【2-4】ヘルガってば、優しいんだから!(2)
「あ、そうだ! 私、クッキーを作ってきたの!」
「クッキー? 俺にか?」
「当然よ! ほら!」
バスケットにたっぷり入った、私お手製のクッキー! 一つひとつ丁寧に、ハートの型を取ったのよ!
「……気持ちは嬉しいけどよ。この量、さすがに多すぎないか?」
「そんなことないわ! ヘルガなら、絶対に食べ切れるから!」
……本当は、ヘルガのことを思いながら作ってたから、ちょーっと量が多くなっちゃったんだけどね。でもこの程度、誤差の範囲内よ!
「さぁ、食べて! 今すぐに! ほらほらほらほら!」
「ま、待て! 押しつけてくんな!」
大通りを行き交う人々が、愛し合う私たちのことを見てくる。もっと見て!! 私の彼、本当にかっこいいでしょ!?
「ねぇねぇ、早く食べてよ! プレーンの他に、ココアもストロベリーもあるんだから! 早く食べて早くはやくはやく――」
「だーーっ!! 分かったから止めろって!! 自分で食うから!!」
ヘルガったら、いっつも照れちゃうんだから。私は「あーん」する気満々なのに。
「……うん。味は美味いな」
「でしょ? そしたら、この先の公園でゆっくり食べない?」
「……おまえ、今日の目的忘れてないか?」
ああ。そう言えば、孤児院デートだったわね。危うく、公園デートになるところだったわ。
「じゃあ、孤児院の庭先で食べましょ」
「そうだな。そうすれば、子どもたちにもあげられるし」
……ヘルガ、そんなこと言わないでよ。これ、全部ヘルガのために作ってきたんだから。
「……ヘルガは優しすぎるわ」
「ん? なんか言ったか?」
「ううん、なんでもない」
でも、いいわ。優しい性格が、ヘルガそのものなんだから。