K-1『music for the piece』
砂漠だった
東西南北どこを見ても砂、砂、砂。これ全部使って砂時計作ったらいったい何年分になるんだろうとか無駄な事を考えてみる、作ったとしても生きているうちに計測完了は見ないだろうが
そんな砂漠の深夜帯、ボロ切れみたいな外套を羽織った少年が砂丘を乗り越えようと息を荒げていた。別にこの砂漠を単身乗り越えようとしている訳ではない、それをやるとなると大陸半分を横断する装備と度胸が必要になる。移動手段は確保してあるがあまり人目に晒したくないものでもあった、そういう訳で少年は今砂漠を東に進行中
「はぁ……」
視界内では一番高いであろう砂丘の頂点に立って、少年は満天の星空を見上げる。光り輝く彼らはいつまで自分達を見守ってくれるだろうか、この有様だ、今すぐ見放されても不自然ではない
「アストラエア……」
黄道十二星座7番目、天秤座の正義の女神、今も天上で嘆いたまま
しばらく天体観測を行った後、少年は1本の笛を取り出した
「お願い…出てきて、アカリ」
透き通るような音色
その音に吸い寄せられるように蛍のような光が集まり出し、やがて収縮、少年を包み込んで浮き上がらせ
数秒後、そこには光の羽根が1枚舞っているのみとなった