【1-2】誰? その女……。
「ヘールガー!!」
オルテンシア王国の、一般兵専用の寮。騎士になったら、もっと広いところに住めるんだけど、一般兵の扱いは結構ずさんなのよねぇ……。まぁ、別にいいわ! だって、私がヘルガと結婚すればいいだけの話なんだから!
「ヘルガー! どこにいるのー?」
……あれ、おかしいなぁ。いつもは寮の外にいるはずなんだけど、今日はどこにいるんだろ?
「――ヘルガさん、わざわざ買い出しに付き合ってくれて、本当にありがとうございます」
「いいや、気にすんな。そんな重い荷物、あんた一人に持たせるわけにはいかねぇよ」
――後ろから、ヘルガと女の声がする。私以外の、女の声がっ……!
「……おはよう、ヘルガ」
「げっ、アルタ!? な、なんか今日は、いつもより早くねぇか……?」
当然よ。準備の時間を短くすれば、あなたと長く一緒にいられるんだから……。
彼は私と同じ色の髪を揺らしながら、赤い目を見開いて驚いてる。その顔も、とってもかっこいいんだけど……、そんなこと言ってられないわ。緊急事態よ、これは。
「えっ!? だ、第五騎士団の、アルタ騎士団長!? ヘルガさん、知り合いなんですか……!?」
茶色のミディアムヘアに、黒い瞳。可愛いピンクのエプロンまで身につけちゃって、なんなのよ、こいつ……!! 私のヘルガにくっついてんじゃねぇよ!!
「……ねぇ、ヘルガ。その女、一体誰?」
「こいつは、炊事係のリコだ。寮の料理担当で、今日も買い出しに行ってくれてたんだよ」
「……買い出し? なら、一人で行けばいいでしょ? 何でヘルガが手伝ってるのよ」
「おいおい、アルタ。ちょっと落ち着けよ。こんなに重い荷物、リコ一人に運ばせるわけにはいかねぇだろうが」
……ああ、ヘルガは本当に優しいわ。この女のことを気遣って、わざわざ一緒に街まで行ったのね。でも、だからこそ、悪い女が寄ってくるんじゃないかって、いっつも心配なんだから!! この女だって、ヘルガのことを狙ってるんじゃないの!?
「あ、あのっ! アルタさん!」
「……何よ」
私の敵意をよそに、この女はキラキラした目で私のことを見てくる。……こういうタイプが、一番面倒くさい。怒りも怖がりもしないやつ。
「私もアルタさんと同じで、孤児院の出身なんです! だから、アルタさんにはすっごく憧れていて……。これからも、お仕事頑張ってください!」
……ああ、もう。調子狂うわ、全く。
「ちっ……」
思わず舌打ちしちゃったけど、ヘルガたちには聞こえてなかったみたい。危ない危ない、乙女像が崩れるところだったわ。この女のせいで。