K-10『くそったれ貴族』
【北エリア第2防衛ライン突破されました!第3防衛ラインまで後退します】
【防空部隊、戦況劣性。増援を】
【東エリア最終防衛ラインを敵兵一人が突破しました。本部で迎撃を】
「どどどどどうなってるんだ!?何故僕の思った通りにいかないんだ??」
「……まだ分からないのか?戦争ってのはなぁ……」
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「う……んん~」
朝
キングサイズのベッドで寝ていた少年 ルカは、ゆっくりと目を覚ました。
しかし、目を開けたにも関わらず、ルカの視界は真っ暗だった。
顔面には柔らかい何かが押しつけられており、かなり息苦しい。
さらには、体全体に圧迫感があり、首から下は動かす事ができなかった。
「んん……ぷはぁっ……」
ルカは顔を横に向けて息苦しさから逃れた。
「はぁ…またか……」
ルカの体の上には下着姿(胸は白い布の晒し)の美女が静かに寝息をたてていた。
ルカはその姿を見て笑顔で彼女の頭を撫でる。
すると彼女はその凛々しい顔を弛ませた。
普段の彼女からはなかなか見られない表情に、ルカはクスクスと笑い、彼女に向かって話しかける。
「そろそろ起きてよ…美空」
「うぅ~…ん!…おはようルカ」
ルカの呼びかけにパッチリと目を覚ます美女 美空。
その表情は寝起きとは思えないくらい明るい笑顔だった。
「うん、おはよう……で……美空、1ついいかな?」
「なんだ?私のスリーサイズか?悪いがまだ成長途中でな。ルカが測ってく「ちがうって!…どうしてここで寝ているの?部屋には鍵かけといたはずだけど……」
ルカは寝間着を脱ごうとする美空を止めて言った。
美空はしぶしぶ寝間着を直すと、扉の方を指差す
が、そこに扉は無く、廊下に飾られた絵画が丸見えになっていた。
そして床には切断された綺麗な木片が散らばっている。
「…美空……」
「鍵を閉めるルカが悪い!」
ルカはため息をつくしかなかった。
二人がそんなやり取りをしていると、ドアのあった方から声がした。
「……ドアが無い……あ、お兄様朝で…す……」
ルカを起こしにきたレミナはルカと美空を見て固まった。
そして、数秒の沈黙のあと、顔を赤く染めながらゆっくり口を開いた。
「え……えっちぃのはいけないと思いますっ!!」
数分後、真っ赤になって暴走していたレミナをなだめ、3人で食堂へと向かった。
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「おはようございます。父さん」
「おはようございます。お父様」
「おはようございます。お義父様」
「ん、おはよう」
朝の食堂には既に朝食が並び始めていた。
パパさんは既に着席済み。ママさんは厨房にいる。
そしてルカは、今の挨拶のおかしな点に気付いた。
「……ねぇ美空…」
「ん?何だ?ルカ……ま、まさか朝食を食べる前に…わ、私を食べるのか?(性的な意味で)」
「??…僕の好物に人肉は無いよ(そのままの意味で)」
ブッ飛んだ美空のボケにズレているルカのツッコミ。
放っておいたらカオス化しそうだ。
「さっき『お義父様』って……」
「そのままの意味だが……何か変か?」
「変か…って、そりゃぁ……」
言葉を渋るルカ。そんかルカに美空はジリジリと近付いていく。
「ルカは……私を『家族だ』と言ってくれたじゃないか!!(夫婦という意味で)」
顔を赤くする美空。
「あ、うん……もちろんだよ(同じ家に住むという意味で)」
はっとした後、笑顔になるルカ。
「だったらパパさんは私の『お義父様』だろう?(夫婦とry)」
「そうだよね。変なこと聞いてごめんね(同じ家にry)」
ズレ気味な会話はさらに続く。
「…で、ではルカ……式はいつがいいと思う?」
「え?なんでいきなり四季の話??」
