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morning moon/evening sun  作者: 希望の魚雷
33/35

K-12-1『百戦百勝は善の善なる者にあらず』

「で、編成間もない我らが04小隊が指揮取ることになった、と」



まず副官は速攻で辞退した、逆転の見込みが立たなかったらしい


続く隊長格も軒並み全滅、数人はサポート役を申し出てくれたが、トップに座りたいかといったらそうでもなく


「はっ倒す前にもう少し考えなさいよ、どんだけアホだろうとマトモな講師にマトモな兵法教わってんだから、要は前頭葉よ前頭葉」


「はい…」


「小学生じゃないんだからその短絡思考どうにかなんない訳?何、投げ飛ばしたて、柔道家?」


「はい……」


「つーか今回の私の扱い何?慌てふためいてる司令部まで呼び出されて『アカリ!もう君しかいないんだ!』とか言われてちょ何いきなりそんなこと言われても困っちゃうー!からのこの展開は何なの?バカなの?」


「はい………」


「そして私が呼び出される=切羽詰まった状況ってのは偶然?偶然じゃないよね?便利屋だよね、ヒモだよね」


「はい…………」


「飲み物」


「はい…!」





ゼオンが走っていく





「味方3400に対し敵8800、こんな戦力で攻め込んで包囲殲滅喰らってない点に関しては褒めてあげようかしら」


「それが、展開時は12000いたらしいんだ」


「……前言撤回」


ばさっと部隊表を放り捨てる。構成は問題ではない、今重要なのは配置だ。再編成につぐ再編成を行ってなんとか軍としての機能を保っている1個連隊、このまま戦ったとしたら、耐えられたとしてもあと1回


「やっぱり撤退した方がいいんじゃないかな、これ以上の損害は無駄だと思うんだけど」


「戦術的勝利に必要なのは優れた判断力とひとつの高練度部隊よ、その他の有象無象は忘れなさい」


言いながら、アカリが地図上に駒を置いていく。現在、正面から睨み合っている、それ以上でも以下でもない


「じゃあ質問です。敵軍を倒すためには何をどうするのが一番手っ取り早いでしょうか」


「えっ…えーと……」


「敵の士気を折る」


言い淀んだルカの代わりに美空が答える、諸々の問題もあってムッとしたアカリだったが、気を取り直して話を続行。その間にゼオンが青汁を持ってきたためひっぱたいて再度取りに行かせる


「士気を折ったらどうなる?」


「撤退する」


「正解」


味方を表す青色の駒をひとつ取り、赤の群体より後方に置いた


「まず敵の補給線をぶった切る、これで半分は持ってけるでしょ。ほんとならそのまま挟撃したいけど、この戦力差じゃ無理ね。そもそも後ろ取ったら撤退できないし……まぁいいわ、そこのイケメン、精鋭オンリーで中隊編成」


