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6話

 翌朝、


「え!?!?!?」


 目覚めるとマリアがベッドに潜り込んでいたことに気付き、思わず叫んだ。


「おはようございます、エリック様」


 マリアはそれが当然であるかのように平然と挨拶をしてきた。


「なんでここに居るの」


 マリアは来客用の部屋で寝てもらっていた筈なんだけど。


「婚約者ですから。やはり朝は共にしたいじゃないですか」


 まあ別に何も変なことが起きているわけじゃないしいっか……


「朝食はどうするの?あの部屋に届くでしょ」


 貴族は朝食を自室で食べるのでここにマリアのご飯が届くことは無い。


「それに関しては、問題無いですよ。ほら」


「おはようございます、エリック様、マリア様」


 そう言うと師匠が二人分の朝食を持って部屋にやってきた。


「おはよう」


「おはようございます」


 どうやらマリアが事前に師匠に俺の部屋で朝食を食べることを伝えていたらしい。


「本日の朝食です」


 俺達はベッドを出て机に座った後、朝食を置いた。


 それはいつものダイエット食ではなく、一般的な朝食だった。


 少し面食らったが、そりゃそうだ。マリアがこの部屋に居ると分かっていたらあのご飯は出さないよな。


「ありがとう。じゃあ食べようか」


「そうですね」


 まあ一日ぐらい一緒に食べた所で問題はないよね。




「昨日は凄かったですね、エリック様。おはようございます」


 なんて油断していたらマリアは翌日もベッドに潜り込んできた。朝チュンを想起させるセリフ付きで。


 結局俺は二日連続で通常の朝食を食べる羽目になった。




 その日の昼食後、マリアは自分の領地に帰ることになっていたので、家族全員で出迎えていた。


「ありがとうございました。とても楽しかったです」


「それは良かった。また来ると良い」


「はい」


「困った時は私たちを頼っても良いから」


「はい」


「もうこないでいいからね!!!!」


「マヤ、そんな事を言わないの」


「おにいちゃん、でも!!」


「でもじゃありません」


「んーーーー!!!」


「ごめんね、マリア。別に気にしなくて良いからね」


 俺はマヤを宥めながら、マリアに謝った。


「ふふ、気にしていませんよ。マヤさんはエリック様の事が大好きなだけですから」


「マリア様、馬車の準備が出来ました」


「ありがとう。では、失礼します」


 そしてマリアは馬車に乗って帰っていった。




「ねえ、エリックの体は一体どうなっているのかな?」


「分かんない……」


 その日の夜、俺の部屋で師匠と共に頭を抱えていた。


 というのも、頑張って減らしてきた俺の体重が、この3日間で完全に元通りになってしまったのだ。


「多少太るのは覚悟してたけど、流石に二日で全てが覆されるとは思っていなかったよ」


「この体重を理想としてしまう体質なのかな?」


 俺のこの体重より太ることはないけど、痩せたら身の危険を感じて脂肪を全て吸収してしまうみたいな。


 意味不明な話だが、そう考えるほかない。


「かもね。ってことはあの朝食だけじゃ足りないのかもね」


「というと?」


「毎食太りにくい食事にするしかない」


「けどどうやって?」


「私にちょっといい考えがある」



 その翌朝、俺は家の山の頂上付近まで連れてこられた。


「えっと、どういうこと?」


「エリックには、今からここに生息するオオトベンバードを狩ってもらいたいんだ」


「アレのこと?」


 俺は目の前に居たガチョウサイズの鶏を指差した。そもそもオオトベンバードってどんな名前だよ。


「そう、鳥の肉は他の肉と違って太りにくいからね」


 確かに鳥は脂肪が少なくてダイエットや筋トレにいい食材って聞くけども。

「師匠が作るのは朝食だけなんだから買えば良い話じゃないの?」


 別に金に困っている訳ではないし、鳥肉はかなりありふれた食材だから入手困難でもない。


「買った場合はそうなるね。ただ、狩った場合なら自分で得た食材を自分で食べるという口実が出来る」


 なるほど。狩って来たオオトベンバードを料理人に渡せば良いのか。


「流石師匠」


「ただそれだと1日、長くても1週間位しか続かないよね。毎日同じ食材なんだから」


「確かに」


 毎日オオトベンバードを食べる為に狩ってくるのは変だな。


「というわけでエリックには誰でも手軽にオオトベンバードを倒せるような罠や戦術を試行錯誤しつつ狩ってもらいます」


「それなら毎日狩ってきても変じゃないか」


 早く解決策を見つけたいという理由があれば毎日狩ってきて食べるのも自然な流れになる。


「そういうこと。じゃあオオトベンバード、狩ってみようか」


「はい」


「とりあえず今日はオオトベンバードの特徴を調べつつって感じかな。頑張って、エリック」


「分かりました。とりあえず戦ってみましょう」


 オオトベンバードが何かを知るためには戦うことが一番だ。


 俺は早速オオトベンバードの正面に立ち、ファイティングポーズを取る。


 ちなみに師匠は普通の人間なので後ろで見学している。


「ピィーラァァァ!!!!」


 とオオトベンバードは翼を広げて威嚇する。


 それ、ペンギンの鳴き声じゃない?


