Weldment
初めてぶん殴られたのは確か中学生のころ
殴ったのは舞
よく覚えてないのだけどなんかお互いギクシャクして言い争い、というより舞が一方的責め立てて私がウジウジと話を逸らしてたら堰を切ったように泣き出して飛びかかりながら渾身の右ストレートをお見舞いされたんだっけ
女子の中でも別段運動神経がいいわけでもないはずの彼女の鉄拳は私の左頬を抉るように叩き込まれて3メートルぐらい吹っ飛ばされた
泣きながら走り去る舞の後ろ姿を仰向けになりながら目だけで追うのがやっとの状態だった
あんな見事なパンチの打ち方を教えた奴は誰だと心の中で恨み言を吐いた直後に私だ、と痛む左頬で上手く喋れないながらも呟く
あの後どうやって和解したんだっけ
なんか色々奔走してたような気がするのだがよく覚えてないいない
ただ私にとってそれは決して苦い思い出などではない
というのも実は舞に殴られるのもあの後しばらく彼女に小突かれたり弄られたりされたのだがそれもそんなに嫌ではなく寧ろあの頃私は内心それを嬉しがっていたのだ
舞がことあるごとに私を軽く引っ叩いたり踏んづけたり罵倒したりと結構いじめられたが何故か快楽を感じていた
何より舞が私に構ってくれることが嬉しかったのだろう
そんな歪な関係の最中にあの不良どもだ
あれ以来舞は私への強い当たりは鳴りを潜め、段々と普通の友情関係に戻っていった
あれは不良に襲われて萎縮したのか
それともそんな不良共をねじ伏せた私を怖がったのか
後者だとすればなんだか気を使わせているようで良くない
私は全然怒ってないよなんて言ってもあまり効果はないだろうし、逆に嬉しかったなんて言ったらキモがられて離れられても困る
でもまあ、あれ以来舞との仲はずっと良くなった
本来彼女は優しい子だ
あの時は力を得た子供の如く調子に乗っちゃっただけでそれも私のことが好きだったが故の加虐心が疼いての行為だったとのこと
そして、その事について彼女は度々謝ってくる
その度に私は気にしてないと許してるのだがそれと同時にその頃に私の中にあった彼女へのマゾヒズム的な劣情が恥ずかしく感じてしまう
とにかくそれら一連の出来事が今の舞との関わり方のターニングポイントでもある
私達はどんどん親密になっていきしかしそれは段々と危険な匂いを漂わせていき
そして先月、遂に一線を...
気がついたら足を止めて嫌な汗をかいていた
なんだか暑いし多分私の顔は赤い
どこまで行ったかは覚えていない
嘘だ、はっきりと覚えている
ただ、あまりに強い光が記憶の映像を掻き消している
洞窟は暗く足元もよく見えないなか、私の呼吸だけが薄ら鳴り響く
この変態マゾ野郎
珍しく自分に喝?を入れて光のさす出口へと歩を進める