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狂炎のヴェガ  作者: 勝燬 星桜
第1章『不死の街』
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第1章 7『協力』

しかし何がそんなに嬉しいんだか。魔法なんて便利な物は使えないからな。参加しても役に立てる気がしない。


ふっと体が軽くなり魔法陣から解放された。固まった関節をほぐす。


「この魔法陣もそろそろ替え時か。本当は全く動けないのにな。少し動けただろ」


「いや、もう強くしないでいいんじゃ。普通に辛い」


動けるったって座る事すら出来ないし。暫くは思い出したくない。背骨が軋む。


「それじゃあそろそろ、仲間紹介と行こうか。まあさっき思念体には会っただろうが、フィオナ! 起きてるか?」


しばらくして地下から女の子が出てきた。先ほどの少女である。高校生くらいだろうか。背丈は自分の首1つ分前後小さい。寝癖のついたショートヘアーーボブカットの髪の毛を撫で付け、眠そうな目を擦る。


そしてさすが異世界。めちゃくちゃ美形だ。さっきは命の危険もあってしっかり見ていなかったし、警戒していたが、今は寝起きの状態。美形というかもうまさに美少女っすよ先輩。


……誰だ先輩って。


「何? ふぁぁっ」


「また夜遅くまで何か考えてたのかい?」


「2日間寝てなくて、さっき寝たところだったから。流石に眠いよね」


「しっかり寝ろよ?」


「お父さんもお酒は程々にね。……私達は病気なんかになれないけど」


お父さんと言うことは、この親父の娘なのか! 無骨そうな親父に比べて随分と綺麗な顔だ。


「紹介するぜ、この子がフィオナ、で、こっちがえーと、そうそうまだ自己紹介すらして無かったな!」


ずっとこの調子だと疲れるな。理解能力に欠けているらしい。俺も突然ここに来て何がなんだか分からないのだ。


「それじゃ自己紹介といこうか。俺の名前はエイド・エルフォティアだ。フィオナの父親で、今はここの店主だな。これからよろしくな」


差し出された手に一応手を出すと、肩が外れるんじゃないかと言う勢いでブンブン振られた。


「僕はベイル・ノーデン。職業と言われると無職だね! ほとんどのみんなはそうだけど。魔法は特殊なものが少しは使えるかな。よろしくね」


ベイルとも握手を交わす。


「あ、記憶が戻ってきた……。えと、さっきはごめんね。私はフィオナ。趣味は、魔法作ったり……その他にも色々」


同じく握手を交わした。これで3人か。あと少し協力者がいるって聞いたが、今は留守なんだろう。


「じゃあアンちゃんの番だぜ」


どうしようか。本名を答えるべきか?しかしここが本当に異世界なら、異世界に自分の情報を残さないほうがいいと聞いたことがある。どうすればいい、ここはいつも通りヴェガで行くか、いやヴェガも自分の名前だと言う気もする。