「なんでって…早めに聞いておこうかと……」
「う~ん……秋か冬かなぁ」
「そうか……私はすぐにでもと思ったのだが……やはりお互いの事をもっと知る時間が必要というわけだな」
「???まぁ、まだ知り合ったばっかりだから美空の事はもっと知りたいけど……(同じry)」
「うむ、では冬にしよう!!」
「…………はぁ」
食い違いが大きくなり、美空はとんでもない方向に話を持っていく。
「ふふふ…面白いわねあなた」
「ああ、ルカも我が息子ながら鈍感だな」
そんな二人をオルネイズ夫妻は笑顔で見守るのだった。
「さて……作戦を説明しようか」
「パパさん、血が止まってないようだが……刺しますか?」
「気にしなくていいよ美空……」
懐から治療用の針を取り出す美空を、ルカは溜め息混じりに止めた。
ルカの後には大笑いするゼオンとリッヅ。慌てて二人を止めようとするテラムに黙って立っているマークが居る。
朝食中、パパに
「後で書斎に来なさい……あ…ママ、その熱々のフライパンをどうする気だい?…って、うわっ!止めっ!ゴデュファッ!!」
と、呼び出されたルカは、パパが意識を取り戻したのを聞き、仲間を連れて書斎に来ていた。
現在、午前10時
「軍本部から依頼が来た。これを見てくれ」
ルカは渡された資料に目を通した。
『戦術作戦依頼書』
差出、クロスフロント軍部
宛先、SG第04私兵小隊
本文
作戦行動中のクロスフロント軍特別私兵隊の隊長の護衛、及び援軍
「隊長の護衛……ですか?」
「ああ、それがな……」
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―――
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戦場は大陸の南、ヴァラキア軍の駐屯基地。
ルカ達がここに着いたのは、作戦を聞いた2日後。
攻撃開始の半日前だった。
そして、"仮設拠点"に着いたルカ達は目を丸くした。
そこには
「こ…これは……」
「なんと……」
目の前に現れたのは、仮設とは思えない、まるで屋敷のような建造物だった。
「ガハハハハハ!!見事だな」
「これが……」
「ええ、『グランリエ家』の力ですね」
「ようこそいらっしゃいました」
仮設拠点改め屋敷を見ていると、不意に後から話しかけられた。
ルカ達が振り向くとそこには、燕尾服を着た初老の男性が立っていた。
つまり執事だ。
「オルネイズ家の皆様ですね。どうぞ中へ」
「あ、これはどうもご丁寧に」
ルカは一礼し、執事の後に着いていく。そして屋敷の中へ。
仲間達もそれに続く。
屋敷の中は一応拠点らしく、広い敷地のなかで兵士達がうろついていた。
ただ、どう見ても数が少なく、怪我人も多くいた。
「……えっと…」
ルカは執事に話しかけようとした。
「申し遅れました。私、グランリエ家に使えております、クロノス と申します」
「あ、ルカです。で、クロノスさん。随分と人が少ない様ですが……」
「はい…それに関しては主に直接お聞きください。私は戦いに関しては関わっておりませんので……」
申し訳なさそうに話すクロノスに、それ以上追及はしなかった。
屋敷の中をを進むルカ達は 、大きな扉の前にたどり着いた。
「失礼いたします」
クロノスが扉をノックすると向こう側から声がした。
『クロノスか…なんだ!?』
「SG第04私兵隊の方々がお見えです」
「うむ……入れ」
扉はゆっくりと開き始めた。
部屋の中では数名のメイドと兵士、そして
「よく来たな。歓迎しよう」
小太りの青年が並ぶパソコンの前に座っていた。今は画面に背を向け、ルカ達の方を向いている。
「まぁ、とりあえず座るがいい」
メイド達によって素早く椅子と机が用意された。机の上にはこの辺りの地図が用意されている。
