第20話 昴と美里
キャラクタープロフィール
泉美里
17歳
身長145cm
由宇達が通う翔星高校の二年生。明るくて真面目な性格だが見た目が小学生みたいなためによくからかわれる。委員会の仕事中昴に助けてもらったことがきっかけで昴に好意を抱いている。
本人曰く「愛に性別は関係ない!」とのこと。
帰りのHRが終わり、由宇は昴の席に近づいた。
「昴、一緒に帰らない?」
基本的に昴は由宇の誘いを断らない。しかし、次の言葉を聞いて由宇は驚愕する。
「……すまない、由宇。今日は別の友達と帰るから一緒には行けない」
そう言うと昴は鞄を手に教室を出た。
「……昴?」
由宇はその様子を唖然とした表情で見送るがすぐに笑顔になった。
「…そっか、昴にもついに春がきたのかぁ」
何やら勘違いをしている由宇だったがその顔はまるで子供の成長を喜ぶ母親のようだった。
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学校を出た昴は真っ直ぐ校門へと足を運ぶと柱に背を預けて目を閉じる。風が昴の長い黒髪を撫でる。その光景は目の前を通る生徒が全て見とれるほど美しいものだった。
「…お、お待たせしました!先輩!」
しばらくしてから声をかけられたので昴がゆっくりと目を開けると美里が目の前に立っていた。頬が少し赤く染まっているが昴は気にしないことにした。
「……じゃあ、行くか」
「…は、はい!」
昴と美里は並んで道を歩き出した。
二人とも会話はない。昴はもともと無口であるし、さらには今日の朝に告白してきた後輩と下校するということで彼女なりに緊張しているのだ。
一方で美里は憧れの先輩に告白して恋人にはなれずとも友達として一緒に帰れることが嬉しくて逆に昴の顔を直視できないでいた。
「(今先輩を見たら思わず抱き着くかもしれない/////)」
と、頭の中で昴と抱き合う自分を想像して一人悶えていた。
「……泉さん」
昴の言葉に我に帰り慌てて顔を上げると昴の顔が至近距離にあり美里は顔が真っ赤になる。
「……どうかしたのか?顔が赤いが…」
美里は昴から顔を背けようとするが体がいうことをきかないでいた。
「…だ、だだだ大丈夫です……黒神…先輩」
「…そうか」
昴にとっては何気ない行動でも美里にとっては理性が今にも崩れそうになっていた。
「(…先輩の唇)」
目の前にある昴の唇を見ながら頭の中では昴とキスをする自分を想像していた。
「(……はっ!駄目よ!もっと信頼を積み上げなきゃ!)」
美里が心の中でそう思っていると昴が顔を離した。
「……先輩?」
昴は何故か顔が赤くなっていた。実はこの時、月が力を使って昴に美里の考えていることを教えたのだ。
『この子、昴のことが本当に大好きみたいね~』
昴は由宇達のように特別な事情で知り合ったわけでなく、普通の友達として知り合った(告白されたのだが)美里のことが嫌いではなかった。いや、むしろ好感を持っている。
「……泉さん」
昴は小さく呟いた。美里は首を傾げて昴を見る。
「……わ、私のことは名前で呼んで構わない」
「……え?」
美里は一瞬言われたことがわからなかった。
「(…これはもしかして…私のことが)」
美里の顔も赤くなる。美里は必死に理性が崩壊しないように我慢しながら口を動かす。
「……いいんですか?」
美里の言葉に昴は頷く。美里は思わず昴の手を掴むと、驚く昴に向かって笑顔を見せた。
「…じゃあ、私のことも名前で呼んでくれませんか?」
「……わかった……み、美里…/////」
「ありがとうございます、昴さん!」
二人はまた並んで歩き出した。最初と比べるとだいぶ空気は和んだがまた別の意味で緊張した雰囲気になっていた。
ちょうど水道管の工事が行われている近くで美里は昴に話し合いた。
「…す、昴さん」
昴は美里へと顔を向ける。
「…い、今から家に来ませんか?」
「……え?」
昴は突然の誘いに戸惑う。
『別にいいじゃないの。仲良くなるいい機会じゃない!』
月の言葉に昴は頷く。
「……少しなら」
「本当ですか!?」
美里は満面の笑みを浮かべて昴に近づいた。
-その瞬間
どこからかボンッと鈍い音がした。昴は思わず美里を引っ張って自分の後に移動させる。するといきなり雨が降り出した。
音の正体は近くの水道管が破裂した音だった。物凄い勢いで水が噴き出していた。おそらく工事の人が何か手違いで水道管を傷つけたらしい。昴は近づかなければ特に危険はないと思っていた。
『昴!気をつけて!』
「……!」
月の言葉で昴も気づいた。水道管が破裂したために近くを走っていた車の運転手が驚いてハンドル操作を誤り、昴と美里の方に向かってきていた。
昴は美里を抱き上げると大きく横に飛んだ。さっきまで昴達がいた場所を車が通りすぎる。地面に転がる前に抱きしめる形に変えて、昴が下で上に美里が乗る形で止まった。
「……怪我はないか?」
昴の問いに美里は頷く。すると今の状態を見て美里は慌てて昴の上からどこうとするが
「……っ!」
左足の激しい痛みに思わずうずくまった。どうやら車を避けた時に足を捻ったようだ。
「……これはすぐには動かさない方がいい」
そう言うと昴は美里の背中と両膝の下に手を入れて抱き上げた。いわゆるお姫様抱っこである。
「ひゃあ!?…す、昴さん!?大丈夫ですよ!一人で歩けます!」
美里が顔を真っ赤にして昴を見るが昴はそのまま歩きだした。
「…これは私の責任だから」
結局美里はそのまま家までその状態で運ばれた。その時美里の顔が嬉しさでいっぱいだったのは言うまでもない。
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