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アオハルインウィディア  作者: ヌベスコ
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0話 『出会い、からの急転直下』

 新崎しんざき ようはこれまでの人生全てを勉強に捧げてきたのだ。


 天性の負けず嫌いである新崎は小学校の頃から非常に嫉妬深く努力家だった。

 それゆえに、テストというはっきりと目に見える結果をとても気に入っていた。


 彼はただひたすら一番になることを求めた。


 自分よりも恵まれた記憶力を持つものや非常に高い思考力を持つもの。

 そんな彼らに、時には敗北を喫したこともある。


 だが、新崎は負ける度に強くなってきた。

 彼に二度目の敗北という文字はなかったのだ。

 そして、中学生の頃、そんな彼の狂気すら感じさせる姿を見て、ある一人の生徒が畏怖の念を込めてこう呼び始めた。


 ――『嫉妬の天才』と。

 

  しかし、彼の泥臭い執念によって形作られたそれらの経歴は全て神崎かんざき 裕翔ひろととの出会いによって打ち砕かれてしまう。

 先程も述べた通り、新崎にとって二度目の敗北は決して経験することのない、するはずがないものだった。

 しかし、あろう事か彼は負けてしまったのである。


 ――『天才』と呼ぶにふさわしい彼に。


 しかもその数、一年を通して校外模試含め十回近く。

 そもそも彼の通う帝王高等学校、略して帝校と呼ばれるここは国内屈指の進学校である。


 それゆえに端から端まで全員が天才であり、勤勉なこの学校で常に二位を取り続ける新崎は誰がどう見ても優秀であり、褒め称えるところなのだが、彼はどうしても納得出来なかった。


 だから、二年生となった今年も彼はこれまでとなんら変わらず、ただ頂点を目指して盲信的に勉強に取り組むはずだったのに……



 学校指定の真っ黒な学ランを羽織り、上下黒という学校だからこそ許されるファッションをしつつ、少し大きめのバッグを右肩にかけ、左手に持つ英単語帳をコンプレックスの鋭い目付きで眺めながら、新崎は美しい桜並木を横目に落ち着いた足取りで歩いていく。


 周りにはソワソワしながらも割と大股で歩く一年生らしき姿や友達との待ち合わせ場所っぽい所で携帯を懸命に弄る女生徒の姿など。


 今日、長かった春休みを終えて帝校の新たな季節が動き出す。

 英単語帳をバッグにしまう。

 すぐそこの曲がり角を曲がれば……もう、目の前だ。


 白塗りの立派な近代建築物が視界を寡占する。

 主に三つの棟からなるそれは余りに広大で、初見で学校と判断するには奥にある、体育館や校庭を見なければまず無理だろう。


  東京に来る田舎者はよく背の高いビルを見上げてしまうと言うが、そんなビルたちを見慣れている俺たちからしても、やはりこの建物は異質に感じる。


 さらに約1ヵ月ぶりの帝校名物、横に広すぎる校門を見る。

 一体全体なんのためにここまで大きくしたのやら……


 校門を通り抜け、クラス分けの掲示板を見つける。

「理系はこっちか。俺は……2-A」

 自分の名前を探し終え、さっさとこの場を去ろうとしたその時、偶然、その名が視界に入った。


「ん? 神崎……だと……っ!!?」

 思わず声が漏れた。まるで不意打ちを受けたやられ役のような言い方に後になって恥ずかしさを感じたが、この時はそんなことを考えている余裕は一切無かった。


 これは運命のイタズラか、はたまた偶然か……


 俺は掲示板から少し離れ、周囲に誰もいないことを確認するとニヤリと笑った。


 ……まさか、あいつと同じクラスになるとはな。しかし、好都合だ。

 やはり倒すべき相手が目の前にいる方がやる気も出るしな!! クックック……


 俺は意気揚々としながらこれから一年を過ごす教室へと向かった。

 本当にありがちなセリフだが言わせてくれ。

 この時はまさか本当にあんなマンガみたいな未来が待っているとは思ってなかった。

 いや、ほんとに。あんなことになろうとは……


 教室に着く。サイズは一般的な教室と大差はないが、白を基調とした教室の中に合わせて白色の長机を置いている。


 更にそこに折りたたみ式の硬い椅子が五個、セットになって等間隔に付いている光景は少しだけ先進的に思う。

 それに一人ひとつタブレットを用いた授業も珍しい方だろう。


 名前順で指定された席に座る。

 まだ、閑散としている教室はボッチに慣れた俺には割と心地よかった。


 しかし、あれよあれよという間に人の入りが活発になる。

 さっきまでシーンとしていた教室はガヤガヤ、ザワザワと喧騒に包まれ、俺は頬杖をつくことしか出来なかった。

 だが――


 ――ふと、気がつけば自分の元に向かってくる爽やかな雰囲気の男子が一人いるのだ。

 俺とは真逆の優しそうな目や高く通った鼻筋で俗に言うイケメンに間違いないだろう。


 もちろん知り合いなはずもなく、まあ、勘違いだろうということにした直後、彼は俺の目の前に立った。


 ……あれ? やっぱり俺に用があるのか? なんだ、一体何されんだ?


「あの……新崎くんですよね?」

「……おう、そうだけど。何? てか誰?」

「あ、ごめんごめん。僕は神崎 裕翔って――」

「なにぃぃぃぃぃぃい!!!??!?」

 驚きのあまりつい大声を出してしまった。

 こんな爽やかなやつが……俺のライバル(自称)だと!? 色々と格差が酷い……

「悪い、ちょっとびっくりしただけ」

「う、うん……」

 あ、引かれた、泣く。

「あ、えっとそれでね、単刀直入に行きたいんだけど……僕と友達になってくれませんか!!」


「無理です」


 それは正しく条件反射だった――……

初めての作品なので、頑張って完結させていきたいと思います!!

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