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主人育成日記  作者: 不思議ちゃん
基礎の基礎から固めないとな!
3/27

1ー2

題名は、もともとこれを書いていた時につけていたものにしておこうかな……

ファンタジーだけだと、載せる人多いから数時間で簡単に後ろまで流れちゃうのね…

ま、気長に頑張りますか

 どれくらい寝ていたのだろうか、目が覚めたらちょうどノールが帰ってきたところだった。


「おはよ」

「まだ、眠そうだけど?」

「ん。眠い」


 目をこすりながら立ち上がり、伸びをする。


「夕食はどうだった?」

「おいしかったわよ。本当に優は食べなくてもいいの?」

「今日は問題ないよ。明日からは食べるけどね。この後、ノールはどうするの?」

「着替えて寝るわ」


 それを聞いて俺は部屋の外に出ようと扉のほうへ向かう。


「どこ行くの?」

「いや、着替えるのだったら部屋の外で待ってようかな~っと思って」


 ノールは首をかしげて、なんで?という表情をしていた。


「一応、俺って男だし……」

「ああ、そのこと」


 理解してくれたようで、もう一度部屋の外に出ようとしたら、また止められた。


「どこ行くの?」

「だから、部屋の外で待ってようと」

「使い魔に裸を見られてもなんとも思わないわよ。それに見た目は美少女だから気にならないし」

「そですか」


 俺は部屋を出るのをあきらめて、イスに座る。


「なにしているの?」

「イスに座ってぼーっとしてようかと」

「着替え手伝ってよ」


 タンスを指差しながら言ってくる。俺は納得していないが、使い魔であるため、命令には従う。というよりも、ノールと契約したときから俺は、できないこと以外はできるだけノールの命令に従おうと思っていた。それだけ、この世界に使い魔とはいえ、召喚してくれたことに感謝している。また・・、何か面白いことがあると信じて。

 タンスから服を出そうとして手が止まる。


「服ってどこにある?」

「上から順番にマント、シャツ、スカート、寝間着、一番下は靴下と下着よ」

「着替えって、もしかして……下着も?」

「あたりまえじゃない」


 バカを見るような目で見られた。俺はその視線から目を逸らし、タンスから寝間着と下着を取り出して、ノールに渡す。


「これでいい?」

「着せて?」

「それぐらい、自分でやって欲しいな」

「着せて?」


 先ほどと同じ声、同じ顔で言われて少し怖かった俺は、着替えを手伝うことにした。

 なぜ、ここまで着替えを手伝うのを嫌がるのかというと、俺が男でノールが女というのもあるが、ノールはアニメやラノベなどに出てきそうな銀髪美少女で、体つきも巨乳とまでいかないが、出るとこは出ていて、引っ込んでいるところは引っ込んでいる。

 ちなみに、俺の中で髪の一部分を三つ編みにしているのはポイント高い。

 何度でも言うが、見た目は女みたいでも中身はれっきとした思春期真只中の男である。

 ――という、いままでの全部嘘で、本当の理由はただ面倒なだけである。

 召喚される前にいた世界では、もっときわどいアプローチを受けていたため、正直女には慣れている。慣れているが、やっぱり気恥ずかしい。うん。恥ずかしいものは恥ずかしい。嘘だけどね。俺の怠け癖はだいぶ酷いもので、学校にも気が向いたときしか行かなかったから一ヶ月に一回行っていればいいほうだった。だから行くたび、先生は驚いて俺のことを見る。そして他の生徒たちからは珍獣みたいに遠くから見られるだけで誰も話しかけてこない。

 召喚される前にいた世界のことについて思い出してすこし鬱になりながらもノールの着替えを終えた。


「ありがと」

「はいはい。あ、そだ。色々とこの世界について聞いてもいい?」

「別にいいけど、眠いから少しだけになるわよ?」

「それで問題ないよ。キーになることしか聞かないから」

「キー……?」

「……なんでもないよ。それで聞きたいことって言うのは──」




「おやすみ。優」

「おやすみ。ノール」


 一時間ほどで聞きたいことが大体聞けた。簡単に説明すると、ほとんど変わっていなかった。

 それと重要な言語。翻訳をしてくれる魔法をかけられたが、万能ではないようだ。たまに通じないときがあるが、その境界線がはっきりとしない。でも、通じないと言ってもほとんど無いものだ。これも、前回・・と同じ・・・。あと、ノールの他にもこの世界について聞いといたほうがいいな。一人だと偏った知識になりがちだし。だいぶ時が経っているから違ってきていることもあるだろうし。