「作戦を説明しよう」
青年はルカ達と向かい合うように席についた。
「まずは自己紹介しておこう。僕の名はシルヴァ・H・グランリエ。クロスフロント五貴族の一つ、グランリエ家当主の息子だ」
青年ことシルヴァはそう胸を張る。
「SG第04私兵隊隊長のルカ・オルネイズです。隊員共々よろしくお願いします」
ルカ達はシルヴァと握手を交わした。ただ、美空との握手の時間が長いのは男の性(さが)ってやつだ。
「ふむ、中々の美人ではないか……よし、僕の第3婦人として迎えようじゃないか」
そう言ってシルヴァは美空にキスをした……
かに見えたが、美空は後に一歩下がり、手は腰の刀にあった。
「グランリエ殿。悪いが私には心に決めた男が居るのでその話は断らせてもらおう」
美空の言葉に表情を曇らせるシルヴァ。
「それに、有無も言わせず女の唇を奪おうとするような男は好かぬ」
シルヴァの目付きが鋭くなる。美空も刀を持った手に力が入る。
「グランリエの名が……地位も金も名誉も手に入るんだぞ?「そんなものに興味は無い!」
「僕のそばに居るだけで、毎日好きな事をして好きなものを食べられるん「私は好きに生きている」
「僕の「しつこい男はさらに嫌いだ」
「クッ……うるさい!僕が欲しいと言ったんだ!僕の物になれぇぇ!!」
美空を掴みかかるシルヴァ。美空は仕方なく刀を抜き、シルヴァの首筋に突きつける。
向けられた2つの刃に、シルヴァは動きを止めた。
「うちの隊員に手を出さないでもらえますか?」
今まで黙っていたルカが、刃と化した指揮棒をシルヴァに向けていた。
「そちらも主に刀を向けるのは止めていただこうか」
いつの間にか、美空とルカの後に両手に拳銃を持った男が立っていた。
銃口は二人の背中に向いている。
「なっ、いつの間に!?」
「速い」
「そちらに切る意思がないように、こちらも射つつもりはありません……下ろしてもらえますよね?」
「それは三枚卸しに……いや、冗談だ。すまない」
二人はシルヴァに向けていた刃を下ろす。
男も銃を下ろし、シルヴァの下へ。
「シルヴァ様もここ(戦場)でまで女性に手を出すのは止めてください」
「……チッ」
シルヴァは不機嫌に椅子に腰かけた。
一人の男の登場で、場はなんとか鎮まったのだった。
「申し遅れました。自分はダン・スレイク。この度、シルヴァ様の助手兼SPに選ばれました。お見知り置きを」
「あ、はい。よろ「ダン!さっさと報告」
挨拶な途中だが、シルヴァに呼ばれてすぐに主のもとに向かう。
ダンがシルヴァになにかを伝える。すると、シルヴァは苦虫を噛み潰したような表情をした。
ダンが再びルカ達に駆け寄ってくる。
「すみません。シルヴァ様が打ち合わせはまた後で…との事です。一旦控え室に案内するので、そちらで少しお休みください」
そのまま有無も言わせてもらえずに部屋を後にすることになった。
無言のまま少し歩くと、ダンが話始めた。
「今回の事は本当に申し訳ないと思ってます」
「……いえ、気にしないでくださ「あのクソガキ頭に乗ってるんですよ」
「……はい?」
忠実なダンのイメージが崩れ去った。
「ったく、あのクソガキ見境なく盛るんですよ。この前なんか作戦中だってのに 外交パーティーなんかに参加するなんて言いやがりましてねぇ。結局親に頼んで 隊長代理まで立てて参加しやがりました。私も護衛として付き合わされましたよ 。そしてナンパですよ。そんで金にものを言わせてあのガキぃ…「あの……大丈 夫なんですか?そんなに陰口して……」
「聴かれたら不味いんじゃないのか?」
部屋に案内され、ダイがお茶を入れると言ってから愚痴をこぼし始めて15分が経った。ルカと美空は愚痴に付き合わされている。
「大丈夫大丈夫です。盗聴なんてされてませんから」
「いや……そんなんじゃなくて……」
「で、ですね。―――――」
愚痴は続く。