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十角獣館の殺意⑴

1 〜プロローグ〜



 この世界の娯楽の一つに、モンスター闘技場がある。

 読んで字の如く、モンスター同士を戦わせる闘技場であり、人々は、特定のモンスターやトレーナーを贔屓して応援したり、どちらのモンスターが勝利するかを予想してお金を賭けたりして楽しんでいた。

 


 生前のグリーンウッド氏も、モンスター闘技場の虜だった。

 彼は闘技場に足繁く通い、その度に大金を落としていた。また、彼は贔屓のトレーナー(モンスターを育成し、バトル中にモンスターに指示を出す者)に対し、高級レストランでのディナーを振る舞うようなことをしていた。



 グリーンウッド氏が90歳でこの世を去ったとき、彼の遺産の中に、奇妙な不動産が混ざっていた。


 それは、小さな無人島にポツンと一棟だけ建つ館であった。


 おそらく生前のグリーンウッド氏が別荘として使っていたものなのだが、そのような使い勝手の悪い不動産を、彼の親族は誰も欲しがらないであろうことを、彼は正しく見抜いていた。



 グリーンウッド氏は、死の間際に残した遺言で、その館は「引退後のトレーナーのうち、希望する者に相続する」としたのである。

 モンスター闘技場の引退後に上手くセカンドキャリアを歩むことができず、生活苦に陥るトレーナーが多いことは周知の事実だった。そのことにはグリーンウッド氏もひどく心を痛めており、自分の館が、苦しむ元トレーナーの糧になればと考えたのである。



 グリーンウッド氏の遺言の中身が公開されると、4人の元トレーナーが、館の相続を希望した。


 遺言には、複数人の元トレーナーが相続を希望した場合の処理について書かれていなかったため、遺言執行者に指定されていた弁護士は頭を悩ませた。

 ところが、4人それぞれに話を聞いたところ、いずれも館に居住することを希望し、かつ、「他の元トレーナーとの共同生活でも構わない」とのことだったため、問題はあっさり解決した。



 こうして、元トレーナー4人は、無人島へと渡り、グリーンウッド氏の館での共同生活を開始した。



 5人による相続後、グリーンウッド氏が生前好きだった、頭にツノが10本生えたウサギのようなモンスターから名を取って、その館は「十角獣館(じゅっかくじゅうかん)」と名付けられた。



 そして、元トレーナーのうち1人の提案で、共同生活中、4人はそれぞれ本名ではなく、あだ名で呼び合うことにした。


 4人のあだ名は、それぞれ、トレーナー時代に主に扱っていたモンスターの名前から、「ドラゴン」「ピクシー」「オーク」「ゴーレム」と決まった。



 十角獣館において、あまりにもおぞましい連続殺人事件(いわゆる「十角獣館の殺人」)が起きたのは、共同生活開始後、ちょうど2年が経った頃だった。


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