くそ、考えるだけ無駄か。ハンドルネームやプレイヤーネームの感覚で名乗ることにした。


「あー、俺はヴェガだ。家名は無いと思ってくれ。そのだな、ひとつ信じてほしいことがあるんだな」


一つ重要なことを伝えなければならないのだ。命に関わる大切なこと。今後のムーブにも関わるだろうが。


「俺は、不老不死じゃない」


やはり少し驚かれる。街がどうこうと言い出したベイルを遮って話を進める。


「それに、俺はこの街の出身でも無い。別の場所から来た」


この際言ってしまおう。日本から、別の世界から来たことを。


「俺は、こことは別のせかーー」


息が詰まり、突然耳鳴りと強烈な頭痛に襲われ、思わず片膝をついて座り込む。周りの声が聞こえない。目が回ってまるで世界が高速で回転しているかのようだ。


直ぐに頭痛は治まった。


「大丈夫? どうかした?」


「い、いや、大丈夫だ。続けよう、俺は、この街とは別のせーー」


耳鳴りと頭痛に襲われた。脳を掴まれているような、それと同時に針で刺されているような痛みに、息が詰まる。


「っ、はぁ、はぁ」


「ほんとに大丈夫!?」


フィオナが割と真剣に心配している。


強烈な頭痛をやり過ごして、はっきりと分かった。俺はおそらく、別世界から来たことを言ってはいけない。少なくとも言おうとすれば先程のような激痛に苛まれることになる。


「な、何でもない、俺は、こことは別のーー」


「別の?」


「別の街、国から来た。詳しくは言えない。すまん」


これならいけるようだ。全く変な制約をつけやがって……。俺をここに呼んだ存在は何をしている。神とか美少女とかが出てくるんじゃ無いの?フィオナは美少女だけど。俺を呼んでないことは確かだ。


「待てよ、じゃあこの街に迷い込んできたってわけか? 本当に?」


「何度も言うが俺はここの人間じゃないって」


よほどここに迷い込むのが困難なのか。先ほどからここの住民だという体で話が進んでいた。ようやく伝わっただろうか。


「親父さん、そういや前に言ってましたよね」


「あ、ああ。はるか昔の話だ。本当に助けを必要としている人間が迷い込むことがあった。しかしここ十数年は奴らのせいか迷い込むことは一切なくなったし、現状不可能だ。俺たちですら突破できない結界を簡単に乗り越えてくるなどありえん。何か新しいきっかけがあったのか。正直に言えば今でも信じられないが、その辺はおいおいだな。とにかく、よろしくだ」


聞けばどうやらここはクレシオンという街らしい。どこかも分からない異世界の街に、やはり俺は飛ばされたらしい。


それにしても、とベイルが不思議そうに話す。


「街の外から来たとはねえ。僕もそれは聞いたことがないな」


少し頬を膨らませたフィオナが答える。


「いつも私言ってるでしょ。たまに知らない人が来るって。勝手に来て何事もなく暮らし始めるって」


「でもいつもは見覚えはあるんだよね。僕も親父さんも今回は分かる。ヴェガは見たことがない」


それでいい。ここの人間じゃ無いから。


と、フィオナが先ほど言った、


『いつも私言ってるでしょ。街にたまに知らない人が来るって。勝手に来て何事もなく暮らし始めるって』


これが引っかかる。


つまり、今回の俺と同様、街に迷い込んだ人間がいるということだろうか。とすれば、別の場所、日本などから迷い込んだ人間がいて、そのままいついていることになる。そいつらの考えは分からないが、それなら帰る方法が分かるかもしれない。


流石に帰れるなら帰る。多分。


「まあとにかく、ヴェガ、よろしくね」


「あ、ああ。よろしく、な」


「まあほんとはもう1人いるんだけど」


「今は外出か、あとで紹介だな」


それにしても、手伝うとは言ったものの、何も知らなさ過ぎてこれからどうすればいいのか皆目見当もつかない。


「あのさ、俺、これからどうすりゃいいの?」


う〜ん、と首をひねる一同。


「何しててもいいぜ」


「取り敢えず家にでも帰れば?」


おいおいおい、待てよ、泊まる場所とか街を紹介するとかあるだろ!


