The Giving Tree おおきな木 7
7.
芽衣子との爛れた生活はそう長くは続かなかった。
人間というものは、夜の生活だけで生きてはいけないからだ。
夜の蝶としては最高だが、芽衣子は主婦としてはあまり
よろしくなかった。
仕事をしているのだから仕方のない面もあるのだが、如何せん
元々料理を作ったり、まめに洗濯するような人間ではなく、少しぐらい
汚れてたって死にゃあしない、という考えの持ち主なので生活全般
推して知るべしだった。また芽衣子のほうも一人暮らしならそれほど労力を
要せずとも部屋も散らからず暮らせていたわけで、何もしない木村は
ある意味お荷物だったかもしれない。一人なら回せていた生活が二人に
なると、だんだん息苦しい物になっていったのだ。
その為、労力を惜しまず作り出された居心地の良い生活環境を妻から
与えられ、ちゃんとした生活を送ってきた木下には芽衣子との雑な暮らしは
耐えがたくなっていった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
別れ話をすると、芽衣子はキチガイのように切れた。
汚い言葉でさんざん暴言を吐き、俺のことを貶めた。
最後は別れてやるから慰謝料寄越せとまで言ってきた。
今まで妻や子らには一円も渡さず散々芽衣子には金をつぎ込んでる。
「慰謝料を払わないといけないのは、お前のほうなんだよこのタコ。
俺の妻から逆に慰謝料お前に請求できンだよっ。
お前に散々この半年間つぎ込んでるこっちのほうが返金請求
したいくらいだ。
その腐った頭どうにかしやがれっ! 」
芽衣子が側にあったガムテープを俺の顔目掛けて投げつけてきた。
最悪だ・・俺の額に直撃した。
俺は芽衣子に脚を掛け、倒れた彼女の上に跨り、平手で往復ビンタした。
流石に芽衣子は、ひっ・・と言ったきり黙り込んだ。
「お前のような全てにだらしのない女と結婚する男なんているかよ。
せいぜい遊びの男でも相手してろって! 」
思いの限りの悪態をついて、俺は芽衣子の家を飛び出た。




