K-3『お屋敷のイメージは例の借金執事がいる豪邸』
「光の向こうはハ〇テの世界だっt「何訳わからないこと言ってるのよ!早くどきなさい!」
少年と天使は光の球の向こう側、先程光の中に見えた豪邸の前に着いた。
ここはその庭で、連れて来た兵士達が燕尾服を着た男達、つまり執事達によって一カ所に集められていた。
「じゃあ私は帰るわ。……また近いうちに喚びなさいよ!わかったわね!!」
少年が答える間もなく、アカリは顔を真っ赤にして消えていった。
「さてと…」
少年は兵士達の方を向き、持っているメモを見ながら話し始める。
「えー、ここはクロスフロント五貴族のひとつ『オルネイズ』の屋敷です」
ざわめきだす兵士達。
それもそのはず、『オルネイズ』と言えば五貴族の中で唯一、頭首の顔も家の場所も限られた人間しか知らない。言わば、謎の一族なのである。
「あなた達の選べる道は二つに一つです」
一つ目はこの家の専属兵として働くこと。
ただしかなり過酷である。
二つ目はこの家のお手伝いとして働くこと。
掃除、洗濯、炊事、などなど。簡単に言うと雑用である。
ちなみにどちらも賃金は少ないものの住む場所と一日三食付いてくる。
「どちらを選ぶかは自由です。では後はこちらの執事に従って下さい」
少年は屋敷に入っていった。
屋敷に入ってまず受けたのは妹のジャンピングタックルだった
「お兄ちゃんお帰り〜!!」
「ごふぁ!!」
妹の体重を40、速度を30とする、これをニュートン力学で表すと運動エネルギーは18000、これは7.62mmNATO弾6発分に相当する。つまり何が言いたいかというと、尖ったもの持って抱き着くのはやめましょうという事だ
「た…ただいまレミア」
しかし少年は踏み止まった、何の事はない、TNT火薬18グラムが爆発した程度である
「ぷげらー!!」
「う…うん…?」
「ふぉぬかぽー!!」
「ちょっとこの子に2ちゃん用語教えたの誰ですかー!?」
とにかく抱き着いてきたレミアを降ろし、ちらりと後方を確認、仕分けが始まっていた
「レミア、お兄ちゃん行かないといけないんだ」
少年がそう言うとレミアは一瞬悲しげな顔を見せたが、すぐに笑顔になり少年から離れた。
「わかったの。また後でねお兄ちゃん」
少年が数分歩き続けると一際大きな扉の前に着いた。
少年は深呼吸するとその扉を叩いた。
「誰だ?」
扉の向こうから渋く、低い声で尋ねられた。
「僕です」
「うむ、入れ」
「失礼します」
少年はゆっくり扉の中へ。
扉の向こうは無駄に広い部屋。壁一面に本棚が並び、1番奥の真ん中に大きな机と椅子。そしてさらにその奥には一人の男が窓から外を見るように立っていた。
2mはある身長に服の上からでもわかる分厚い筋肉。髪の毛は無い、というかスキンヘッドだが頭には大きな傷痕。
見た目はヤクザだ。
「ただいま、父さん」
少年は広い廊下を進んで行った。
少年はその男を父と呼んだ。しかし…
「わしはお前の『父さん』ではない!」
男は外を見たまま、つまり少年に背を向けたまま答えた。
そして振り向きながらこう言った…
「わしはお前の『パパ』だ!!」
「……ハァ…」
振り向いた『パパ』は満面の笑みで少年に抱き着く。
この間わずか3秒。
「無事でよかったぞぉ!パパはもう心配で心配でs「行ったのは戦場跡なんだから…」
さらにほお擦りするパパ。
少年は再びため息をついた。
暫くすると扉を叩く音がした。
その瞬間パパは物凄い速さで少年から離れ、椅子に腰掛けた。
「入れ」
いつの間にか笑顔も消えていた。
「……お父様…兄様…」
入って来たのはレミアだ。
しかし、先程とは雰囲気が違う。少年の呼び方も『お兄ちゃん』から『兄様』になっているし、表情もどこか固く、無表情だ。
そして何より瞳の色が違った。
青かった瞳が今は黒い。
「おお、"レミナ"か。どうした?」
パパは再び笑顔になり、レミナに抱き着いた。
この間、やはり3秒。
レミアは二重人格だ。
「ご飯…」
「おお、もうそんな時間か。…では行こうか」
パパは机の上の書類を片付け、部屋を出る。
少年も後に続こうとすると服が引っ張られた。振り向くとレミナが服の裾を摘んで俯いている。
「……兄様…手…」
手を差し出すレミナ。どことなく顔が赤い。
「はい」
それを見た少年はレミナの小さな手を優しく握った。
「……ありがと…」
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少年とレミナが食堂に入るとそこには先程兵士達に説明をしていた執事が、先に来ていたパパと話していた。
「……わかった。後は任せたイテ!」
キッチンから出てきた女の人がパパの頭を叩いた。
「食堂で仕事の話は無しって言ってるでしょ!!」
「ご、ゴメンよママ」
この人が少年達の『ママ』である。
「ほらあなた達、早く座りなさい」
「「「はーい」」」
それにしても今のパパは部屋で覇気を放っていた漢には見えない…
「おお!今日もママの料理は美味い!!!」
「はい、美味しいです」
「……おいし…」
「フフフ。ありがとう」
一家団欒の和やかな空気で食事は進む。
料理は全てママの特製だ。屋敷の中には沢山の料理人がいるが、ママはそのトップ。いわゆる料理長である。
「そうだ、後で…事務所…に来なさい。…次の…仕事の…事で話が…ある」
パパは少年に向かって言った。言葉がとぎれとぎれなのは食べながら話しているからだ。
「わかりました。それより…
早く謝った方がいいですよ」
少年とレミナは部屋の隅に避難する。
「へ?あ…」
パパは後から凄まじい覇気を感じて後を向いた。
そこにはメリケンサックを付け、口元をピクピクさせて黒い笑みを浮かべているママがいた。
ちなみにこのメリケンはママが現役だった時の物だ。確か、背中に『惡』の人と同僚だったはずである。
「だぁかぁらぁ…食堂で仕事の話をするなって何度も言わせるんじゃねぇぇぇ!!!!」
食事の後、ボロボロの何が食堂の外に落ちていたのは気のせいにしておこう…。