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第21話 三人の人気者

白「こんにちは、今回は神威のイメージが随分と変わる場面

があります」


夜「神威が好きな人ごめんなさい」



「…コンサート?」


 朝の教室で由宇は首を傾げていた。向かい合う形で葵が座っている。


「うん、コンサート!由宇のファンクラブができてから皆の前でまだ何もしてないでしょ?

 だから今度の日曜日に体育館を使ってコンサートをしようって話になったのよ」


 最近は普通に生活していて忘れていたが確かに由宇のファンクラブは存在する。しかも会員は徐々に増えているらしい。


「急にコンサートとか言われても…しかも今日は月曜日だから一週間ないじゃないの」


 歌を歌うにしろ曲を決めたりする時間や練習する時間が一週間で足りるとは由宇には思えなかった。


「大丈夫よ、曲は私と陸でいくつか選んだから由宇達には好きなのを選んでもらうだけだよ」


「ふ~ん……待って、「由宇達」ってどういうこと?」


 由宇が首を傾げると葵がクスクスとわらって指を三本立てる。


「今この学校には三つのファンクラブがあるんだよ?」


「え!?そうなの?」


 由宇は目を丸くして驚いた。葵は笑顔のまま続ける。


「一つ目は由宇のファンクラブ」


 由宇は小さく頷く。よく考えればなんだか恥ずかしい気もするが深く考えないようにした。


「二つ目は昴のファンクラブだよ」


「昴の!?」


 由宇は驚いたがよく考えたら昴はファンクラブができてもおかしくないくらいに注目を集めている。本人は気づいていないが実は結構存在感が大く、他人に好かれやすい。


「そういえばこの前美里ちゃんっていう後輩と友達になったって言ってたわね…昴ならファンクラブくらいできてもおかしくないか…」


 由宇は苦笑いをすると目で葵に続きを促す。


「三つ目だけど…実は神威なんだ」


「ええ!?」










―由宇Side―


 私は呆気に取られて完全に固まった。神威にファンクラブ?……いや確かに神威は顔もいいし性格も優しいから(決してナルシストではないよ?)結構他人から好かれる方だがまさかそんなことになっているとは…


「まあ、なんにせよコンサートのことはもう発表しちゃったから今日中に曲を決めて明日から練習ね!」


 その後放課後に屋上に集合することに決まり、私は不安を抱えながら授業開始のチャイムを溜息をつきながら聞いていた。





 放課後に屋上へ向かうと昴が先にきていた。隣には小学生に間違えるほどに可愛い少女がいた。


「相変わらず早いね…その子が美里ちゃん?」


 昴の横にいた美里ちゃんは私を見ると何故か顔を赤くしてじっと見つめてきた。


「…えっと?どうかした?」


「ふえ!?す、すいません!あまりにも綺麗だったので…つい見とれてました!」


 美里ちゃんの発言に顔が熱をもっていくのが自分でもわかった。かなり恥ずかしい…


「そ、そんな…私よりも綺麗な人なんて他にもいっぱいいるでしょ?」


「いや、由宇は自分の魅力に気づいてない…」


 私の問い掛けに昴が答えた。私の魅力?私にどんな魅力があるというのだろうか…


「…由宇は自然と周りの人を温かい気持ちにさせる」


「あっ…それわかるような気がします。私も昴さんから聞いてましたけど本当に側にいると安心するんです」


 そう言われて更に顔が赤くなるのがわかった。……嬉しいけど恥ずかしい。


「あれ?もう来てたの?」


 振り返ると葵と陸が立っていた。手には少し大きめの鞄を持っている。


「おや、皆さん早いですね」


 葵達のすぐ後から光がやって来た。いつものように制服をきっちり着こなしている。


「あとは神威だけね」


 私がそう呟くと昴が私の後ろを指差した。


「…どうしたの?」


「…神威ならあそこにいるぞ?」


 昴の指差した先は階段へ続くドアの上だった。梯子を使って覗いてみると貯水タンクを背もたれにして神威が寝ていた。

 なんというかとても穏やかな顔をして寝ているので…起こしにくいし……いつまでも見ていたくなるような寝顔だし……


「……はっ!?私何考えてるのよ」


 私はふるふると頭を振ってさっきまでの気持ちを振り払う。元自分を見てドキッとするなんて…私はナルシストじゃないんだから!!