 ノールが眠るため、俺は部屋の明かりを消した。明かりと言ってもランプの火を消すだけだが。五分とたたずにノールから規則正しい寝息が聞こえてくるから寝つきはいいほうなのだろう。


「ノール?」


 声をかけてもなんの反応も無い。静かでおとなしく、とても可愛らしい。起きているときもこんなんだったらいいのに。


「っと、どうでもいいか」


 頭を振って考えていたことを追い出し、俺は音を立てないように部屋から出て、そして建物の外に出た。


「ん。ノールが言っていた建物はあれか」


 本があると言っていた二階建ての建物に向かって歩き始める。


あるじ


 今は夜。体感的に十時ごろであろうか。生徒のほとんどは部屋で寝ているだろう。所々、窓からランプの明かりが漏れている。だからいまここには優のほかに誰もいない。それなのにどこからか少年の声が聞こえてくる。しかし、俺の知っている声なので特に驚くこともない。


「どうした?」

『なぜ、あのような奴の使い魔となり、いまだこの世界にいるのですか?』

『そうだよ~。こんなところにいる必要はないよ~』


 また、どこからか新しい少女の声が聞こえる。


「ノールのことをあのような奴とか言うな。あと、簡単に言っているけど、俺にもできることとできないことぐらいあるからね? 異世界に行くとかすぐにできないから。簡単にできそうな奴に心当たりはあるけどね。あと、こんなところで姿を見せるな。誰かに見られているかもしれないだろう」


 俺の後ろに二人の少年と少女が膝をついて頭をたれていたが、それもすぐに闇に溶けるように消える。

 それからすぐに建物の前についた。

 扉に手をかけ、開けようとしたら……開いた。


「鍵とかかけないのかな?」


 鍵とかかかっていると思っていたから少し拍子抜けした。特に深く考えず建物の中に入る。

 中に入ると、壁一面に本がある。数はかるく万単位であるだろう。とりあえず、近くにあった本を手にとって見てみる。


「やっぱり読めないか。勉強してなかったもんな」


 本を元に戻し、中を軽く探検することにした。一ヶ所だけ開けた場所に六人がけのテーブルがあり、本が座って読めるスペースがあった。そこには、緑色の髪で腰のあたりまで伸びた髪をツインテールにしている少女が本を開いたままうつぶせになり、寝ていた。

 それを見てなぜ、ここの鍵が開いていたのかわかった。この少女が使っていたから開いていたのだろう。ま、誰でもわかるか。

 少女をよく観察してみると、背は俺と同じくらいか。やわらかい性格をしていそうで、そばにはハテナみたいな形をした杖が立てかけてある。それを見た俺は開いている本を少女から取り、閉じて横に置いてから着ていたパーカーを脱ぎ、眠っている少女にかけてやる。少し、身じろぎをしたが起きる様子はなかった。一度、頭を撫でてから部屋に戻り、イスに座って眠りにつく。




 次の日の朝。

 俺は硬く冷たい石の床に正座をしている。ちなみに、ノールはすでに着替えを終えて俺が眠っていたイスに座っている。


「で?」

「で? というのはどういった意――」

「知らないフリはいいの。昨日の夜はどこに行っていたのか聞いているのよ」


 顔は笑っているが目は笑っていない。どうやったらあんな表情ができるのだろうか?