「あのなぁ、協力するにしても何をすれば良いとか、何も分からないんだが。あと、最低限の衣食住くらい確保してくれよ」


「家に帰ればいいだろ、って、そうか! お前さんこの街の人間じゃ無いんだよな」


「君も大変だな」


くっ、そら大変だわ。実際意味不明すぎてかなりやばい。


もう1度よく考えたらここってマジの異世界でいいのかっ!?本当に異世界に迷い込んだのか……。


挙動不審にウロウロすると、周りがおかしな奴を見る目で見てくる。決して頭がおかしいわけではないのだ。妙に落ち着き払っていた自分だが、今更ながら緊張して来た。


「私の隣の部屋、空いてるから使っていいよ」


ボソッとフィオナさん。

マジですか。優しいな、おい。


「ちょ、ちょっと待てよ、なんだかんだ言って素性のしれないことには変わりがないーー」


「おい! 信用しろや! 今更素性なのなんだの言うなって! 俺を泊めろ!!!」


「あのね2人とも、私が悪意のある嘘に気が付けるの知ってるでしょ? ヴェガは安全よ。それに信用しても平気。足元の魔法陣も光らないし」


なっ!そんな能力があるのか?めっちゃ便利!!というか怖い。それ以上にまだ魔法陣の上に戻ってきていた自分が怖い。しかも安全と言われる俺って。


「魔法陣、やっぱ替えないとな。消えてないわ」


「そんなに使う機会あんのか?」


「む、確かに無いな。まあアンちゃんみたいなのが来た時のためだ」


「みたいなのってなんだ、みたいなのって!」


とても迷惑な魔法陣だが今回は助かった。家も無く放り出されたら、別の家を押収するか少ないカロリーメイトで食い繋ぐしか道は無い。


「そうだな、フィオナが嘘見抜けるのは勿論知ってるよ。よし、信用するぜ、アンちゃん。フィオナが良いっていうなら泊めてやる」


「野宿だけはもう勘弁してくれ」


フィオナさんに感謝だ。これで衣食住の住は確保できた。


後はそうだな、この街や生活環境、色々と聞くことは多い。全く分からないからな。そもそも言葉が通じるのかだって……ん?言葉?


今更ながら驚愕の事実に気がつく。


「こっ、言葉がっ、通じるだとぉぉ!?」


これにはフィオナも不審な顔をする。

あれか、これが所謂補正的なやつか。異世界に行くと日本人なのに言葉が通じるって言うあれか!それなら何か特別な力でも……無いか。


しかしこの話はどうやらしない方が良さそうだな。言葉が通じるとか怪しいにも程がある。


「いいよ、私が案内するから。付いて来て」


いやマジで。フィオナさん、女神ですか。情報は必要不可欠だから、これほどありがたいことはない。


「全く何も知らないとして教えてくれよ?」


「うん。こっち」


そう言ってフィオナはカウンターに入る。付いて行くけど街の案内を頼んだのだが。


「あのぉ」


「街はちゃんと紹介するから。良いから付いて来て」


あ、さいですか。ありがとうございます。今更になって襲って来た緊張に、自分は一体どうなるのだろうと言う不安が混ざって、今すぐにでも逃げ出したいような衝動に駆られる。


カウンターを入って左奥の扉を開け、少し階段を降りる。地下はまるで秘密基地のようだ。部屋には所狭しと樽が並べられている。フィオナが奥の巨大な樽の蓋を横に転がすと、奥へ通路が続いていた。


樽の蓋が扉になってんのか。完全に隠し通路だ。


「ここが君の部屋。隣が私ね」


「ありがとう。えー、フィオナさん」


「フィオナでいいよ」


なんて物分かりのいい人だろう。

あの2人めっ、俺が危ない奴じゃ無いっていつかしっかり分からせてやるからな。


「何か用がある時は部屋に来てね。じゃあ、街に出ようか?」


「頼みます」


部屋の前を通り過ぎて階段を登る。

階段の上は真っ暗だ。フィオナが天井を押す。


ギイーー


と音がして上に天井が開く。パラパラと土埃が舞い、四角く切り取られポッカリと開いた暗闇の先、もう一つの跳ね上げ戸からはそれは細い光が一筋、差し込んでいる。


「この先が地上ね。それじゃあ、行こっか」


フィオナがまず梯子を登り、跳ね上げ戸を押し上げると、一気に光が差し込んできた。


この先に街が広がっている。今回はガイド付きだ。先ほどとはまた違って見えるだろう。


すこし埃っぽい鉄の棒をつかんで、足を踏み出す。よじ登ると、路地裏に出た。

いよいよ人と出会って、何やら怪しい計画の手伝いをさせられるようです。


自分は挿絵が描き終わらずに投稿が遅くなっております。キャラクターの設定画像ってどの話に入れればいいですかね。


それでは引き続き【狂炎のヴェガ】をよろしくお願いします!


☆☆☆☆☆の評価も是非に!

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