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主人育成日記  作者: 不思議ちゃん
基礎の基礎から固めないとな!
7/27

1ー6

…そろそろ、矛盾とか出てくると思うけれど、出来ればわかったら教えて欲しいです

でわでわ、物語スタート!

 国に入ってから40分ほどで冒険者ギルドに着いた。

 本来は10分もあれば着くはずでたいした距離はないとロアールは言っていた。だが、時間がかかったのには理由がある。

 先程の衛兵で思っていた通り、ここに住んでいる人のほとんどがロアールのことを知っており、会う人会う人にあいさつされ、年寄りからはリンゴを貰ったりとしていたからだ。

 貰ったそれは迷宮の中でまれに出るといわれるアイテムらしいカバンにいれていく。簡単にいうとアイテムボックスだ。

 そしてギルドに入ると、すごかった。

 なんと、お酒を飲んでいないのだ! あの、いかにも昼間からお酒を飲みそうな顔をしているおっさんも。むしろ真面目に攻略の話をしている雰囲気だった・・・よ。

 過去形なのはロアールの周りに集まっているからだ。

 俺? 当然わきにどけられたよ。

 それにしても色々と話しかけられているのにいつもの無表情で立っているだけ。もう少し愛想よくしてもいいと思うのだけれど。可愛い顔をしているのにもったいない。まあ、無表情も無表情でロアールの性格と相まっているからそのままでのいいけれど。

 そんなことよりも早く登録をしたい。

 そんな俺の思いが通じたのか、ロアールが俺のほうにやってくる。当然、ロアールを囲んでいた人たちからの視線もついてきた。


「先に登録」


 受付らしきところへ歩いていくロアールのあとを着いていく。

 対応した受付の子は二十代前半ぐらいで、綺麗、よりは可愛い部類に入る女性だった。ロアールを前にして見るからに緊張している。他にも受付は二つあるが、そこにいる子達は残念そうにしながらもどこかホッとしている。


「優の冒険者登録をしたい。推薦は私」


 推薦人がロアール自信だと言った瞬間、ギルド内がざわつき始める。受付の子も隠しもしないで驚いた表情をしている。


「紙とペン、貸してくれる?」

「は、はい」


 固まっていた受付の子が慌てて台の下から紙と羽ペンを取り出し、ロアールに手渡す。


「名前」

「三原優」

「年」

「十五歳以上」

「一応聞くけど、種族は」

「人間だよ」

「魔力はどれくらいあるか分かる?」

「さあ? どうだろうねぇ」


 聞かれたのは全部で四つだった。文字が書けないので代筆してくれたのはありがたい。

 この世界も魔力量を量るものがあったのか。いや、科学の発達していないこの世界だったら水晶に魔力を流して色で判断する……とか? ありそうだな。


「これでお願い」


 銀貨一枚と一緒に紙を渡して羽ペンを受付の子に返す。


「あ、……えっと、少々お待ちください」


 受付の子はそう言って奥へと行ってしまった。


「どれくらい待っていればいいの?」

「5分とか……10分くらい?」


 暇だな。……なにか時間をつぶせるもの。

 ――見っけ。

 と言っても遠くからこっちを見ている冒険者にケンカをふっかけるわけではなく、依頼とかを貼るための掲示板を見つけただけである。ロアールに呼んでもらって必要最低限だけ憶えとけば問題ないと思うし。


