アレンジ
漫才コントの脚本です。
企画の応募として投稿しました。
袖より二人が出てくる際、ツッコミは少々具合悪そうにしており、ボケはそれを少し気にしている。
ツッコミ「はいどうもー、〇〇です。よろしくお願いしますー。僕が〇〇で、こっちが」
ボケ「〇〇です。(手を上げながら)はい、今僕らの名前初めてきいたよーって人。あ、何やねんお前ら一生売れへんわーカスーとっと引っ込めーって思った人」
ツッコミ「挙げづらいわ、知らんくても」
ボケ「あら皆さん、僕らのことご存知みたい」
ツッコミ「現実逃避すな」
ボケ「あ、そう。じゃああなた聞いてみてよ」
ツッコミ「はい、僕らのこと知らんくなくなーって考えなくもなかっ——」
ボケ「おい、現実逃避かぶせやめろ」
ツッコミ「ごめんなさい、冗談です。いや、とは言いながらね、我々もこれからがんばって少しでも皆さまに名前覚えて頂かないとと思ってる次第でございますけども。えー、実はですね、今回は以前、企画として募集した漫才ネタの方をさせていただこうかと思っております」
ボケ「そうなんです」
ツッコミ「はい。まぁ、とはいえ、とはいえですよ。やっぱり我々としては、それだと面白くないじゃないですか」
ボケ「ん、何が? 面白くない?」
ツッコミ「やっぱり何らかの、ねぇ? オリジナルの、ちょっとしたスパイスというか、アレンジをネタの合間にでも入れ込んだりなんかしたいなと」
ボケ「アレンジ?」
ツッコミ「えぇ、まぁね、そういうのも入れて今日来ていただいている皆様に、我々のことちょっとでも覚えてもらえたらなと」
ボケ「アレンジ?」
ツッコミ「うん、まぁね……え、嫌? アレンジ。アレンジというか、まぁ〇〇としての爪痕をね」
ボケ「アレンジ? オレンジ?」
ツッコミ「おー、いきなりおもろない。想定外のアレンジ」
ボケ「ごめんごめん、アレンジね。あ、じゃあ、わかった、こういうクイズどう? 合間に食べ物の名前言うからそれを最後にお客さんに当ててもらって——」
ツッコミ「うん、今オレンジ言うてたな」
ボケ「ダメ? スパイスねぇ。あ、じゃあ僕、今から特技します」
ツッコミ「急やな。まぁ、いいわ、特技? 君なんか特技あんの?」
ボケ「言うなよ」
ツッコミ「いや、普通に知らんよ、僕も。なに、楽しみ。いいよ、じゃあ最初に君の……(具合が悪いのか一呼吸挟む) 君の特技、披露したあとネタに移ろうか」
ボケ「よっしゃ、はい、じゃあまず——」
その時、突然ツッコミがその場でクラっと倒れてしまう。
ボケ「え? ……お、おい、ちょ、どうしたんや、大丈夫か」
ボケは相方に駆け寄り、心配しながらも舞台でのハプニングに客席を気にして、わざとらしく何かを決心したように生唾を飲み込む。
ボケ「よし、こうなったら(と目を閉じて集中する)……ハァ!」
大袈裟に片腕を伸ばし、手で影絵あそびのキツネを作る。ボケが腕を曲げると、ツッコミはその腕の動きに合わせて置き上がり、朦朧としながらマイク前に立つ。キツネの口を動かすと連動してツッコミの口も動くのを確かめた後、ボケはキツネの手をツッコミの背中に回して隠し、腹話術人形のように相方を操る。
ボケ「ちょ、何、急に倒れてどうしたん」
ボケ「(裏声)ごめんごめん、ん、いや、緊張で昨日眠れなくて。で、何の話しやっけ」
ボケ「えっと、何やっけ? アレンジ?」
ボケ「(裏声)アレンジ? (狂気的に)オレンジぃ! オレンジ、オレンジー!」
ボケはツッコミを揺さぶるように操る。ツッコミは目を見開き、目覚めるも、身動きできない金縛り状態に泣きそうになりながらパニックになる。
ボケ「あ、目覚めた?」
ボケは自身の腕を下ろして、ツッコミが再び横になるようにすると、途端にツッコミは動けるようになる。
ツッコミ「ちょ、ちょっと待ってよ! 何が起こったん! 今のなに!?」
ボケ「……いや、あの、実はウチそういう家系やねん」
ツッコミ「家系!? 家系って何? 家系でやるもんなん、こんなん」
ボケ「いや一子相伝やから今はおれだけやけど」
ツッコミ「ん、恐ろしい家系! 色々とバックボーン気になる!」
ボケ「呪縛パペットっていう」
ツッコミ「呪縛パペット! ネーミングも怖い」
ボケ「昨日、眠れてなかったんやろ?」
ツッコミ「えぇ、……う、うん」
ボケ「右腕から伝わってきた(さわやかに笑う)」
ツッコミ「怖!」
ボケ「五六五六三八」
ツッコミ「……え?」
ボケ「携帯の暗証番号?(カッコよく)」
ツッコミ「怖い!」
ボケ「あ、そうそう。僕の特技でしたね、気を取り直しまして、はい、皆さん注目ー、僕の耳をご覧ください。いいですかー、今からこの耳が、まるで森の中に潜む可愛らしいウサちゃんかのようにピクピクしますよー」
ツッコミ「いや、呪縛パペットの方がすごいやんけ、もうええわ」