1ー3
いやー…異世界ヤンデレ物語の執筆がぁ…
あまりよろしくない状況ですなぁ
やらなきゃいけないことが多すぎて…
まあ、気にせず物語スタート!
「さて、二人とも落ち着いたかな?」
袖で涙を拭く。二人とも少しだけ目が腫れているが触れないでおこう。
「今日はここまでにして、少し俺について話をしようか」
首をかしげているけど、まあ、問題はないだろう。
「俺はこの世界の住民じゃない」
「「…………」」
固まっちゃった。声は聞こえていると思うからこのまま続けることにする。それにしても、今までこの服装に違和感を持たなかったのかな? 『言われてみればそうだ!』みたいな顔をしているし。
「俺がこの世界の住民じゃないのは服装を見てもらえば分かると思うよ。というか、この服装で違和感が無かったのかな?」
俺は現代ではよく見かける程、普通の服装。ノールやエフィー、他の生徒や先生たちは……なんて言うのか分からない。こう……一昔前にありそうな服装だった。
しょうがないと思う! 歴史とか好きじゃなかったから! そこはほっといて!
昨日見て分かったことだが、男子生徒は似たようなので例えると、高校の制服でよくあるシャツに、下のズボンは絹で出来ている。マントはコートみたいで、色は青や紺、緑などがあった。女子生徒は男子生徒と似たようなシャツに、スカートは男子のズボンと同じ絹で出来ていて膝上まで上げている子がいれば、膝下の子もいる。マントは羽織るタイプで、胸の前でとめている。マントの色も男子生徒と同じだった。どちらも左胸のあたりにこの学校。または、この国のエンブレムがついている感じだった。最後のエンブレムはあくまで推測だが。
簡単に言うと、俺の服装はこの世界で浮いている。そう、それだけだ。
「そういえば、優って変な格好しているわね」
「俺から見たらノールたちが変な格好をしていると思うけど。今は置いておくとして、さっきの話の続きをしようか」
先ほどからずっとエフィーから催促の眼を向けられていて、そろそろ精神的にきついところだった。
「この世界では、魔法はあたりまえにあるだろ? 俺がいた世界でも魔法はあったし、超能力者とか他にも色々といたよ。というか、ほとんどがそっちの部類だったし。だから魔法関係の本も沢山あるわけ。だから魔法の使えない俺も魔法について知っていたってこと」
簡単にまとめて説明したが、二人にはうまく伝わったようだ。
──嘘だけど。
全部が嘘ってわけでもないけどね。
説明を終えたから、練習に入ろうと二人をはたいて戻ってきてもらう。
「「いたっ」」
「説明も終わったし、魔法を使えるようにする練習を続けるぞ」
頭を押さえている二人の前に立つ。
「あれ? さっきここまでって言って──」
「気が変わったからつづけることにしたよ」
なにか文句がありげな二人だったが。
「二人とも強くなりたいでしょ?」
この言葉を聞いて真面目な顔になる。いい子たちだ。
「さっき魔法に大事なのは想像力が大事だって言ったのは憶えているよね? それは女の子のパンツでも考えながら魔法を使おうと思っても発動しないってことだよね」
「なんとなく言いたいことは分かるけど、内容が最悪ね」
隣でエフィーも首を縦に振っている。でもさっきのたとえ話、出来る人は出来ることは言わないでおこう。
「あくまでたとえ話だよ。ちなみに今の理屈だと無詠唱呪文は誰にでも出来るってことだね」
「「──は?」」
俺のサラッとした発言に固まる二人。何回目だろうね。時間はそんなに無いっていうのに。また、頭をはたいて戻ってこさせようかと思ったが、今回はすぐに戻ってきた。どこからと聞かれれば…………夢の世界から? それにしても、女の子が、は? と言うのは酷いと思いました。まる。
なんてくだらないことを考えていたら、目の前にノールとエフィーがいた。
「説明して優!」
「ど、どういうことですか優さん!」
「え……えっと、何?」
俺は、二人がこんなにも真剣な表情をしているのを初めて見た。たぶん。
「何じゃなくて、無詠唱呪文のことよ!?」
「そ、そうです! この学院でも先生で二人、生徒でも四人しかできないことですよ!?」
「先生より、生徒のほうが多いね」
「……高等部一年で二人、二年で一人。中等部に一人よ」
「正直、そんな情報はいらないよね。興味ないことはすぐに忘れるタイプだから」
「じゃあ聞かなくても……じゃなくって、無詠唱呪文が誰でも使えるってどういうこと?」
別に俺から聞いたわけではないのだけれど……。
と考えながらも質問に答える。俺、えらい。
「どういうこともなにも、そういうことだよ!」
胸を張って答える。
「「お~……お?」」
胸を張って答えた俺に、二人は感心した声を出しながら手をたたこうとして首をかしげた。
やべ、面白い。
「結局はどういうこと?」
「何でもかんでも聞けば答えると思ったら大間違いだよ。自分で考えないと、たとえ魔法が使えるようになったとしてもうまくはなれないよ。いつまでも俺が教えられるとは限らないし、自分で工夫してみるっていうのも大事だからね」
微笑みながら答えると、二人は納得してくれたようだ。初めてだ。……初めてだよね?
