【地獄編】冤罪
「貴様が前野良夫だな。」
え?まえの?
次に目覚めた時、目の前には男がそびえ立っていた。
見上げても顔が見えない。ただ、ただ、でかい。
て言うか、ここがエトワールとやらなのだろうか?
僕が考え込むようにうーんうーんと唸っていると顔の見えない巨大な男が話を続けた。
「貴様は善良な市民、善野良夫を殺した罪により無間地獄行きが確定した。刑期は1那由多年だ!」
え?地獄?え?ェエエエエ!?
正直、巨大な男が言っている意味が分からなかった。第一僕の名前はぜんのよしおであり、まえのよしおではない。
「ちょ、ちょっと待って下さい!僕は善野良夫です!人違いです!」
何かの間違いで軽自動車の運転手と僕が入れ違いになっているんだ、それを必死に説明する。
「此の期に及んで虚言を吐くか!神と、そしてこの閻魔大王が人の魂を間違えるわけがない!」
ガッツリ間違えてるよ!?
どうしよう、このままじゃ本当に地獄に堕とされてしまう…
「嘘つきめ、こうしてやる!」
「え?ちょっと!?あ゛ぁァ!い゛だい゛!」
舌が見えない何かによって引っ張られ千切れた。とてつもない激痛で前に倒れ込み身を捩った。
足をバタつかせ、その場で転がり続けるが次の瞬間、床が消え真っ逆さまに落ちていった。
堕ちていく。
激痛と酷い耳鳴りが永遠と続く
何が起きているんだ!僕が何をしたんだ!
人違いだっ!人違い人違い人違い人違い人違い人違い人違い人違い人違い人違い人違い人違い人違い人違い人違い人違い人違い人違い人違い人違い人違いなんだああああああああ!
なんで僕が?ねえ?なんで?
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでかありにまわらひむのや」ぬひまたこや」ひはなねはアヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!
良い子でいただけなのに
殺されて地獄に堕ちて
「ぐぞぉ゛おおおおおおおおおおおおおおおお!」
――堕ちたのは奈落。未だ底は見えない。