「はっ!」


なぜかアカリに敬礼して走っていくダン。別に主従関係でも何でもないが、久しぶりのマトモな命令だったんだろう、きっと


「後は横から奇襲して稼ぐ」


突っ込ませた部隊を敵側面まで移動させ、本隊と同時に攻撃させる。本当にひとつの部隊ですべてを賄うようだ、確かにこれなら頑張る量は少ない、あくまで全体としてだが


「それにあたって必要なのは全行動が終了するまでの耐久力だから…そこのジェントル、機関銃と迫撃砲と対人地雷を大至急」


「かしこまりました」


ダンに続いてクロノスも出ていく。あれは素だ、さすが執事






「さて……」


季節外れのトロピカルジュースをじうじう吸いながら椅子をぎっこぎっこしている。何か悩んでいる様子だ、地図上の駒を弄んでいるあたり、戦力不足か


「最後のトドメが足りないな」


「よ、よくわからないけどそうなの?」


「精鋭部隊の方は私達がいれば何の問題もないだろう、まずいのは本隊だ、何せもとから士気が低い」


「そこなのよね。ダメ貴族が何したか知らないけど、何この20−0くらいで圧倒されてる中学野球部みたいなの」


要点だけまとめると、敵が撤退を決断する前に壊滅の浮き目を見てしまうのではないかという事


「ええと…士気を上げるにはどうすれば……」


「すべてを超越する絶対的な存在、つまり『英雄』ね。そして英雄になりえる人間は敵の反対側で輸送路破壊中、さあどうしましょう」


つまり、人材不足なのだ


「ここまでボロ負けしてるんじゃ増援なんて認められないだろうし、可能性があるならはした金で働いてくれる一騎当千レベルの魔術師」


「聖人君子か、そんな奴いないだろ」


「聖人君子っていうか悪魔的なのがいるにはいるけど……できれば頼りたくないというか……はぁ…」



溜息ひとつ、仕方ないと立ち上がって、拾い上げたのは無線機




「あいつを使うか」


















----------

-------

----














「とかいってもうほんと、便利な女よね……」


光球からぞろぞろ出てくる精鋭100人を見ながらアカリが呟く。僅か2秒で敵の後ろを取ったのだ、楽だが、ある意味では悲しいらしい、岩に座って考える人


「あーなんかもう他の物体に寄生してこっちに永住しようかしら。しゃべる刀しゃべるライフルときたら、しゃべるバイオリン?」


「アカリはそのままでいいよ!僕の大切な契約者だ!」


「ルカ…ルカぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」




抱き着いた




「少しでもKのノリを維持しようとしてる訳だが、無理だなこりゃ」


輸送路上にバズーカ装備の1個小隊を向かわせ04小隊を含む80人は敵側面に位置する高台へ。既に戦闘は始まっていた、耐えてくれればいいが


「この戦力差、厳しいよなぁ」


「く…駄目だ…耐えられん……」


「ん?」


「貴様だけいい思いはさせん!!私も混ぜろ!!」




美空がルカに飛びついていく




「……どう思う?」


「アカリさんの増援とやらを信じましょう」



数分で陣形整理終了、絶賛ハーレム中の隊長を救出し、まずテラムが高倍率スコープで偵察する


「といってもそこらじゅう敵だらけなんですがね。縦に連なって一点突破体勢ってとこでしょうか、中央に軽戦車8両、目下前進中です、行き先は……」


「負ける前に始めましょう、皆さん準備はいいですか?」


「あ、いや待ってください、前線がおかしい」


先陣切ってクロスフロント軍に攻勢をかけている部隊へスコープを向け数秒、さらに倍率の出る双眼鏡に切り換えてさらに数秒


「ゼオンさん、どう思います?」


「む…」


双眼鏡を渡す


「……壊走を始めてやがる」


ひとしきり見終わった後、双眼鏡を返して斧を構え、高台から降りていく。担当の配置に向かったらしい


「よくわかりませんが…味方が勝ってるって事ですか?」


「ええ、それも圧倒的に」


壊走というものは、陣形が崩壊した状態で逃げ出しているという事だ。攻勢をことごとく跳ね返され、脆くなった所を突かれたという所だろうが、味方の戦力ではどう考えても不可能である


「防御だけっていう約束だったんだけどなぁー…」


アカリが呟いた


「え?」


「いやなんでも。とにかくトドメ刺しちゃいましょうよ、あっちも始まってるし」


銃弾以上大砲未満の爆発音が僅かに響く。敵の後続部隊が通り掛かって、撃破するべくバズーカを使ったんだろう


補給も潰し、前線も崩壊中、そろそろ撤退が選択肢にちらついているはずだ


もう一押し


「じゃあ、やるよ?」


「どうぞ」


岩にアカリが座り直した、自ら戦う気は無いらしい。それはルカも戦わないという事を意味しているのだが


とにかく部隊に指示を出さなくてはならない、さっき練習した通りに右手を軽く上げ


「セット」



ガチャリと


スナイパーライフル50丁が敵陣を睨み付けた



「第一目標、敵側面部隊、第二目標、敵火力支援部隊、全目標との交戦をきょきゃっ…許可」


背後で「あっちゃー…」という声


「ふぁ…ファイア!!」


50発の弾丸が一斉に撃ち出され、相乗効果で大砲顔負けの轟音が響く。一瞬で敵軍側面まで到達した鉛弾は前線へ向かおうとしていた予備部隊を薙ぎ倒し、その後は各員思い思いに射撃を始め、火砲部隊やら機関銃射手やらを1人ずつ撃ち抜いていく。それを確認するなり混乱に陥った敵軍は崩れかけの陣形をさらに崩し、たった100人とは考えもしなかったんだろう、前線に続いて右側面も壊走を始めた


「やった!これなら勝てる!」


「だが間もなくこっちにも敵が来るぞ、撤退し切るまで踏ん張らないと」


美空が太刀を抜き、狙撃部隊の前面へ。下手に退くべきではないし、追撃されても面倒だ


よって、ここは迎撃。やがて敵の一部がこちらへ方向転換し、殿として攻撃を始めた。約100人、勝てないはずはない


考えている間に、ゼオンを含む味方が突撃を開始


どうせここまで来たのだ、完勝を狙うのも悪くない



「正念場だ!!全力で行くぞ!!」

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