「ねぇ、ロアール」

「どうしたの?」

「ちょっとさ、あの掲示板に貼ってある依頼、読んでくれる? 必要最低限の文字は憶えようと思うから」

「ん。分かった」


 ロアールと一緒に掲示板まで行こうと思っていたが、そうはならなかった。

 なぜなら──。


「ロアールさんの推薦で冒険者登録をした三原優ってやつはいるか?」


 ──顔に傷跡を残した、筋肉ムキムキのおっさんに呼ばれたからだ。

 そばにはさっき奥に行った受付の子もいる。


「俺のことだけど?」


 たぶん、ギルドマスターだと思われるけど……。そんなすごい人(?)にまで『さん』をつけて呼ばれるって……。ロアールさん、まじリスペクト。


「優、私のことは呼び捨て」

「ん? なんのこと?」

「……なんでもない」


 …………………………。

 アレ? いま、俺は声に出して言っていたかな? そんなヘマはやらかさないのに。

 女の人はたまに心まで読んでくるから恐ろしいよね。男が尻にしかれるわけだよ。

 ロアールも深くは聞いてこないようだ。


「それにしても、ロアールさんが初めて推薦する人はどんなすごい奴かと思ったらまだ子供じゃないか。ロアールさんには悪いけれど、実力がないと簡単に死ぬぞ?」


 子供。そういわれるのにはもう慣れた。背が低い上に童顔だから今までもよくあったから。

 だけど今の言い方はすこしイラッときた。

 それは──。


「今の言い方だとお前はロアールさんの信頼を裏切る、ということになると思うぞ? 実力でトップレベルにまできたうえに、この国を救ったこともあるロアールがそんなことをするとでも思っているのか? お前のほうこそ見た目で実力を判断するなら近いうちに死ぬぞ?」


 ──見た目的にロアールとそんなに変わらないじゃないか!

 そりゃね、それなりの交流があり、実力も分かっているロアールと何も情報がない俺とじゃあ扱いが変わってくるのは納得できないこともない。けれど、その交流があるロアールのことを信じてないのは納得できない。

 俺は人を信じない奴は嫌いだ。

 ……ま、時と場合によるが。

 それはまあ置いておいて。


「…………」


 蔑んだ目を向けながら言うと、おっさんは黙ってしまった。

 ……先程の衛兵よりはだいぶマシだな。話が通じるだけ。


「大丈夫」


 静かだな、と思っていたロアールがフォローしてくれるようだ。

 ……目が合ったが、その目は貸し一つと訴えていた。

 ちくしょう、これでまた増えてしまった。


「実力はちゃんとある」

「ろ、ロアールさんがそういうのだったら……」


 そこで大きな音をたてて誰かが入ってきた。


「貴様! やっと見つけたぞ!」


 外壁にいたあのうざったく、二度と関わりたくない。むしろ顔も見たくないほど嫌いな衛兵がいた。


「五月蝿いぞ。もう少し静かに出来んのか」

「だけどマスター! そいつはあろうことかロアールさんにアイアンクローをしたのですよ!」


 衛兵に集まっていた視線が今度は俺に集まる。中には殺気を抑えずに俺にぶつけてくる奴もいる。というかほぼ全員。いま、このギルド内にはピリピリと緊迫した空気が場を支配している。


「…………」

「…………」


 みんなは俺がどう動くかを見るようだ。

 ただ、こんな場になっているのにも関わらず、ロアールはいつもと変わらない。とだけ言っておく。

 さて、いつまでもこのままじゃ埒があかない。

 ってか、たかがアイアンクローだろうに。


「なあ、おっさん」

「……なんだ」

「早くギルドカード、作ってくれない? もし出来ているなら早く渡してよ」


 手のひらを上に向けておっさんに差し出す。

 ギルド内の緊迫した空気の密度が上がった気がする。


「あ、ああ。もう出来ている。これがそうだ」


 おっさんが、おそらくミスリルで作ったと思われるポイントカードなんかと同じ大きさのカードを俺に手渡そうとした瞬間。場が動いた。

 ──いや、動こうとした。

 このギルド内にいたほぼ全員の冒険者が、俺に切りかからんと様々な武器を構えていた。そして、俺がおっさんからカードを受け取る際に出来る隙を突こうと考えていたらしいがそれが叶うことはなかった。

 俺は何もしていない。

 たとえ何もしていなくてもあれぐらい避けることが出来る自信があるからだ。

 ならば他には一人しかいない。


「私の友達を傷つけようとするのは誰であろうと許さない」


 いつものように無表情だが、短い時間を過ごした俺でも分かるほどにロアールは怒っている。そのロアールのことを俺よりも長く接してきて知っている人ならなおさらよく分かることだろう。そしてその当人に怒りをぶつけられているのだから。

 俺とロアール。そして受付の子達とおっさんを除く全員が腰まで凍りに覆われていた。その冒険者たちは氷からくる寒さからか、ロアールが怒っているからか。……おそらく後者だが、顔を青くして震えていた。


