プロローグ:異国
長いトンネルを抜けると異世界であった。
なんだこれ?俺に何が起きてる?落ち着け、落ち着け。よし頭の中を整理しよう。
まず仕事の帰りだったはずだ。いつものように朝帰り。9時半くらいに電車に乗ったんだったな。そしてうつらうつらとしてるとトンネルに入ったんだ。そしてトンネルを抜けるて窓から入る光に驚いて起きたんだったな。
窓から見える景色は今までいた世界とはまるで違う。あたりは草原で埋め尽くされ、遠くに中世ヨーロッパのような建物が並ぶ街が見えるな。
「これが最近噂の異世界転移ってやつか?」
きっと夢かなんかだろう。うん。
電車に乗っていたはずの乗客はいつの間にか消えている。代わりに現代の日本人とは思えない格好の人間が乗っている。今気づいたが、電車も汽車に変わってるな。
「おにいさん、どこから来たの?今異世界がどうたら言ってたけど。もしかして噂の異世界転移者ってやつ⁉︎だったらワクワクしちゃうなぁ。」
えへへとハニカミながら女の子が話かけてきた。いやぁこれが夢でもJKくらいの女の子に話かけられるのは気分がいいな。
「そうだな。俺は異世界からきたんだよ。だから魔王倒して世界でも救っちゃおうかな。」
まぁ夢だし、JKと世界救うのも悪くないだろ。異世界転移なんかする夢なんだからチートな能力も手に入れてるだろうし。
「えっと?魔王を倒すって?こっちから話かけといてなんだけど理解が追いついてないな〜…。」
彼女は困った顔をしてこっちを見ている。おや?おやおやおや?これはマズイ。夢の中の反応じゃないぞこれ。さっきから不思議には思ってたんだ。夢にしてはハッキリしすぎてるし、感覚もしっかりある。それにこんなリアルな反応されたら、これ、夢じゃないみたいじゃないか。
「ちょ、ちょっと待って。これって夢?」
「んん?夢じゃないと思うけど?なんかおにいさん変だよ?魔王倒すなんて言ったり、夢とか言ったり。」
彼女は心配そうな顔でこちらを見ている。あれ?もしかして俺、ホントに異世界転移しちゃった?ヤバいって。まだ現世に未練タラタラだよ俺!それに俺は異世界に行くような人間じゃないって!現世には結婚間近の彼女もいるし、仕事だって順調。いじめられたことなんて一度もない!
「お主、あの街に着いたらわしに着いて来なさい。そこのお嬢さんは、興味があるなら着いてくるがよかろう。」
といつの間にか近くに座っている爺さんが話かけてきた。爺さんに着いてけば何かわかるのか?というかこの娘も巻き込むのか?彼女はこっちを向いて気まずそうに微笑んでいる。この娘表情のレパートリー豊富だな。なんて思いつつ微笑み返すことしかできなかった。