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Thought

挿絵(By みてみん)



暗い洞窟をヒタヒタと歩く

全く日の当たらない巣の中のようでとても涼しい

そういえば外は春だったが少し暑かった

ここは気温だけなら居心地が良い

だがそんなことに考えを回すほどの余裕は流石にない

あれは人間じゃない

何か異業の化け物だ、そう決して人間ではないし故に私は何も間違ってはいない

仮にあれが人間であってもあの状況を鑑みれば私に罪はない...

人間だったら...私は...

必死に冷静さを取り繕うとするが動揺はまだ隠すことすらできない

斬った 初めて斬った

人を傷つけて血を見たことは幾度かはあるが、あんなに激しく命を撒き散らす様を目にしたのは初めてだ

ああ、そうだ斬ったんだ

烈火の怒りを刀に込めて恐怖も混乱も共に振り払えば、世界はするりと片付いた

私の世界は置き去りのまま新天地を見回せば、途方もない負の感情が心を襲い世界が砕ける

今は亀裂だらけのガラスに必死になって理屈っぽいテープを貼り付ける

でもそんな禍々しいものにあえて目を向けたいと好奇心がくすぐって来るのは人のサガか

斬った時、少しよろめいたな

怒りに身を任せていたのに、むしろ私の脳は体を完璧にコントロールしていた

にもかかわらずあわや刀を地面に叩きつける既の所まで振り切ってしまった

それは未知の体験故に制御の術を知らなかったから

そして自分の予想が外れたからか

刀は素振りをする時と同じくらいするりと振り切れた

あんな人間サイズの物体を真っ向から打ったにも関わらず

それほどまでに日本刀とは優れた刀剣なのか

なんて感心する程耄碌していない

そんなはずがない、明らかにこの刀がおかしいのだ

確かに質量のあったあの敵を殆ど抵抗もなくするりと綺麗に掻っ捌いてみせた

こんな切れ味はそう安易と出せるものではない

しかも、さっきはかなり力んでしまい正しい刀の振り方ではなかったにもかかわらずだ

余程の名刀なのか、それとも...

腰の刀を一瞥しながら一香はさらに増えた疑問に幾許かのめんどくささを覚えていたが冷静さを取り戻す為にも一旦現状を認識するのに努めた

舞を探していたら訳の分からないこの場所にたどり着いた

広間に刀があったから持って行ったらトンネルが現れたので通るとまた広間にでた

人間の形をした不気味な生物が凶刃片手に殺意を持って襲い掛かってきたので返り討ちにした

またトンネルが現れたので今歩いている

自分で反芻しておいてなんだがやはりイカれてる

だが取り敢えずここでは自分が価値基準とする常識を少し無視するべきなのが最適なのだろうと思った

そうすればこの刀にもあの敵にも、そしてこの場所にも少なくとも違和感を覚える必要がなくなる

それ以上の理解は今はまだ必要ない

気分は晴れないが気持ちに少しケリをつけれたところで眼前にまたも広間が飛び込んできた



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