「おっさん、手離して」

「……あ、ああ」


 その光景を見たおっさんは固まり、ギルドカードを掴んだまま離さないでいた。俺が声をかけてようやく反応する。


「ありがとね、ロアール」

「ん」


 お礼を言いながら頭を撫でると、少しは落ち着いたようだ。


「さて、これからどこに行こうかね」

「お腹空いた」

「そっか、それじゃあどこか食べるところに案内してよ」

「貸し一つ」

「……ほんと、抜け目というか容赦ないよね。まあ、いいけどさ」

「これで六つになった」


 ああ、先程のアイコンタクトの意味はちゃんと合っていたのね。カウントされていますよ、ええ。


「それじゃあ行こうか」


 案内するためにロアールがまた先を歩く。

 俺はギルドを出る前に一度振り返る。当然、ロアールはギルドから出て先を歩いている。


「いつまでもそのままじゃ可哀想だから。その氷は消しといてあげるよ」


 気がついたら腰まで覆っていた氷が消えていて戸惑っている冒険者に向けて最後に一言残していく。


「これに懲りたら二度と面倒なことはしないでね? 俺は今回、手を出せなかった──なんてことはないから。出さなかったが正しいからね」


 そこで一拍開けて続ける。


「手を出す必要がないから」


 氷から開放され、腰を抜かして座り込んでいる人もいたけれど、気にせずにギルドから外に出て、だいぶ離れてしまったと思っていたロアールの背中を探そうとしたが、出てすぐのところに立っていた。


「ごめんね、待たせて」

「気にしてない」


 それだけ言うと俺に背を向け歩いていく。今度は離れないようにとロアールの隣に並んで歩く。


「そういえば、ギルドの説明とか聞いてない」

「それなら食べながら教えてあげる」


 優しいな。今回は貸し一つとは言ってこない。


「…………」

「ん? どうしたの?」


 チラチラと何かを言いたそうに俺を見てくる。


「さっき、勝手に友達って……」

「ああ、俺はもうロアールと友達だと思っていたけど?」

「あ、ありがとう」


 チラチラと俺を見ているときは不安だったが、今は安心したような雰囲気でいる。

 昔から人の気持ちをくみとるのが得意だった。

 だからまだ、少しの時間しか一緒に過ごしていないとしても、ロアールの考えていることがなんとなくは分かるようになっている。


「友達。……友達かぁ……えへへ」


 お、少しだがロアールが笑った。元も可愛いけれど笑ったときはもっと可愛いと思う。それは滅多に見られないレアなものならなおさらだ。……もしかしたら、俺といるときだけこんなに感情を表に出してくれているのかも、と思ってしまうがそれは自意識過剰だと思っている。


「着いた」


 ロアールの笑顔を考えていたら着いたようだ。先ほどからギャップがすごいと思うんだが、それはそれでロアールの魅力で収めていいだろう。

 案内されたのはテラスもあって落ち着いた雰囲気のお店だ。

 せっかくなのでテラスにある席につき、注文はロアールに任せて少し周りを見回してみる。


「いいところでしょ?」

「うん」


 返事をしながら広い道を行きかう人たちからロアールに視線を戻すと、注文を取り終えた店の子がたぶん厨房に伝えに行くのが見えた。何を頼んだのか楽しみだ。


「それじゃ、まずは何から聞いていこうかな」


 知りたいことはたくさんある。むしろたくさんありすぎる。


「それじゃあ、まずは模擬戦のときまで遡るけど。俺たちのチームは敵を一人も倒してないけれど二位だったのはどうして?」


 実は模擬戦が終わって順位を聞いたときは俺も驚いて、不思議だった。


「それを説明する前に、ルールは憶えている?」

「んーと、そういうのは興味ないから忘れているけど、簡単でいいなら、敵チームを倒すとポイントみたいなのがもらえる。だからみんなは一生懸命に敵チームを探して倒していく。後は倒されるのが遅ければ……んーっと、最後のほうまで生き残っていればその分、生き残りボーナスポイント? みたいなのが高くなっていく。……だよね?」