「話がそれたけど、また魔法を使えるようになる練習でも始めようか。さっきと大体同じだけど」
二人をまた近くの石に座らせる。そこでふと疑問に思ったことがある。
「杖って無いと魔法って使えない?」
「あたりまえじゃない」
あたりまえでしたか。すいませんでした。と心の中で謝っとく。そういえば、思い返してみるとさっきも人差し指を立てた手と反対の手に杖持っていたな。
「また目を閉じて」
「なんで目を閉じるの?」
「さっき言わなかったっけ? そのほうが想像しやすいでしょ?」
納得してくれたようで、大人しくまた、目を閉じてくれる。
「また俺の言ったとおりにしてね」
さっきと同じように二人が目を閉じたまま頷いたのを確認する。
「こんどは頭の中に火の玉を想像したら、またどっちでもいいから片方の手のひらを胸の前で上に向けて」
しばらく待っていると二人とも想像出来たようで、右手に杖を持ちながら、左の手のひらを上に向けて胸の前に掲げる。
「今度は、自分の手のひらの上にその想像した火の玉が浮かんでいる想像をして」
難しいのか、二人とも肩と腕に力がはいっているように見える。あれだ、見たことあると思ったら厨二病の奴が右手で左手首を押さえて『俺の腕に封印された力が!』とか言っているあれに似ている。ロウソクの火と火の玉、どこに違いがあるのかな?
「二人とも、一回深呼吸でもして肩の力を抜いて。想像するだけだから」
少しだけ手助けをする。
すると深呼吸をして落ち着いたのか、二人とも肩から力が抜けて自然体でいる。
今度は五分だろうか。
それぐらいたった頃にようやく変化が起きた。二人の手のひらの上が陽炎のように揺らめいたかと思ったら直径十センチ程の火の玉が浮かんでいる。
「二人とも今の状態を維持したまま、目を開けて手のひらを見てごらん」
二人がゆっくりと目を開けて手のひらを見ると────泣いた。
目の端からポロポロと涙を零して。……そんなに嬉しいのか。……あ、俺に背を向けた。
「っう・・・・ひっ・・・・うう・・・・・・」
「・・・・・・・・」
ノールは小さいが声を漏らしながら、エフィーは声を殺して泣いていた。俺に背を向けているほど見られたくないのだろう。
当然、火の玉は消えているが第一段階は突破した。何段階あるかは知らないけど。本当に突破したかも分からないけど。まあ、先は長いようで短いし、短いようで長いようなものだし、焦らずにいこう。
しばらく泣いていたが、まだ背を向けているけど落ち着いたようだ。
「今日はここまでにしとこうか」
さすがにこれ以上は無理だと思う。二人も頷いてくれる。
「あ……でも、まだ模擬戦が終わってないです」
「そ、そうよ! 模擬戦が終わってないわ!」
まだ二人の声は涙声だった。……二人とも、模擬戦のこと忘れていたのか。
でも、そこまで集中できるのはいいことではある……けど、悪いことでもある。
でも今はいいほうの集中だ。
「大丈夫だと思うよ。たぶん」
二人は首をかしげている。……俺に背を向けたまま。
「もう少しでたぶん来るよ」
「来るって…………誰が?」
「誰って言われても名前知らないからね。なんとも言えないよ」
「…………」
「……っちょ、そんな目で見ないでよ! 俺が知らなくても当たり前だから!」
腫れた目で睨むようにして見てくる。でも、自己紹介もされてないのに知っているとか、魔法使いか超能力者だよ。
「ほ、ほら! 来たよ!」
タイミングよく? 俺たち以外の人“全員を倒した”強者が森から出てくる。
おお。やっぱり昨日、図書館みたいなところで寝ていた少女じゃないか。
「っ! ノール、エフィー! 伏せて!」
「「っえ?」」
俺の声に驚いて固まり、すぐに反応してくれないので二人の近くまでいき、足払いで転ばしてから俺も身を低くする。そしてすぐに頭の上を何かが過ぎていく。
「ずいぶんな挨拶だね」
もう少し遅かったらノールとエフィーは傷を負って模擬戦が終わっていただろう。別に終わらせてもよかったけど、傷が治ると分かっていて目の前で傷を負わせるほど俺は甘くない。
魔法を使ってきたのは赤い髪でショートヘアの少女だ。
「今のよくかわすことができたたわね。あなた何者?」
答える義務はないので黙って睨んでおく。相手は肩をすくめるだけだったが。
「二人とも、大丈夫?」
攻撃してくる様子はないが、一応、三人を警戒しながら、近くで横になっている二人に声をかける。
「……二人とも?」
返事がないので警戒しながらも三人から目を外し、二人を見てみる。
「……えー。それはないわー」
そのまま言うと、二人は気絶していた。救いなのかどうかは分からないが、白目とかむいてなくてよかった。たとえ、気絶している原因の一つに俺があったとしても。
「ん? ああ、ありがとう」
気がつくといつの間にか図書室で寝ていた緑色の髪をした少女が近くでパーカーを差し出していたのでお礼をいいながら受けとる。
「さて、二人も気絶しちゃっているし、終わりかな」
俺一人で二人の足手まといがいても勝てるけど、まだ目立ちたくないし。大人しくしていればまたさっきの講堂に戻るでしょ。
「聞きたいことがある」
「どうしたのって言いたいけど、まずは自己紹介からして欲しいかな」
「ロアール・フラスキー。ロアールって呼んで」
後ろにいる赤髪少女と金髪イケメンくんが驚いた表情をしたけど。なんで?
「たぶん知っていると思うのは自意識過剰だと思うけど、一応ね。俺の名前は三原優。優って呼んで。それで聞きたいことって?」
「この模擬戦の間、ずっとあなたたち三人の居場所が全然分からなかった。何かしたのは優でしょ?」
おおぅ。そのことか。
痛いところをついてくる。……どうでもいいけどこの子は長生きしそうだな。
え? 理由? なんとなく。
まあ、そう聞かれると思って考えておいてよかったよ。
「そうだね、それはこれのおかげかな?」
右ポケットからある物体を取り出してみせる。
一週間以内には載せられるよう頑張りますわ
ってことでまた次回〜
あ、これはまだしばらく毎日やから