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狂炎のヴェガ  作者: 勝燬 星桜
第1章『不死の街』
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第1章 2『巷で噂の異世界転移』

 迫り来る床に覚悟をして目を瞑る。


 ああ、鼻血が出るとなかなか止まらないタイプだから嫌なんだが。願わくば床が俺に来る衝撃を負担してくれますように。まあ作用反作用であり得ないけど。痛いの本来好きじゃないんだけどな。そりゃそうか。今日は大学無いし、1日暇だ。どうしようか。最近じゃオンライン授業ばっかりだし1年が懐かしい……と言いつつ大学3年が近づいて来ている……現実逃避して一日中博物館で暮らしたい。というかこの石熱いんだけど。不思議なこともあるもんだ。民族系専攻だから石自体には断然テンション上がるけど、これは流石に熱い。というかちょっと待て、床が俺を全身で受け止めるのが少し遅くないか。何か秘められた時間停止能力でも発現したか。転ぶのって久しぶりだな。いつ以来か。ワンチャン小学校か中学以来!?昔の記憶曖昧だけど。そして普通に激突が遅い。時間がゆっくり感じられる的な。まさか走馬灯の前段階!?


「なわけあるかっ!」


 床に怯えながら目を開く。立っている。


 立っているんだが!?


 知覚した瞬間バランスを崩して転びそうになる。気持ち悪い。吐き気がする。と、目前の机がやけに重厚に見える。古い木だ。周りには埃を被った本棚が幾重にも並んでいる。俺の机ってこんなに古かったか。


「……え」


 先程までの昂りは消えて只々ーー


「ーーここ、は」


 いや、きっとここがさっきの夢……な訳ないし。しかし石を見た時に何かしなければという念に駆られたのは事実である。


「あれ、何かしようとしていて、それで……」


 俺は何をしようとしてたんだ?


 思い出せない。考えると頭に刺すような痛みが走る。


「ーーっ」


 頭を振ってなんとか痛みを散らし、改めて辺りを見回してみる。古い本棚、机、梯子。あまり綺麗とは言えない。掃除と言うものをしていないのだろうか。


 深呼吸をすると喉に埃が入ってきて咽せた。相当埃っぽい。


「ゴホッ、炎城雅久くんが涙目を擦って机を見れば、黄ばんで硬そうな紙が乗せられていましたとさ」


 机に乗っている紙に書かれているのは、全くもって知らない文字だ。


 見たこともない文字である。所々に点や曲線がある奇妙な文字で、アステカ文字のような絵に近い物ではなく、しっかり簡略化されてはいるようだ。読もうと頑張ってはみたものの、読めないものは仕方がない。まあアステカ文字も読めるものでは無いけど。もはや絵だから。大学の研究テーマが頭を過った。


 それにしてもここはどこだ。俺は夢を見てるのか?無人島?飛行機落ちた?いや乗ってないけど。


 と、とにかくサバイバルの基本として持ち物の確認だ。まず何があるかを把握しなければならない。


 なぜか足元に落ちているリュックサックを見つけ、ジッパーを下ろして中を確認してみる。


 パーカー(夏用の薄手の物)

 筆箱(シャーペンと消しゴムと三色ボールペンその他色々)

 ノート(小型のノートが3冊)

 カロリーメイト2箱 (チョコレート)

 万能ツール(ナイフ、ハサミ、ヤスリ、ノコギリなど)

 ソーラーパネルの充電器(スマホ用)

 某社の水筒(もちろん空っぽ)

 ビニール袋(3枚)

 財布(小銭が少しと1万円)


 色々入っている。なんで入れたのか思い出せないものも混じってるが。めちゃくちゃサバイバルしようとしているカバンの中身なのだが、記憶にない。


 躓いた時に引っかかってカバンだけ俺と運命を共にしたらしい。


「1万円入ってたのか。見つけたら嬉しいやつじゃん。ラッキーラッキー」


 次にポケットを探ると、スマホが出てきた。電波は……


 無い。寝るときにポケットから出し忘れていたせいでここまで持ってきてしまったようだ。メモ機能とカメラ、お絵かきアプリ、時計などが使えるが、電波が飛んでいないので大した使い道はない。


