第2話:魔女のすすめ
「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」しかし天は平等に接してくれても人は平等に接してくれない。
現に今俺は困ってる。面倒くさいな。どうして困ってるかって?なら回想に入るとしよう。
俺たちはクランをつくるためにギルドに向かおうとした。すると爺さんが
「ギルドに行く前に魔女のところへ寄るといい。きっと手助けをしてくれるじゃろう。」
「魔女?まぁいても不思議ではないか…。それで魔女はどこにいるんだ?」
「この街を南門から出てそのまま、まっすぐ行った小屋に住んでおる。そこで魔法について教わるのがよかろう。それと、これを持っていけ。」
そう言って爺さんは綺麗な宝石を手渡してきた。
「これは?」
「お守りのようなものじゃよ。」
ふーんと思いながら、アニスには何もやらないのかとちょっと罪悪感を感じながら受け取った。そして街の外に出た。
「ねぇ…魔女に会うのが怖い?」
「ん?なんでだ…って震えてるが大丈夫か?」
「ええ⁉︎いやいや全然ビビってないよ⁉︎魔女とか全然怖くないしホントホント!」
先が思いやられるな。魔女ってそんな怖い人なのか?お兄さんもビビっちゃうよ。
「魔女ってどんな人なんだ?噂とか聞いたことあるか?」
「えっとね。まず人を喰べるらしい…。それにアメリシアにもローセラシアにも属さないで色んな国を滅ぼし回ってるとか…。それにそれに!もう何千年も生きてるらしいし、私の故郷ってここからそこそこ遠いんだけど…そんなところまで噂が流れてきてるんだからね!これは事実に間違いないよ!」
「ありきたりな噂だな。実際に会ってみたら印象とはまったく違う優しい人だった、みたいな感じになるよ。」
「ん〜…。その可能性もないことはないだろうけど…。でもじゃあなんでそんな噂が立つのかって話だよね。」
「まぁ、確かに。でも親切にしてくれた爺さんが会った方がいいって言うんだ。きっと会ってみる価値はある。」
そうだね。なんてアニスは呟いているがまだ納得しきれてはいないようだ。そんな話をしながら街の外に出た。
小屋って、あれか。意外と近いぞ。それに、なんかいるな。騎士のようなやからが三人ほど。小声で何か言っている。
「今日こそは魔女を…。」
「でもどうやって…。」
「殴り込みしかあるまい…。」
何て言ってるか聞き取れなかったがあんまりいい話はしてそうにないな。
そんなこんなで小屋に着いた。魔女なんていうからオドロオドロしいものを想像していたが、なんともないただの質素な小屋だ。
「こ、これは…。人を騙すために普通の小屋に住んでるんだ…。」
「ここまで来たんだ。腹くくろうぜ。もしホントに人を喰べるなら俺が守ってやるから。」
「ふぇ?愛の告白?ま、まだそんなにお互いのこと知らないから…友達からじゃ…。」
何言ってるんだこの娘。10歳近く年下の娘に告白なんてするわけないだろ。いや…しないこともないか?
「冗談言えるくらいの余裕はあるみたいだな。行くぞ。」
「あぁ待って〜!置いてかないで〜!」
そうして俺らは魔女の小屋に入った。
俺は喰べられた。
いやホントに。まぁ実際は魔女にじゃなくてでかい蛇にだが。
「うおおおおおお⁉︎ヤメテ!ヤメテ!オイシクナイカラ!」
「あああああ!やっぱり人喰べるんだあああああ!」
「あら?知らない人たちねぇ…。おやめなさい。」
女の声に反応してか蛇は俺を吐き出した。臭い。臭い。しかしホントに人喰べるのかよ。噂通りじゃないか。
「誰かしらあなたたち?あなたたちもあいつらの仲間かしら?だったら…。」
「待って!待って!あいつらって知らないし、私たちお爺さんから紹介されて来ただけだよ!だから喰べないでぇ…。」
ほぼ半泣きでアニスは訴えている。いやホントにもうあんな体験はしたくないな。
「お爺さん?あぁニーヴスのことかしらね。でも証拠がないと信用はできないわねぇ。」
「これをあの爺さんから貰ったが、証拠になるか?」
ああこれ、と言って女は宝石を受け取り、飲み込んだ。ええ?もうこの人ヤダ。怖いを通りこして唖然とするしかないよ。
「ふぅ。やっぱり魔法の源は美味しいわねぇ。それで?何の用でここにきたのかしら。」
「爺さんから魔法について教わってこいと。俺は異世界人なんだ。教えてくれないか?」
「ふーん…異世界人ねぇ…。イヤよ。何で私が男に教えてあげなくちゃならないの。そっちの女の子には手取り足取り教えてあげてもいいけど。…どうしてもっていうならちょっと手伝いなさいな。」
何という男女差別だ。そんなこんなで冒頭に戻るわけだ。しかし手伝いってなんだ?戦うのは無理なんだが。
「ちょっと最近街の警備隊のやからがねぇ…。家にちょっかい出してきてて。撃退してくれたら色々教えてあげるわ。」
「あぁさっき街の外で見かけたやつらかもな。…戦う必要はないな?理性がない相手ではないよな。」
「さぁ?まぁ人間だし話合いで解決できるならそうすればいいわ。」
ようやく俺の本領発揮できる機会がやってきたな。よし、
「アニス、そこの魔女から警備隊たちとなぜちょっかいを出されてるか聞いてくれ。俺が聞いても答えてくれそうにないしな。」
「りょーかい!あ、あと名前、シラアイって言うみたいだよ。」
そんな情報はいらないが。まぁいい情報があればこっちのもんだ。さぁこい。俺の、異世界初の交渉いこうじゃないか。
のってくれればの話なんだけどね。