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1.殺戮の魔女 ①

お待たせしました。


やっと本編ですぞ(丿 ̄ο ̄)丿

 魔法少女とはなんなのか?

 その質問に回答するならば、魔物(バグ)処理屋、治安を守る警察の代わり、アイドル、若さを保つための変身道具など、さまざまな候補があがってしまう。


 魔法少女システムと称されたとある企業による魔法の開発。

 この力は、軍事開発を進めていた国家にとって許しがたくも量産できる兵器として活用された。


 国民の意見は様々だ。魔法少女は必要不可欠な存在と発言する人もいれば、廃止するべきと訴える人もいる。


 そして、俺も。

 魔法少女は、廃止するべきだと、そう思っている。


 □


「回収完了、後は帰還だけです」


 赤く光輝く宝石を掲げながら、ネメシスは静かに依頼の完了を報告した。

 なんともまあ、呆気なく終わったものである。

 戦闘開始から約10分。

 一方的な蹂躙をもって、闘いは終結を迎えた。

 ピチャピチャと手から赤い液体がこぼれ落ちる。


『はいはい、ご苦労様。戻っておいで、』

「……了解」

『あ、そうそう。少し用事頼むから相手よろしくね』

「わかった」


 携帯型端末を閉じて、再度相手の魔法少女の様子を伺う。

 若干消化不良だが、これ以上暴れまくって嗅ぎ付けられては意味がない。

 詠唱を唱え、空間に黒い穴を開ける。

 どこまでも沈められるような底の見えない穴だが、きちんと収納できる魔法だ。

 取り出す時も呼ぶだけで召喚してくれるので、素直に重宝している。


 さてと、どうしたものか。

 目の前に広がる猟奇的な殺人現場を見て、げんなりと肩をすぼめる。

 先程まで汚れが少なかった新校舎の壁は真っ赤に液体に彩られ、元の白さは失われていた。その中心には魔法少女が一人、ドレスは赤色に染まっていた。

 やり過ぎた、とは思う。

 もう少しスマートな解決方法があったのではないか? という考えが過るが、知るかそんなもん。やってしまったもんはしかたないだろ。


 そんな中、


「なんで……魔法少女を襲うの? 」


 掠れた声で、(あんず)はネメシスに問いかける。


「私は……いつも通り魔物(バグ)を狩っていた、だけ、だよ」


 彼女はずっと、こちらを睨み続けている。

 怒りと憎しみが混ざった視線。

 見慣れた光景ではある。俺が倒した少女達は、みんなそんな瞳をしていた。


「魔法少女は始末するべき、そう指示されている」


 その気力に免じて私も回答をした。

 なにも知らずに死ぬのは流石に可哀想だろう。

 人を殺しまくってる俺が言えたもんじゃないけどさ。

 視線をあわせると、虚ろな瞳で訴えかけてくる。


「あなた、だって、魔法少女でしょ? 」

「確かにそう。だけど、貴方とは違う」

「それを答えて、よ。私たちだって、襲われる理由が……うっ……」


 痛みで苦しむ少女に対して、無表情のまま佇む。


「魔法少女は、ファンタジーの世界の住人」

「えっ……? 」

「幻想は幻想に還るべき、違う? 」

「なんの……こと……」

「夢で終わせなければいけない。現実に、魔法少女は必要ない」

「それ、は……」


 なんという皮肉だろうか。

 魔法少女である俺が魔法少女を否定して魔法少女を殺す。

 全く、世も末だな。

 続きを言う前に、彼女は血溜まりの中に崩れ落ちる。

 息もぜーぜーと荒くなり、長くはもたないだろう。


「苦しいでしょ? いま楽にしてあげる」


 詠唱の準備を始める。

 せめて、彼女に安らぎを。


 そう願いつつ、指先に魔力を込める。

 一発で脳天を撃ち抜いてあげよう。苦しまずに死ねるように。


 だが、その行動は無意味となる。


「逃げなさい! キョウ! 」

「逃げてください! 」

「あいつ! また! 」


 不意に空から複数の声が響き出す。

 視線を向けると息を切らしながらもこちらに敵意を向ける少女達の姿があった。


「誰? 」

「魔法警察です。殺戮の魔女・ネメシス、貴方をここで討伐します」

「物騒ですね」

「貴方ほどではありません」

「そう」


 淡々と目の前の魔法少女に言葉を返す。

 なんともまあ、面倒なことになったもんだ。

 彼女は、亜麻色の髪を通り風でなびかせながら、槍のような独特の杖を構えている。

 他の二人も同様に、似たような杖を構える。


「改めて自己紹介しましょう。初めまして、犯罪者。私は始まりの魔法少女・リスタリア。貴方を狩るものです」

「そう、私はネメシス。ただの魔法少女」


 俺も自分の武器を構える。

 独特に形状が歪んだ刀身、数多の血を吸ってきた吸血の魔刀。

 赤く染まった刀は、リスタリアを映す。


「二人は、後方でキョウの救護を。」

「は、はい! 」

「まかせとけ! 」


 赤髪と青髪の魔法少女二人は杏に回復魔法をかけ、自然回復力を向上させている。二人分の魔力で行っているんだ、復活は早いだろう。


「めんどくさい、な」

「降参するなら命は取りません。どうしますか? 」

「それはない」

「そうですか」


 槍の刃先を首筋に向ける。


「なら、死んでください」


 それは、勢いよく射出された。ただ真っ直ぐ、俺の息の根を止めるために。

 風を切る音がほんの数センチ近くで聞き取れた。

 俺は身体を半回転分ずらし、ギリギリの位置で避ける。

 どうやら、向こうは待ってくれないらしい。


「物騒ですね」


 そのまま、回転の勢いで槍の持ち手に蹴りを加える。

 武器を削ぐためにやったのだが、相手は余程頑丈らしい。

 身動きひとつとらずに障壁を張っていた。


「リスタリア様の初撃をよけたの!? 」


 始まりの魔女の付き添いとしてやって来た赤髪のほうが、一連の行動を見て驚愕の表情を浮かべる。

 魔法少女と聞いて、ファンシーな闘いを期待したならば残念。

 現実はこんなもんだ。


「これで満足ですか? 」

「くっ……」


 いや、そろそろ帰りたいんだ。

 これ以上は、報酬の割にあわない。

 俺はいつも通りのセリフを提唱する。


「では、魔法少女の皆様、お疲れ様でした。狩られる日を暫しお待ち下さい」

「おい! 待てよ!」


 青髪の魔法少女が叫ぶまもなく、ネメシスの反応は消失する。

 まるで霧に紛れたかのように、その影は跡形もなく消えていた。


 落胆する赤と青の少女達。

 その中で一人だけが、ニヤリと唇を歪ませていた。




ネメシス「女装ではない。変身だ」

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