 荷物確認もひと段落したところで取り敢えずここがどこなのかを知りたい。夢だという線も捨てがたいけど。そのまま一歩後ろに下がると……


「おっと」


 足に本が当たり、右足が本の山を突き崩して滑る。堪らず背中から床に倒れこむと、ガツンと頭が本棚にぶつかり本が一冊落ちて来るのが見えた。


「ちょっ、まっ、今日2度目かよっ!?」


『ゴツン!』


「痛ったぁ!!!」


 目の前に星が飛ぶ。額を直撃した本が目の前に覆いかぶさっている。正直めちゃくちゃ痛い。涙出てくる。


 体を起こすと膝に本が落ちてきた。


 ハラリとページが開く。


【古代魔法からの脈絡】


 5章 不死研究


 ーー人々はみな、死を恐れ、死から逃れる術を探求し続けた。それは人間の性である。悠久の歴史の中、人間の最高到達目標でもあるのだから。詳しい資料、当時の供述はないものの、人間はいつしか禁忌に相当する魔法実験を重ねた結果、魔素核壁の分裂が極端に早く寿命が長い人間が生まれ、さらに研究を進めた結果、不老不死の源流が完成した。実際の実験については以下のーー


 意味の分からない本である。まるで人間が不老不死のような言い方をしているが、何が言いたいのだろうか。


「魔素隔壁って何だし。細胞的な? 違うか」


 と、そこで気が付く。


 さっきの紙は読めなかったのに何故読める。1ページ目を見ると、1章は言語伝達魔法とある。えーと、なになに、この本もその魔法が掛けられている。多くの人々に読まれるようにーー


「はぁ。魔法? 何言ってんだ。しかし見間違いじゃない。俺の頭が現実を受け入れられずに厨二病へカムバックしたのかと思ったわ」


 取り敢えずここを出なければ何も始まらない。リュックサックを背負い、初めて履く靴を履いて、少しよろけながら図書館らしき建物を出る。これだけ汚いということは誰も本を借りに来ないらしいな。


 重厚な扉を押し開き、外へと踏み出すと、明るい光が差し込んだ。


 外に出て目が慣れると、前に広がる光景に愕然とし、息を呑む。


「なっ!?」


 街が、広がっていた。街の奥には朽ちた城がそびえ、街を見下ろしている。ずっと放置されてきたのだろう。苔むして蔦が這い、ゴーストハウスの様相だ。殆どの家々は手入れが行き届いていない。


 石畳はひび割れ、周りを見渡すと何やら剣の欠片まで落ちている。静まり返る中、耳を澄ませば時折鳥の声が聞こえ、遠くからは何やらフィドルのような楽器を使った音楽が聞こえて来る。路地にはやることが無さげつまらなそうにした人が座り込んでいる。


 都会で無料キャンプしている人か、暇な街の住人か、それとも危ない何かか。ラリっちゃってるのか。


 目を擦り、改めて目の前の光景を見渡す。城に石畳の街、ヨーロッパ風の街並み。ノスタルジックな雰囲気を感じる。


 荒れ放題だが何処か懐かしさを感じる風景だ。見覚えがあるはずはない。


 なぜか落ち着き払っていたが、ようやっと色々と理解する。いや、そうとしか思えない。


 魔法の記述、読めない文字、剣、城、ヨーロッパ風の音楽。


 もしかして、もしかすると。


 これって……


 ごくり。


「ーー巷で噂の異世界だとぉ!?」

長編の連載を始めました。1年以上前から構想は練っていて、ようやっとここまで来れました。これからよろしくお願いします!


↓にある ☆☆☆☆☆ を ★★★★★にしていただけると嬉しい限りです!感想などもお待ちしておりますです。

よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 不死研究の詳細やどのような実験が行われていたのかガ引っ掛かります [一言] 自分は中世ヨーロッパの音楽や文化が好きなので、どういう風景なのか楽しみです
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