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プロローグ

全体的に変更したため

再投稿。


こちらの都合で申し訳ありません。

 世の中に『魔法少女』と呼ばれる特別階級が作られた経緯は、ある魔道具が見つかったことが原因としてあげられる。


『スマートフォン』


 かつて全人口の9割以上が所持し、連絡や検索、はたまた遊戯を完備する万能の機械端末。

 現在はその機能の半分を失っているが、同時にある文書を発見するに至った。


 しかし、それが今後の発展に貢献するとは誰もが予想しなかったのだが。


 俺がこの高校に入学してからはや1年。世間では、もう学校に慣れただろう? なんて囁かれる頃合いになった。

 太陽が張り切りすぎている快晴の空を見上げながら去年新設されたばかりの校舎を一人、誰にも気づかれないようにそっと歩き続ける。

 夏でもないというのに温度は28℃を超え、ムシムシと熱気が辺りを包み込んでいた。

 まだ6月、それも中旬だというのに蒸し暑いのだから勘弁してほしい。額からは汗が流れ落ち、喉も水分を欲している。

 こんなことならケチらないで、飲み物を買っておくべきだった。カラカラに乾いた口が水を寄越せと、訴えかけてきている。


「しっかし、魔法少女は今日も大活躍だな」


 最近流行の小型端末を片手にニュース記事を閲覧する。


・魔法少女、指名手配の強盗を逮捕!

・町おこしに花の魔法少女・ローズが登場!

・魔法少女に成るためには


 どの内容も魔法少女についてのことばかり。


「別に見せ物じゃないだろうに」


 今の世の中にとって、魔法少女は必要不可欠な存在である。

 それでも、縛られる人生というものは楽しいのだろうか。

 ふと、そんな疑問が頭をよぎった。


 欠伸を一つ挟みながら歩き続けると、そわそわと辺りを気にしながや少女が一人佇んでいた。


「あれ、桜羽さんがなんでこんなところにいるんだ? 」


 新校舎に用があるなら入ればいいだろうに。

 人気者の彼女--桜羽杏(さくらばあんず)は、なにやら小型端末で誰かとお話中らしい。

 男女構わず慕われており、教師からも一目おかれているムードメーカー的存在。

 愛くるしい青色の瞳が彼女を輝かせ、サイドテールでまとめられた茶髪は、可愛いさを引き立てている。

そんな少女が辺りをキョロキョロと辺りを見渡している。

 その様子は挙動不審であり、誰がみても怪しむことは間違いない。

 人間誰しも秘密を持っているのは周知の事実であろう。

 女装が趣味、露出に興奮を覚える、実は転生してます、なんて。そんなありきたりでも、あり得ない話でも。


「うん! ここなら大丈夫だよね」


 杏はホッとしたように胸を撫で下ろした。

 と、同時に気合いの入った表情に切り替わる。


「コウ君、敵は何処にいるの? 」

『校舎の屋上だよ! あそこに魔物(バグ)が現れたんだ! 』

「りょーかい! 急いで向かわなきゃね! 」


四角い端末を片手に、彼女は走り出す。


「アプリ展開! コウ君、変身しちゃうよ! 」

『おうよ! 今日も張り切って戦おうぜ! 』


 彼女の手にする端末からもスピーカーにしているのか、無駄に大きい声が辺りに拡散する。

 なんともまあ、元気なことだ。


「デバイス展開(リロード)、魔を討ち、悪を滅ぼします! 」


 彼女の半径1メートルが光に包まれる。誰が作ったのかもわからない音楽とともに、中では不思議な力によって装備が展開されているのだろう。

 フリフリなドレスを身に纏う可憐な少女の姿が想像できる。

 ちなみに、俺は清楚なメイド服が好みだ。

 あのロングスカートが女性を引き立てるのだ。何の知識もなくミニスカートで男に媚びうるメイドなど邪道だからな。

 そんな考えもつかの間、彼女は桃色の可愛らしい服へとメルヘンチェンジする。


 "変身"


 そう、桜羽杏は言った。

 その台詞(セリフ)を言うのは、この世界では一つの存在だけである。


「はぁ、あいつも魔法少女なのかよ」


また大きなため息を吐きながら、端末を取り出す。

若者らしく、フリックで素早く連絡先を探して電話をかける。


「……ん、もしもし、俺だ。急に悪いな。桜羽杏が魔法少女だったらしい。この後の始末はいつも通りでいいのか? 」


 いつもどおりの会話。顔色一つ変えずに、俺は依頼主へと報告する。


『うん、いつも通りに』

「コアの回収だけしとけばいいよな? 」

『それでいいよ』

「了解、終わったら飯作るから待っとけよな」

『楽しみに待ってる』

「ほいほい、ではまた後でな、リア」

幸人(ゆきと)も無理しないでね』


 ほんの数分の会話で電話を切る。

 が終わったことに満足した俺は、仕事を終わらせるべくまた端末を操作する。

 変身した杏は、数秒後に魔物バグが出たという屋上へと駆け上がっていったのだろう。

 まだ遠くには行っていないはずだから、探すのは容易だ。


「デバイス展開(リロード)、魔を討ち、悪を滅ぼそう」


 お決まりの呪文を唱え、光が一点に集中する。

 どんな技術で作られているかは知らんが、着心地の良いコスプレ衣装。

 俺には似合わないはずのフリフリなドレス。

 それらが身体に装着していく。

 おや、サイズが合わない?

 男の俺には似合わない?


 じゃあ、"女の子になろう"。

 身体が魔法少女として適正の肉質に変化する。

 肩幅は縮まり、髪質は柔らかく腰までストレートに伸ばしている。筋肉はぷにぷにの脂肪に変換されて、


「さて、と」


 ふわり、と地面に着地する。

 黒と白で構成された装備は、天使と悪魔をイメージさせる。


 一呼吸おいて、"私"は宣言した。


「魔法少女・ネメシス。殲滅を開始する」


 さあ、ここで語るとしよう。


 俺は、唯一無二の男性魔法少女である。


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