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第1話:夢の如く出現した非現実

 燃え上がった26年、火花は火花を産んで、線香花火のように消えた。


 いや別に燃え上がった人生なんて送ったつもりはないけどね。


 街の駅に着くなり爺さんは何を気にするともなく歩いて行く。俺もあとを追うようについていった。さっきの女の子もついてきてるようだ。


 しかし、だ。何で俺が異世界転移を?何て考える前に色々考えなきゃいけないことがある。まず、とりあえずは現状を受け入れること。そしてさっさと帰る方法を見つけること。そしてここで生きていくために金を手に入れること。つまり仕事を探さなくちゃな。他にも色々疑問はある。何で言葉が通じるのか、世界観が現世で見聞きした通りなことだとか。でもとりあえず今を受け入れなきゃだよなぁ。


「お〜い!聞こえてるかな〜!」


 いつの間にか先ほど女の子が隣を歩いている。よくよく見るとなかなか可愛らしい娘じゃないか。身体は成熟の終わり頃といった風で、顔付きはまだ幼さを感じる。


「あぁごめん。ちょっと考えごとを。それで何かな?申し訳ないけどまったく聞いてなかったんだ。」


 と目と口を同時に上げて笑う。すると彼女はげんなりした顔をして


「ようやく反応してくれた…。嫌われたかと思ってちょっとショック受けちゃったよ…。ってえっと。自己紹介しとこうかなって。」


 なるほどねぇ。自己紹介か。まぁ当たり前だよな。いかに俺が異世界からきたって言っても見ず知らずの男とともに行動するなら少しでも情報がほしいだろうな。


「ああなるほどね。自己紹介は大事だ。お互いを簡潔に、でもより深く知れる唯一の方法だからね。じゃあ俺から。名前は神田渉。歳は26で、特技はそうだな、お喋りとかかな。何で異世界に来たか分からないけどとりあえずよろしく。」

「うん!よろしく!えっと、私の名前はマスハナ・アニス。歳は17で特技は…うーん場を盛り上げたりすること?この街に来た理由はクランに入って一獲千金を目指すため!といってもただ村から出たかっただけなんだけどね。」


 といって彼女は口が先に動きそれに続くように目が笑う笑い方をした。さっきからいちいち笑う仕草にうるさいって?気にするな。


 そんなやりとりをしているといつの間にかどんよりとした雰囲気の裏通りに来ていた。爺さんは一軒の家に入っていく。えっとこれ勝手に入っていいのかな?いいよな?ついてこいって言ってたもんな。よし。そして先に彼女を入れ続くように家に入った。


 内装はいかにも学者のようなものだった。あちらこちらに書類やらなんやらが落ちている。まったく掃除くらいすればいいのに。爺さんは椅子を人数分用意しテーブルに地図のようなものを広げた。


「まずはこの世界について説明しよう…。」


 爺さんの話があまりにも長いので割愛させてもらう。だって無駄なことばっか喋るんだもん。しょうがないね。


 簡潔にまとめるとこうだ。


 異世界から一人、一年周期でこの世界にやってくるらしい。やってくる方法は分かってないらしいが、総じて長いトンネルをくぐった汽車の中で発見されてるらしい。だから汽車の中で当たり前のように俺を異世界人って認めたのか。ああそれとやっぱり異世界人は珍しいみたいだ。


 そしてこの世界は大きく三つの大国に分かれているらしい。一つは「アメリシア」もう一つは「ローセラシア」

 そして「キリシタニア」この国はちょっと変わってて、宗教国家ってやつだそうだ。どの国の名前もどこか聞き覚えのある名前だが…気にしたら負け…か。


「アメリシア」と「ローセラシア」は戦争状態だそうだ。まぁどちらかといえば冷戦状態に近いか。国と国の全面戦争はないものの、あちこちの小さな国や村では小競り合いが起こったり、略奪が起きたりしているらしい。


 そして今いるのが「アメリシア」の「ブリタージュ」という国だそうだ。規模はそこまで大きくないものの、国境付近ということでなかなか重要な国らしい。


 ざっとこんなところか。とりあえず聞きたいことを聞くことに。


「さっきクランって単語を聞いたんだが、クランとはなんだ?」

「クランってのはね。大陸の各地にあるギルドってとこで結成する組織だよ。ギルドが提供してくれる依頼をこなしてお金を貰うんだ。」


 彼女は得意そうに語ってくれた。この娘の表情は見てて飽きないな。ギルドってのはまぁ大体の想像はつくな。しかし、少し疑問があるな。


「依頼ってのは何をするんだ?魔獣なんかを狩ったりするのか?」

「魔獣?そんなのはいないけど。そうだなぁ国や村を荒らす盗賊や国に攻めてくる敵を討伐したりするものかな。もちろんもっと簡単なのもあるよ。」


 これまた得意げに語ってくれた。いや、ちょっと待て。盗賊や敵を…"討伐"?それってつまり…


「人を…殺すのか?」

「まぁそうなるかな〜。」


 狂ってる。なんでこんな少女が人を殺すことに疑問を感じていないんだ⁉︎


「おいおい。人を殺すことに躊躇いはないのか?」


 できるだけ感情を表さず聞いてみた。


「敵、だしね。それに向こうも私を殺そうとしてくるんだから、こっちも殺す勢いでいかないとね。」


 確かにごもっともだ。正論だ。戦争は覚悟がないやつがやっていいもんじゃない。けどそれはこんな年端もいかない女の子が戦争をやっていい理由にはなってないだろ。


「よし決めた。俺とクランをつくろう。そして、できるだけ平和的に依頼を解決して、金を稼ぐ。これでどうかな?」

「できるだけ平和にって?というかクランに入ってもいいの?異世界からきたばっかなのに…。」

「なぁに大丈夫だ。どのみちすぐには帰れそうにないしね。君に、言葉の強さってのを教えてやろう。」

「えっと。よろしくお願いします?まぁ、なんか成り行きだけどなんとかなるよね。うんうん。異世界人さんとお仕事かぁ。やっぱりワクワクしちゃうな。あ、あと私のことはアニスって呼んで!君、なんてなんか距離おかれてるみたいでイヤだから。」

「じゃあ俺のこともワタルと呼ぶといい。まぁ君…アニスの場合は最初から距離が近い話し方だからあまり気にすることはないか。成り行き…か。」


 あぁ…。成り行きか。成り行きだな。ホントにこれから大丈夫か?まぁでもせめてこの娘だけでも守り抜こう。せっかく異世界にきたけどチートな能力は一切貰ってないみたいだし、この世界で交渉人≪ネゴシエーター≫として、乗り切ってやる!






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