特別話 白い訪問者
反省も後悔もしておりません!
べ、別にやってみたかったとかじゃないんだからね!
土曜日の朝、リビングで由宇はコーヒーを飲みながら新聞を広げていた。彼女の肩には神子が乗っており、一緒に新聞を眺めている。
神子は時々由宇の肩に乗っているが由宇曰く「重さは感じない」らしい。
そんな朝の一時を過ごしていた二人は突然奇妙の感覚に顔を上げた。まるでこの世とは違うものの感覚。
「…神子、これって」
由宇の言葉に神子も頷く。
『…何かしらね』
気配は段々大きくなってくる。
「(…近づいてきてる)」
由宇が思った瞬間。
―ピンポーン―
玄関の呼び鈴が鳴った。
由宇と神子は顔を合わせて慎重にドアに近づく。そして一応チェーンをつけたままドアを開く。そこにいたのは一人の少年だった。
「…はじめまして、由宇さん、あと姿は見えないけれど神子さんも…」
少年の言葉に由宇は息をのむ。少年は白髪のショートヘアーに黒い瞳、そして真っ白な服を着ていた。身長は167センチくらいで高校生に見える。
「…えっと俺は19歳ですよ?」
「…心を読まないでください」
「由宇さん顔に出てましたよ?」
少年はニッコリ笑う。
「ここで立ち話もなんですから家に入れていただけたら嬉しいのですが…」
由宇はどうしようか迷った。見ず知らずの少年を家に入れてもいいのか迷ったのだ。
『由宇、大丈夫よ』
由宇が悩んでいると神子が語りかけてきた。
『彼から敵意は感じない…どちらかといえば私に近いものを感じるわ』
神子の言葉を聞いて、由宇はチェーンを外し、少年を中に入れた。
リビングでテーブルを挟んで向かい合うように座った由宇と少年はしばらく沈黙したままだったが少年が口を開いた。
「そういえば自己紹介がまだでしたね。俺は白といいます」
すると突然神子が姿を現す。由宇は驚くが少年…白は特に驚かない。
『あなたが…白なの?』
神子は驚いた表情をしていた。由宇も滅多に見れない神子の表情に驚く。
「ええ、神子さんだけでなく由宇さんや神威さんにもお会いしたことがあるんですが…わかりませんか?」
『あらあら、そういうことね…でもあなた、そんな姿じゃすぐにはわからないわよ?』
白と神子はクスクスと笑い合うが由宇は頭の上に疑問符が浮かぶばかりだ。
「…えっと、神子の知り合い?」
由宇が神子に尋ねると神子は笑顔で由宇に向き直った。
『ええ、一応ね。まぁ、いずれ誰かわかるわよ』
「………?」
由宇はやはり納得がいかないがこれ以上は気にしないことにした。神子の知り合いならもしかしたら神様なのかもしれない。
『…それで?今日は何をしに来たの?』
神子の質問に白は笑顔を向ける。由宇から見ればどこか暖かい笑顔だった。
「いや、皆元気にしているかなと思ってね。実際に見ないとわからないこともあるからね」
白は神子と由宇を交互に見つめる。その顔はどこか愛おしそうで不思議と嫌な感じがしなかった。
「あの、白さんって神子とどういう関係ですか?」
由宇が興味から白にそう尋ねると神子が微笑む。
『私の親ってところかしらね…』
「ええ!?」
神子の言葉に由宇は驚く。
「み、神子のお父さん!?」
神子と白は苦笑いを浮かべる。
『本当の親じゃないわよ?』
「さっきも言いましたけど俺はまだ19歳ですから…一応普通の人間ですしね」
由宇は白の言葉に首を傾げる。普通の人間?神子の知り合いなら神様だと思っていたからだ。
「…その見た目で普通の人間には見えないんじゃ…」
白はそうですね、と笑いながら呟いた。神子も笑っている。
「さて、じゃあそろそろ俺は帰ります。由宇さんと神子さんの元気な姿も見れたし」
そう言って白は席を立つ。
『あらあら、もうちょっとゆっくりしていけばいいのに。神威や由香だっているのに』
白は笑いながら起こしたら可哀相ですから、と言って玄関に向かう。
「それでは、俺はこれで…朝早くからすいませんでした」
そう言って白は玄関のドアを閉めた。
「ねぇ、神子?白さんって結局何者?」
『…ふふ、秘密よ』
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閉じた玄関のドアを振り返り白は目を細める。
「また、会いましょう…由宇」
そう言って何もない空間に手を翳すと真っ白なドアが現れた。そのドアを開けて白は中に入る。ドアが閉まるとすぐにドアは姿を消した。
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白と黒が混ざり合う世界に二人の人物が同時に現れた。
一人は真っ白なショートヘアーので真っ白な服を着た少年。
もう一人は長い黒髪を揺らす真っ黒な服を着た少女だった。
「…やあ夜どうだった?」
少年が少女に話し掛ける。
「うん、エルダもリリィも元気そうだったよ。白はどうだった?」
「ああ、由宇も神子も元気だったよ」
二人は笑い合うと白が手を前にかざす。すると一本のペンが現れた。
同じように夜が手をかざすと分厚い本が現れた。
白と黒が混ざり合う世界で二人は寄り添いながら呟く。
白「…さて」
夜「…次は」
二人は笑いながら本の空白ページにペンを走らせる。
白&夜「「どんな話を書こうかな?」」
夜の話が見たい人は天使として…を見てください。
やっちゃったなぁ(汗)