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一話 移住生活初日&二日目

輸送船のタラップを降りると、そこは異世界だった。


うん、異世界っぽい空してるな。昼間なのに月が見えるし、なんか月がいくつもあるし。

多分登山バッグを背負いキャリーバックを持っている時点で邪魔だとは思うが、他の乗客の邪魔にならない位置にキャリーバッグを持って移動し、背中のバッグのポケットからカメラを取り出した。

カメラを回し、自分の方に向ける。


「はい、どうもヤブサメです。今私はこの宇宙港にいます。いやー異世界の空気はおいしいですねえぇ。まぁ、本当はこの乗ってきた輸送艦の排気ガスが臭いんですがね...」


いや思ったより臭くね?頭も痛くなってきた。さすがに耐えられない。

俺はカメラを回しながら人の波に紛れ込んでこの宇宙港の入国管理局の方に向かった。


「はい、次の方どうぞ...あ、カメラは止めてください」


「あ、分かりました。」


カメラを取られて切られた。この横暴官憲め!

そう心の中で愚痴り、流石に無法地帯の官僚が相手なので指示に従う。だって彼女の後ろにAKっぽい銃持ってる人いて怖いもん...


「...これ、3Dプリンターですか?」


「えぇ、まぁ。」


「異世界というか、この国への3Dプリンターの持ち込みは禁止されています。」


「えぇ...」


どうしよう、そう迷っていた時だった。


「...まぁ、見なかった事にもできるんですけどね...」


「え?」


「...だから、見なかった事にもできるんですけどね。いやーどうしようかなー」


何をしてほしいのか分からない。


「...あの、どうすればいいんですか?」


「...はぁ?まぁ、出すものを出して欲しいなって、思うんですけどね~」


「あぁ、なるほど。」


ようやく意図が理解できた。

俺は一万円札を彼女に渡した。


「...なんですかこの紙切れ?」


「一万円じゃ足りないですか...?」


「一万円...?あぁ、そういう事ね...こっちの世界の通貨で欲しかったんですけど...」


なるほどね。そりゃあ異世界で一万円は使えないか。

とりあえず一万円は返してもらい、代わりに3Dプリンターの原料のためにと持っていた金の糸を渡すと渋々受け取ってくれた。元は加工して売るつもりで持ってきていたが、仕方ない。


こうして入国検査を突破した。そう思っていた。


「はい、じゃあ収賄の容疑で逮捕ね。」


「え?」


「いやー、現金だったら罪が重いんだけどなぁ、残念だわぁ。」


俺はAKを持った謎のゴツい制服のおっさんたちに囲まれてしまった。

どうしよう、これはかなりまずい。


そう思っていた瞬間だった。


「はい、じゃあ話は拷問部屋で聞くからね~」


「えぇ...」


「抵抗するようならここでぶん殴るけど『ゴォォォォンンンン!!!!』」


閃光が目を眩ませた。




パチパチと何かが燃えて爆ぜる音とともに目覚め、かろうじて起き上がる。


どうやら俺に詰め寄っていたおっさんが俺の盾になっていたようで、彼はおそらく死んでいたがそのおかげで俺は生きていた。


「コード黒、コード黒、コード黒、テロリストが侵入しています。軍が到着するまで抵抗してください。」


正門のほうからライフルを持った黒ずくめの男たちが走って来て、俺を置き去りにして奥のほうへ走っていった。

運がいいのか悪いのか分からない。これが異世界の日常なのだろうか?

そう思いながら荷物を確保し、入国管理局を後にした。


正門から一歩出てしまえば、いかにも異世界らしい光景が...広がっていなかった。


いたるところにコンクリート製やプレハブの建物が立っている。まぁ地球との戦争が終わってから何年も経ってるしね...


唯一異世界らしいのは看板の文字くらいだった。

あと、宇宙港の方からは時々爆発音と銃声がする。あまりここに長居するのもよくないだろう。そう考えて俺は携帯で限定的なGPS機能のある地図を見ながら新居へと向かった。




ネットで契約を済ませていたので後は鍵をもらうだけだった。しばらく歩いて建物より雑木林と畑のほうが多くなってきた頃、家の前に着いた。約束の時間より少し早いが、家主らしき...銀髪美少女がいた!!!知らなかったよ!!!


「あ...どうも、ここの家を契約した、ヤブサメです」

「身分証明書。」

「あ、はい...」


ひどく無愛想だ。かわいい。


「どうぞ」

「ん...」


俺のマイナンバーカードを一瞥すると彼女はコクッと頷き、俺のほうを向いて微妙に微笑んだ。かわいい。


「おっけー。これ鍵。」

「あ、ありがとうございます。」

「じゃあ、そういう事で。」


そう言って彼女は去ってしまった。かわいい。

とりあえず荷物をしまいたいので家に入る。




「広いねぇ!!!」


やっぱり一軒家を選んでよかった。アパートやマンションは騒音問題がクソだ。やっぱり一軒家こそ至高。お金があるならね。俺にはなかったから一軒家なんて生まれて初めてだ。

この時点では異世界の素晴らしさを噛みしめていた。だが、数時間あるものを待っているうちにある問題に直面した。


「...ヒマだ。」


そう、暇である。まだpcなど、配送業者に頼んだ荷物は届いていないのでやることがない。スマホとネット環境はあるが、衛星ネットワークなのであまりデータ量を使うと大変なことになる。

なので俺は異世界なのになぜかあった和室の畳の上で寝転んで、天井のシミの数を数えていた...いつか掃除したほうが良いなこれ。俺鼻炎だし、あまり汚いのはよくない。


そうだ、異世界に着いたら3Dプリンターで作ろうと思っていたものがあるんだった。

ポータブル電源に接続し、3Dプリンターを起動する。ラップトップも起動し、3Dプリンターのドライバーを開く。

ぶち込むデータの名前は『Liberator MK.Ⅱ Type R』。つまり、3Dプリンターで作れる自動小銃だ。

この十年程度で3Dプリンターの性能は一気に向上し、たとえばAK-47でも部品に分ければ後は組み立てるだけで作れる時代になっていた。

まぁ、リベレーター君のほうが性能がいいからそっちを使うんだけどね。ごめんねAK。君には良い思い出がないんだ。


3Dプリンターの動作は...大丈夫そうだ。

だがその後他にやることを見つけることはできず、気づいたら寝てしまっていた。


次の日、ドアをノックする音で目が覚めた。


「お届け物でーす!オモイナコレ...」


「はーい!」


起き上がって、荷物を受け取る。受け取るといっても一旦部屋の中に置いてもらうだけだけど...


受け取った荷物は部品に分けた様々な工業製品の部品と様々な素材だ。正直部品に分けてしまえばそれが何かは少なくとも異世界のザルな税関には分からない...ネットで得た知識だからホントかは知らないけど!


これでやることができた。その日は組み立てと荷物の整理で潰れてしまった。

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