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第15話 涙

 こんにちは(゜▽゜)/白夜です。今回はシリアスな場面です。書いてて自分が泣きそうになりました。

(…ぐすん)

「………ん」


 由宇は瞳をゆっくり開く。見慣れた天井が目に映る。首を横に向けると神子がすぐ横で眠っていた。


「……」


 由宇はゆっくりと体を起こす。だいぶ調子が良くなってきた。

 神子を起こさないようにベットから出て階段を下り、洗面台で顔を洗う。


(…まさか自分が二人になるなんてね)


 そう考えた時、由宇の頭の中にある考えが浮かんだ。


(もし、神子が試験を終えて帰った時、私はどうなるんだろう)

 元々由宇という人間は存在しない人物であり、神威が神子の力で女性になった姿だ。

 しかし、神威は言った。


『俺とお前はもはや別人だ』


 私は存在しない者、そして神子によって生まれた。ならば神子がいなくなれば…


「……私は消えるかもしれない」


 呟いた由宇の言葉は震えていた。神威と別れた今、由宇という存在はよりどころを失っていた。


「…嫌だ……私は……消えたく…ない」


 自然と涙が流れた。止めようとしたが止まらなかった。


「…私は…どうなるの…」


 由宇は一人その場に座り込んで震えた。

 その様子を入口から神子が悲しそうな顔で静かに見守っていた。










 商店街から離れた所にある公園で神威と葵はベンチに座っていた。


「…さっきはごめんなさい」


 葵は顔を赤くしながら神威に謝ってきた。


「いや…気にするなよ。元々連絡もしないでいなくなった俺がいけないんだからさ」


 神威は葵に笑顔を向ける。葵はそれを見てさらに顔を赤くして俯いた。


「おっと、そうだった。俺昼飯作らなきゃいけないんだ。だからまたな」


 神威が立ち上がると葵は神威の服を掴んだ。


「また…明日会えるよね?」


 葵の顔は赤く、目も潤んでいた。神威は葵の頭に手を置くと微笑んだ。


「ああ…また明日会おうな。そうだ、家に来るか?由宇も喜ぶだろうからな」


「本当!?」


 葵の顔が笑顔になる。そして明日家に葵を呼ぶ約束をした神威は家に帰るために歩きだした。










(私は…どうしたらいいんだろう)


 部屋に戻った由宇はベットに座りそればかり考えていた。


『由宇?』


 ビクッと由宇の肩がはねる。ゆっくりと横に首を向けると神子が座っていた。


『由宇…ごめんなさい、私のせいで辛い思いをさせたわね』


 神子は俯きながら由宇の隣に歩み寄る。


「じゃあ…やっぱり…私は」


 神子はゆっくり頷いた。


『…ごめんなさい』


 由宇は涙を堪えながら再び口を開いた。


「神子…あとどのくらい…時間はあるの?」


 神子は俯いたまま静かに口を開いた。


『もう…あまり時間はないわ…おそらく長くても…半年くらいかしら』


「そんな…何年間か一緒にいなきゃいけないんじゃないの?」


 神子は首を横に振ってベットから飛び降りる。


『私は…もう成人だから…試験の日数が大きく減らされたの』


 由宇は声が出せずに俯きながら必死に涙を堪えた。堪えなければこれから皆の前に出られないような気がした。


『…由宇』


 急に誰かに抱きしめられた。驚いて顔を上げると、自分に似ているがもっと大人の雰囲気のする女性がいた。真っ白なワンピースを着て、髪は長い白髪、瞳は自分と同じ紅と蒼。驚くのは一瞬だった。すぐに由宇には誰だかわかった。


「…神子」


『ごめんなさい、いつもの姿じゃこうしてあげられないから…』


「…ありがとう」


『…由宇、泣いていいのよ?我慢しないでいいから』


「…うっ…うう…うああああああああああああああああ!!」


 その言葉を聞いた瞬間、由宇は神子に抱き着いて泣き出した。神子は由宇が泣き疲れて眠るまでずっと抱きしめ続けた。








 神威が家についたのは12時を少し過ぎたころだった。

 玄関を開けて中に入ると買ってきた食材をリビングに一旦置いてから二階に上がり由宇の部屋のドアをノックする。


『どうぞ』


 中から聞こえたのは神子の声だった。

 中に入ると由宇は静かな寝息を立てて寝ていた。ベットの横には猫の姿をした神子がいた。


『由宇は…気づいたわ…いつか自分が消えることに…』


 神威は由宇を見る。熱はないが顔が少し赤い。おそらく泣いたのだろう。


「…そうか、いつかはわかることだったんだ。仕方ないさ」


 神威は自分が由宇から分離した時からこうなることがわかっていた。

 由宇は神子が神威の体を変化させたと思っていた。しかし、実際は神威の体を元にして新しい体を作り、神威の記憶と魂を半分に分け与えたのだ。

 魂を半分にしたせいで元に戻るまで神威は眠った状態であり完全に回復した神威はこうして分離して元の生活に戻れたのだ。


「…そう、言うなれば俺と由宇は限りなく近い別人みたいなものだ」


 そして由宇は神子に貰った神力を使って存在している。神子との契約がおわれば力も消える。つまり由宇自身が存在できなくなることを意味している。


「…由宇」


 神威と神子はただ眠っている由宇を見守るしかできないことに悔しさを覚えた。


 外はいつの間にか曇り空になり雨が降り出していた。

 今回はちょっと先のことを見越して書いたのですぐに終わるわけではありません。私自身が、


「…いやいや、まだ早いだろ」


 とつっこんだくらいです。まだまだ頑張りますので応援よろしくお願いします。

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