「か、神威…起きて!」


 神威の肩を揺すると、大きな欠伸をして彼は目を覚ました。


「…ああ、由宇か。皆来たのか?」


 神威の言葉に頷いて答えたが私は神威の顔を直視できないでいた。






 その後、葵と陸が選んだ曲を見て、自分が歌う曲を決めることになった。


「…あ、これは…」


 私が手にした曲は飯田舞の『キミの隣で…』だった。なんとなく歌詞を気にいったのだ。


「…私はこれだな」


 昴が選んだのは“Melodies Ob Life”これはF〇Ⅸの主題歌である。


「…一ついいか?なんで女性歌手の歌が多いんだ?」


 神威が少し不満そうに呟く。それを見た葵が笑顔で爆弾発言を言った。


「だって神威には女装してもらうから」


 一瞬…世界が止まったように感じた。


「……なんだって?」


 神威が若干引きつった顔で葵に振り向く。


「だから、ファンクラブの皆から神威は女装させてっていう意見が多かったのよ。だから神威は女装決定ね」


「………はぁ」


 神威の周りだけ空気がどんよりとしている。


「(…たぶん一年生の文化祭のことでも思い出してるんだろうなぁ)」


 神威の記憶を持っている私は苦笑いを浮かべるしかなかった。


「じゃあちょっとだけやってみようか!」


 葵が突然そう言い出し、神威がビクッと肩を震わせた。葵は今までに見たことないくらいの笑顔だ。


「いや…今しなくても…」


「さあ!いくわよ!」


 葵は神威の言葉をスルーすると神威の手を引き屋上から出ていった。


「…神威、頑張って」


 私は静かに呟いた。




―SideOut―


~15分後~


「皆~お待たせ!」


 あれからしばらくして葵が笑顔で屋上に戻ってきた。


「一年生の時より凄いわよ!」


 葵はニヤリと笑い入口に合図をする


「さあ、入ってきて!」


 すると入口のほうから長身の女子生徒が歩いてきた。顔は俯いているので表情はわからない。しかし、耳が赤くなっているのでおそらく顔は真っ赤に違いない。


「え?空野先輩…この人本当に天野先輩ですか!?」


「そうよ?」


 するとその少女は俯いていた顔を上げた。髪は黒のロングヘアーで顔は少し化粧をしてあるためか女性らしさが現れており、体のラインは女子と言っても過言ではないくらいに細い。さらに恥ずかしいのか顔は赤く、目は涙で潤んでいる。


「…本当に神威か?そこら辺の女子よりよっぽど女らしいぞ」


 陸の言葉に全員が頷く。


「…ほえ~/////」


 美里にいたっては神威に見とれて固まっている。


「これは凄いですね…一年生の時もこんな感じだったんですか?」


 光の問い掛けに葵は首を横に振る。


「一年生の時よりさらに綺麗になったわ!…神威、ちょっと写メ撮っていい?」


「いや…それは勘弁してくれ」


 神威がそう言った瞬間葵が神威に歩み寄ると黒いオーラを出しながら笑顔を見せる。


「神威…その格好の時は声高くして女言葉にしてってさっき言ったよね?」


 神威がビクッと肩を震わせて後ずさる。葵の豹変に周りは呆然とするばかりである。


「…返事は?」


「…は、はい」


 神威はもはや泣きそうになっている。今の姿を見て神威だとわかる人はほとんどいないだろう。


「うん、よろしい!」


 葵が元の笑顔に戻ると全員が安堵した。


「…それにしても神威はよく高い声をだせるな」


「うん、元々声はそんなに低い方じゃないから少し工夫したらわりと簡単に出せるのよ」


 葵が怖いのか女口調で喋る神威はもはや男子とは思えない。


「…神威」


 すると昴が神威に近づいてきた。


「どうしたの?」


 昴はポケットから髪どめ用のゴムを取り出すと神威に渡した。


「…それで由宇と同じようにポニーテールにしてみてくれないか?」


 昴の言葉に首を傾げつつも神威はポニーテールを作る。カツラであるため若干苦戦しつつもなんとか結べた。


「…やはり似てるな」


 昴は由宇と神威を見比べながら呟いた。今の神威と由宇は同一人物なだけあってとてもよく似ている。はたから見たら姉妹にしか見えない。


「そ、そう」


 少し戸惑いつつも神威は気分を紛らわせるために曲選びに戻る。


「神威、これは?」


 由宇が差し出した曲を見て神威は考えると


「うん、これにする。何だかこれならいける気がするから」


 神威が歌う曲は“優しくキミは微笑んでいた”、.hack//G.Uの主題歌である。

 曲が決まったのでその日は解散となったが神威は家に帰るまでその格好でいろと葵に言われ、由宇に慰められながら帰ったのだった。





白「話の中には出てきた曲を聞きたい人はYouTube等で調べてみてください」


夜「どれも私達のお気に入りの曲だよ♪」

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