「じゃあ」


 まずは高速で動いて背後に回り、オオトベンバードの足を取ってジャイアントスイング……


 じゃなかった。オオトベンバードの攻撃を知らないといけないんだよ。


 俺は回転のスピードを徐々に落とし、何事もなかったかのように丁寧に着地させてから5m程距離を取った。


「ガァァァァァ……」


 体を高速で回転させられたせいで若干弱っているが、単に目が回っただけだろうし少し待てば回復すると思う。傷はまだつけてないし。


「よし、かかってこい!」


 これで無事仕切り直しだ。


「ピィー……ラァァァ!!!!!」


 オオトベンバードは羽をバサバサ羽ばたかせながら二本の足で走ってきた。


「あれ?」


 そのまま嘴で俺の体をついばもうとした筈のオオトベンバードは俺の1m程離れた位置を通り過ぎた。


 まだ目が回っているっぽいね。


「こっちだ!」


 このままだと師匠の方へ突っ込みかねないので大きな声を出して挑発する。


「ガァァァァァ!!!!」


 俺に気付いたオオトベンバードは再び走ってきた。


「うーん……」


 しかしオオトベンバードは俺から50㎝程離れた位置を通り抜ける。


 まだ目が回っているのかな。大分回したしね。



「えっと、こっちだよ」


「ピィ、ピィ、ピィ……」


 それから10分程オオトベンバードは俺に向かって何度も走り続けたのだが、その全てが俺から50㎝程離れた位置を通り抜ける結果になった。


「ノーコンすぎない?」


 普通の人間ならともかく俺、超巨体だよ?横幅は君と変わらないよ?


「ピィィィ……」


 野生動物でも全力ダッシュを10分続けたら疲れるようで、オオトベンバードはついに羽を羽ばたかせることを辞めた。別に羽あっても飛べないから意味ないもんな。


 速度も最初の半分だし、流石に当たらないだろうな……


「ガァァァァァ……」


 と思ったら今回はちゃんと俺の正面に突っ込んできた。いくらマシマシの体でもノーガードだと痛いので素手で嘴を掴んで受け止める。


 スピードは落ちていてもダチョウサイズなだけあって結構ずっしりきた。


 これを通常の速度で食らったら皆はひとたまりもないだろうな。絶対に当たらないようにしないと。


「でも何で今回だけ?」


 今まで散々外してきたのに体力が無くなってきてから当たるのはおかしい。


 まあ何十回も攻撃してきているし1度くらい当たってもおかしくはないか。俺はオオトベンバードが走り出した後は一歩も動いていないわけだし。


「とりあえずもう一回見てみよう」


 再度距離をとり、オオトベンバードの攻撃を待つ。


「ピィィィ……」


「おっと」


 流石に外れるだろうと思っていたけど、今回も見事命中した。


 今までの命中率で突然連続ヒットはおかしな話だし、何か理由があるはずだ。


 俺は距離を取り、オオトベンバードの走りに注目する。


 今までと何が違う?


「ピィィィ……」


 オオトベンバードは疲れていて、羽を動かす気力すら残っていない。


 そして速度も減少している。


「もしかして……」


 こいつ、自分が羽ばたかせた羽に振り回されているせいで体がぶれまくっていたんじゃないか?


 あんだけ大きいと空気抵抗も大きいから風にあおられてたってこと?なら相当な馬鹿じゃん。


 空を飛べない癖に羽なんて良いものを身に着けているからそうなるんだよ。もう少し自分の生態と体の大きさを考えようよ……


「とりあえず倒すかな」


 これ以上は疲れすぎていて情報を得ることは無理そうだし、さっさと倒して帰ろう。


 俺は疲れているオオトベンバードの正面に立ち、頭に一発拳を入れて倒した。


「じゃあ帰ろうか、師匠!」


「そうだね」


 俺は師匠に今回の狩りで得た発見を報告し、今後の狩りの方針を話し合いながら家に帰った。


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