん。『現代(げんだい)のねずみ小僧、(あらわ)る!』ね…」


俺はスマホで軽くニュースを見ながら、自宅があるアパートの廊下を歩いていた。今日といってもあと数分で終わるが、最近の話題は(ちまた)で『現代(げんだい)のねずみ小僧』なる者が現れ、脱税(だつぜい)をしている富裕層(ふゆうそう)の家から金塊(きんかい)を盗み出したり、他国籍(たこくせき)の金持ちが所蔵(しょぞう)する日本芸術品(にほんげいじゅつひん)を盗んでは美術館に寄贈(きぞう)しているらしい。犯行現場には人の手ぐらいの大きさのネズミの手形(てがた)が残されていることから『現代(げんだい)のねずみ小僧』と呼ばれているようだ。


この不景気でみんな鬱憤(うっぷん)がたまっているのだろう。ニュースのコメント欄には『いいぞ、もっとやれ!』『金持ちがため込んでいても経済が回らない。少しぐらい盗られても困らないんだから文句言うな』『ねずみ小僧さま、すてき~!』といった過激なコメントに溢れている。


「ただいま」


帰宅後、軽くシャワーを浴びて一日の汚れを洗い流す。さっぱりした後、寝る前に少しでも自分の人生を楽しもうと隣人の勇者とパーティーを組んでいるMMOを起動したところ、


「それは、なんにゃ?」


猫娘(ねこむすめ)の盗賊・テトが、背後から気配もなく現れた。


「うおおおおおおお!びっくりさせるなよ、おまえ!心臓が止まるかと思ったぞ」


「すまんにゃ。数時間前からこの家でくつろいでいたんにゃが、なかなか帰ってこないから、寝ちゃってたにゃ」


「俺の家に勝手に上がりこんでくつろぐなよ!」


そういえばこの前もこんなことがあった。勇者パーティーの一人・聖女(せいじょ)カタリナが訪問してきた宗教勧誘の女性とバトル――という一方的な洗脳を行い、女性が信仰していた宗教団体の宗教改革――という名の乗っ取りを果たした。字面にすると、なかなか恐ろしいことが起きている。


今でもネットニュースでたびたび団体の話題が流れてくるが、どうやら今まで行っていた非合法(ひごうほう)レベルの悪質な金集めを一切止め、完全なる慈善団体(じぜんだんたい)に生まれ変わったらしい。


不思議に思う俺の前に、テトは(ふところ)から一本のカギを取り出して見せてくれた。


「合鍵にゃ」


「なんでそんなものを持ってるんだ!」


生まれて数十年。年齢イコール彼女いない歴の俺が一人暮らしを始めるときに夢見た、彼女に渡す予定の合鍵――それを異世界の盗賊が先に持っている。いったい、どこで人生を間違えたんだ…。


「ちなみに勇者パーティーは全員持っているにゃ。私が全員分を作ったにゃ」


「なんだって?!」


…本当に、いったいどこで人生を間違えたんだ。不法侵入の謎は解けたが、知らない間に不特定多数(ふとくていたすう)の人間に合鍵を持たれていた事実に驚愕(きょうがく)する。しかも、そのうち3人は男性である。ひとりは筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)妻子持(さいしも)ちのおじさんだし。なにも甘酸っぱくない。甘さが抜けて、酸っぱさしか感じない。


「それは返してくれませんかねぇ」


「いやにゃ」


「おい、家主の拒否権(きょひけん)


この短期間の付き合いで分かったが、異世界人は基本的に人の話を聞かない。自分の道理(どうり)で話を進めていく。なので、言い合いしても無駄に時間が過ぎていくだけだ。


俺は説得を諦め、PCゲームを起動した。今日、勇者はログインしていないらしい。


「寝ないのかにゃ?」


テトが俺の横にちょこんと座ってPC画面をのぞき込む。さきほど判明した悪逆非道(あくぎゃくひどう)行い(おこない)を忘れるくらい、かわいらしい仕草だ。


「最初のころは眠っていたんだけどな...。もう体が短時間睡眠に慣れちゃったのか、横になってもすぐに出社時間がくるわけだし、それなら少しでも自分の時間を楽しみたいと思って、つい他のことをしちゃうんだよな」


「ふ~ん」


テトは頭の上に生えた両耳をピコピコと動かし、目を細めて画面を眺めながら相槌(あいづち)を打つ。


「そんな仕事、辞めたくならないかにゃ」


「辞めたいよ、そりゃ。でも生活できないし、転職できるほどのスキルが身についている気もしなくてな」


言われるがままに与えられた仕事をこなして、数年間。正直、なにか役立つスキルが身についた気がしないし、薄給(はっきゅう)のせいで退職したとしてもすぐにまた働き口を探さないとならないだろう。それならば、何も考えずに今まで通り仕事を進めている方が楽に感じてしまう。


「なにか会社の落ち度で、辞めるときに大金がもらえたらな~。すぐにでもやめるんだけど」


「ふむ」


「あと、会社に痛い目を見て欲しいな!少ない給料でこき使いやがって、倒産(とうさん)しやがれ」


「うむ」


聞いているんだが、聞いていないんだがわからないあいまいな相槌を打ちながらテトが頷くうなずく。


「山田がここまで頑張っているんだから、少しくらい痛い目を見てもいいにゃ。その会社ってやつは」


「そうだな、はははっ」


と乾いた笑いで返事をし、その後は少しゲームをやってからテトを横目に眠りにつき、いつも通り始発電車(しはつでんしゃ)で出社したのだった。

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