【1-4】あいつ、また仕事をサボるのか?
「……ったく、あいつ。また仕事サボるんじゃないか?」
俺は飛び去るアルタの背中を見て、思わずため息をついた。あいつのサボり癖は、一般兵の間でも噂になってるぐらいだから、相当サボってるんだろう。
「アルタさん、すごい人でしたねー!」
リコは嬉しそうに髪をぴょこぴょこさせているが、こいつ、アルタのファンだったのか。全然知らなかった。
「リコ、おまえ、アルタに憧れてたのか」
「はい! 孤児院から騎士団長なんて、女の子ならみんな憧れちゃいますよ!」
「そうか、そうだよな」
リコの言う通り、やっぱりあいつはすげぇやつだ。毎朝突撃してくるから、すげぇっていう意識が薄れてたが、改めて考えるとやっぱすげぇな。
「……あっ! しまった! サイン、貰い忘れてました!」
ハッと思い出したように、慌て始めるリコ。紙袋の中の野菜が、転がり落ちそうになっている。
「なぁに、またすぐ会えるさ。何なら今度、一緒にお茶しに行かねぇか? サインはそのときに貰ったらどうだ?」
「ほ、本当ですか!?」
「ああ。俺が奢ってやる」
さてと。今日もこれから見回り警備の仕事だ。早く立派な騎士になれるように、しっかり仕事はこなさないとな!