「たぶん、優の考えていることで合っていると思う」


 やっぱり、考えていることを口に出して相手に伝えるのは難しい。

 ようは。

 一つ、敵を倒すとポイントがもらえる。

 二つ、最初にやられたチームと最後まで生きていたチームとでは生き残りポイントが違う。

 例えて言うならば、敵を一チーム倒したとする。そして入るポイントが一人につき一ポイントだとして、三ポイント。だとする。そして次の敵チームと遭遇して負けて講堂に戻される。そのときに、戻された……ようは負けたのが三番目だとする。最終的なポイントは敵を倒して手に入れた三ポイントに三番目に負けたから三ポイント又は下に二チームあるから二ポイント入って合計五、もしくは六ポイント。になる。……もしかしたら、下にいるチームではなく、人の数だったらまた違うかもしれない、今回はあくまで一ポイントとして計算したが、チームによって手に入るポイントが違うかもしれない。後はその倒した敵チームの持っていたポイントまで加算される仕組み、とか。そう考えると最後まで隠れていて一発逆転が出来るけど、ロアール相手じゃ無理だな。

 ……あ、なんかこうやって纏めてみてなぜ二位になれたのか分かった気がした。


「もしかして、あのとき俺たちのところにくるまでにロアールたちのチームが他のチームを全部倒したからとか?」

「そう」


 結構簡単に頷いてくれるな。

 なかなか出来ないと思うけど……。

 ……そういえば、あの双子の子たちや先生もいたよね?

 ……ま、どうでもいいか。


「それじゃ次の質問かな。今度はギルドについてとこのカードについてだね。だけどその前にロアールが頼んでくれたものができたみたいだよ」


 向こうからトレイに料理を載せて運んでくる子が見える。

 その子は予想通り、俺たちのテーブルまで来て料理を置いていく。


「追加でご注文があればまた呼んで下さい~」


 そう言って去っていった。

 テーブルの上にはチョコレートケーキにパフェ、いい香りのする紅茶がそれぞれ二つずつある。


「へ~、この世界にもケーキとパフェがある──」

「この世界?」


 俺の言葉に被せるようにしてロアールが聞いてくる。


「いま、優はこの世界にもって言った。……優は一体何者?」


 俺が異世界出身だってノールとエフィーにしか言ってなかったな……。

 別に隠していることでもないし、いいか。


「俺はこの世界の住人ではないよ。この格好を見てもらえれば分かると思うけど」


 やっぱり、ノールとエフィーのときもそうだったけど俺が自分で格好について説明して相手がようやく気づくようだ。ロアールも少し驚いた顔をしているし。

 周りがチラチラとこちらを見ているのはこの服でなく、ロアールがいるからだろう。だけど話しかけてこないのは、俺が一緒にいるから、邪魔してはいけないと配慮してくれているからだと思っている。だから時折、睨んでくる人がいるなんて知らない。知らないったら知らない。


「俺は違う世界からノールに呼ばれて来たね。まあ、寝ているときに魔法陣で召喚されたから半ば無理矢理感はあるけれど」

「そう……」

「まあ、そんなに気にしなくても大丈夫だよ。こっちの世界、楽しいからね。それよりも、ケーキとパフェがあることに驚きだよ」

「それは昔にも優と同じように使い魔として召喚された人がいて、その人が作り方を教えてくれたからよ」


 少し難しい顔をしていたロアールも俺の話に乗ってくれるようだ。


「へ~。俺以外にも呼ばれた人が昔にいたのか……どんな人なの?」

「その人も優と似たような黒い服を着ていて……本によると黒くて長い髪で女顔の男だって書いてあったわ」


 ……………………。


「……その人が来たのはどれくらい前で、名前とか分かる?」

「確か……五百年前ぐらいだったかな? 名前は……クロだったはずだけど……どうしたの?」

「ああいや、気にしないで」


 俺の予想が当たっていた。というよりは忘れていたことをついさっき思い出したほうが正しいか。

 ──俺は前に一度、同じように使い魔としてこの世界に召喚されている。

 街並み……国並み? が変わっていたから確証はなかった。この世界を周っていればいずれ会うことになるだろうし、今はいいか。


「うん、ギルドとカードについても分かったからいいや。あと、この世界、迷宮あるよね?」

「……うん、あるけど……今から行く気?」

「今から行っても一つクリアして帰ることできるけど、ゆっくりしたいからまた今度かな」


 俺はあくびを漏らしながらそう答える。

ついに明日から期末テストが始まっちゃうんですよね…

また2日後に載せると思うけれど……載せられていなかったら、まあ、色々あったんです。

ってことでまた次回〜

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