【2-1】私はっ、デートに行きたいのっ!(1)
ついに、ついに! ヘルガと孤児院デートの日になったわ! この数日間、仕事をサボって準備して良かったわ! 本当に、夜しか眠れなかったんだから!
とっても楽しみで、今日も朝早くに飛び起きちゃった。いつもより念入りにヘアメイクをして、新しい空色のワンピースに腕を通す。時間もあったから、ハート型のクッキーまで焼いちゃったわ。定番のプレーンにココア、それにストロベリー! ヘルガ、きっと喜んでくれるわ!
「だ、団長ー! いい加減、仕事してくださいよー!」
私の部屋の前で騒いでるのは、第五騎士団の副団長・ハル。私の右腕みたいなやつで、サボってる間は仕事を全部任せてるの。女みたいな水色のボブヘアで、見た目も結構可愛らしいんだけど、私はかっこいい方が好きよ。……当然、ヘルガみたいな、ね!
「ハル。私は今日、ヘルガとデートに行くから」
「で、デート!? な、何言ってるんですか!!」
ドア越しでも分かる。あいつ、相当焦ってるわ。
「今日から辺境のモンスター退治に行く予定じゃないですか!! ずっと前から決まっているのに、デートなんか行っちゃダメです!!」
……ガシャガシャと、鎧の擦れる音がする。ハル一人じゃない。これは、何人かいるわね。
「アルタ団長! 今日という今日は逃がしませんからね!」
元気な声を出してるのは、ツンツン頭のロシュ。ハルが連れて来たのね、面倒だわ……。
「ロシュ。私の部屋まで来て、一体どういうつもりなのかしら?」
「団長こそ、仕事しないなんて職務怠慢ですよ! 今日のモンスターは強敵なんですから、団長には動いてもらわなくちゃいけないんです!」
大きな窓から外を見遣ると、下にも第五騎士団の騎士たちがいる。何が何でも連行させるつもりね。