第10話 クーディアット村
あれから一週間が経った。
俺とニィナさんは積極的に依頼を受け、魔物の討伐だけではなく薬草の採集など……様々なことをしてきた。
そして一つ、重要なことが分かってきている。
ガチャのポイントについてだ。
俺がA級に昇格した日、就寝前に確認してみると――なんとポイントを獲得できていたのだ。
明確に『パーティー』と取り決めない限り、どうやら【魔術ガチャ】の判定上は、他に誰かが同行していてもソロ扱いになるらしい。
結構適当だな……と思ったが、俺にとっては嬉しい話だったりする。
支援魔術をかけたニィナさんはかなりの戦力になる。
それはC級冒険者の範疇に収まらず、A級上位に近いほどだ。
飛行する敵以外はニィナさんに任せることもできるので、俺が【滅炎の矢】を使い過ぎて魔力切れになる……なんてことも避けられる。
一応その後――【魔術ガチャ】についてニィナさんに説明したうえで―― 一日限定、パーティーとして活動したみた。
するとやはり、口で「解散だ」と言うまではポイントを入手できなかった。
パーティーを組んでいる期間の長さもポイントになると計算をして分かったが、これはあまりに少なすぎ、現状ではパーティーを組むことに大きなメリットは感じられなかった。
とりあえずは今のままで、他にもポイントを入手する方法がないか検証する予定である。
そういえば……所持金も増え、別に出ていったからといってニィナさんと仕事をしなくなるわけではない……と伝えると、「君を家に置くと一度決めたのだから、甘えていなさい」とニゲルさんに言われてしまった。
ニィナさんのお目付け役に任命されたが、俺は金があるのにタダで家に住まわせてもらっている。
いつかのために……と思い、俺はニゲルさんたちに渡す用の貯金を始めた。
そして今日、俺たちは冒険者――としてではなく、ニゲルさんに頼まれ、村長の仕事の手伝いをすることになった。
年に一度の税金回収だそうだ。
クーディアット村は出入りする際に金を支払う必要はないが、村に住むには税金を納めなければならない。
商売をする店は利益の一部を、冒険者などを含む住民は一定の額を、今日この日にニゲルさんたちの家に持ってくるのだ。
ちなみに集めた税金の一部は近隣の街にいる領主様、そこからさらに国に渡る。
「はい、では証明書になります」
俺の隣ではニィナさんが村人に今年度分の納税証明書を渡していた。
「ふぅ……フェイトさん、あの方が最後だったようです」
「お疲れさまでした。思ったよりも早く終わりましたね」
「えぇ、本当にみなさん協力的で……有難い限りです。それよりもフェイトさんにお手伝いしていただいてしまって……ごめんなさい」
「家に住まわせてもらっているんだから、これくらいお安い御用ですよ! 俺に手伝えることなら、今後も何でもしますから」
俺とニィナさんがそんな話をしていると、税金を家の地下にある金庫に入れていたニゲルさんがやって来た。
「そう言ってくれると心強いな……私からも礼を言うよ、ありがとう。……妻が病で亡くなってしまってね……人手が足りなかったんだ」
話は聞いていた。
ニィナさんの母親が少し前に亡くなってしまったと。
「私はこの村を守らなければならない。この税金も……村のために、村人のために使わなければならない。傲慢であれば、誰もついて来てくれないからね」
ニゲルさんはクーディアットの村を見渡し、目を細めてそう言う。
俺は、彼の村長としての矜恃が垣間見えた気がした。
「フェイト君、この村を気に入ってくれたかい?」
まだ過ごした時間は短いけど、俺はこの村が好きだ。
人も、自然も、全て。
「――はい、もちろんです!」
いつか村のために何かができる時が来たのなら、精一杯やってやろうじゃないか……俺はそう決意した。