やっつけslash
ようは目の前の事象をひとつづつ片付けていくだけだ
大体世の中は分からないことだらけで、私はもう高校生だってのにこの世界のことなんかまだ何も知りやしない
だから、分からないことがあったっていちいち立ち止まってあーだこーだ考察することが無駄なのだ
な、そうだろ
今度は随分と青いじゃないか
変なもんでも食ったか?
それに...
洞窟を抜け再び広間にでる
そしてきっといるのだろうと予想したとおり奴が、敵がいた
今度は青い色をした敵が、しかも2体いる
色は個体差なのか、ただの個性か
そういえば顔面の模様も2体とも、そして前回のとも少し違う
それぞれの手には鉈のような刃物がそれぞれ握られている
だが赤い奴よりかは少々小振りか
必要な情報は戦う上で有利に立てるものだけでいい
さっさと始めよう
一香が刀を抜いたその刹那、2体が地面を蹴って左右から飛びかかる
見えた、赤よりもハッキリと初動が見えた
目が慣れたのか、いやもしかすると...
二対の刃が挟み込むように一香の首に迫る
その刃の寸法を一瞬で正確に読み切った彼女は最小限の動きで凶人をかわす
抜群のコンビネーションから放たれた一刀は避けられることを想定していなかったのだろうか、空を切る刃物の遠心力を制御仕切れず2体は空中でバランスを崩す
そんな隙を逃すはずもない
避けた際に引いた右足を強烈なバネで大地に押し付け固定し捻った全身の筋肉を瞬時に解き放って打ち出す渾身の平突き
避けるどころか反応すらできない必殺の一撃は、青の片割れを脳天から尻にかけて見事に串刺しにしてみせた
一瞬慣性が無くなった直後重力が下にかかる前に刀をサッと抜いてやれば、やはり赤い血潮をぶち撒けながら人形のように動きもせずどしゃりと地面に叩きつけられた
並の人間であればあまりの早業かつ恐ろしい出来事の前に、動くことすら叶わないであろう
それ程までに彼女はもう躊躇わなかった
そんな惨状を青の相方は一瞥すらせず一香に刃を向ける
ビュンビュンと鋭い音を鳴らしているがそれはつまり放つ斬撃全てをかわされている証拠である
気を見ていきなりそいつの眼前へ踏み込んでみれば目測が外れた敵はすぐに飛び退いて距離を取る
間もなく拳を打ち込んでみれば先ほどの威勢はすっかり消えて呻くように首を差し出したので大上段からスパッと跳ねてやる
青はそんなに強くはなかったな
連携もろくに揃ってなかったし、赤いやつ一体のほうが多分強いだろう
それにしても自分は随分と達観しているじゃないか
こんな狂気に直面してなお一応の冷静さを保ちながら障害を文字通り切り抜けていってるのだから少しは自分を厨二病チックに評価してもさほど痛がられないだろう
私は惨状を前にしても冷徹に処理することができる暴力的な野郎なのだ
ああでも、喧嘩が強いだなんてあの連中に会うまでは気が付かなかったのは単に私が鈍感系というわけでわない
そんなに時間は経っていないのになんだか懐かしい感じる彼女の学校生活を一香は思い出しながら広間を後にした