「本がある建物に行っていました」


 頭の中ではどうでもいいことを考えながら、ノールの質問に素直に答える。下手に嘘をつくと後々めんどうだからだ。ちなみに前の世界での経験談ね。これ大事。


「昨日言ったことは憶えている?」

「憶えているけど?」


 バカな子を見るような目で見られた。昨日と続き、可哀想な子なのかな? 俺って。


「でも、迷惑はかけてないよ?」

「ならいいけど」


 まだ納得していないだろうが、この話は一旦終わったようだ。


「あと、明日からは私より先に起きて着替えの用意をしておきなさい」


 それだけ言って部屋から出て行くノール。


「は~い。……………………気が向いたら」


 ノールの後ろから雑に返事をしつつ、後についていく。最後の呟きは聞こえなかったようだ。

 さて、いよいよ今日は模擬戦だ。

 そういえば、昨日のあの子は可愛かったな。ノールも寝ているときは可愛いのに。起きているときも可愛いけど、性格がちょっとねぇ。

 なんてことを考えていたら、ノールが急に振り返ってきて、


「本当に昨日の夜は何もなかったでしょうね?」


 と、聞いてきた。勘がいい奴。


「なんもないって」


 ポーカーフェイスで答える。意外と嘘をつくのは得意だ。……前の世界ではばれることが多かったけど。なぜだろう?

 寮を出てしばらく歩くと食堂らしき場所に着いた。出入り口のところには様々な使い魔がいた。モグラみたいなのにコウモリみたいなの、エフィーとはまた違った大きな人型でない精霊やよく分からないのなど。目立っているので赤色をしたでかいドラゴンなんかもいたりするよ。なんでもありだな……そりゃ異世界だからか。


「優もここで待ってなさい。しばらくしたらメイドが食べ物を持ってくるから」

「ん」


 ノールと別れ、俺は近くにあった石に座る。ノールの後にも結構な数の生徒が入っていく。それにつれて使い魔の数も増えていく。生徒、多いな。

 ノールと別れてから十五分もたたないうちに、たぶん生徒全員が集まったのだろうか、生徒の姿は見えなくなった。それからまたしばらくすると十数名のメイドがやってきて、使い魔たちに食べ物を配っていく。最後のほうになってやっと食べ物をメイドから配られる。


「ありがと」

「いえ、しごちょ……仕事ですから」


 受け取った際にお礼を言ったら噛んだ。可愛い。とても。すぐに頭を下げて他のメイドと合流して戻っていってしまった。前髪が長く、顔は隠れていて見えなかったが、頬までは隠せていない。さらに頭を下げた際、少し見えた耳は真っ赤になっていた。

 受け取った食べ物は硬いパン二つ。俺は朝、そんなに食べないのでパンは一つで十分。目立っている明るい赤色をしたドラゴンのところに向かう。


「これ一つ食べない?」

『いいのか?』


 このドラゴンは話が通じるらしい。やったね。


「俺は、一つでお腹いっぱいだから」

『そうか。ありがとう』


 ドラゴンは器用にパンをつまむと口の中に放り込んだ。


「そんなに変わらないかな? 小さなパン一つじゃ」

『いや、そなたの優しさがいっぱいつまっているからの。胸はいっぱいだ』

「よかった。胸は、と正直に言っているのがいいね」


 俺も笑いながら硬いパンを食べ始める。


『我の名はクリムゾン。我が主が鱗の色と同じ名をつけてくれた。クリムと呼んでくれ』

「いい名前だね。俺の名前は三原優。優って呼んで。よろしくクリム」

『ああ、よろしく頼む。優』


 友達ができるっていいよね。前いた世界ではこんなに話せる人は一人だったと思うし。

 ……あれも、話すっていうよりは、一方的に話しかけられたり、追いかけられたりしていただけだったけど。ちなみに俺が逃げるほうね。

 パンを食べ終えたらいいタイミングでノールに呼ばれた。話しながら食べていたからだいぶ時間が経っていたようだ。周りに使い魔がたくさんいたはずだが、半分以上がここにいない。


「ノール。えっと俺の主に呼ばれたからもういくね。また後でクリム」

『ああ、またな優。それに我が主ももうじきくるだろう』


 クリムと別れ、ノールのもとに向かう。


「誰かと話していたの?」

「いんや。一人で食べていたよ」


 面白そうだからノールにはクリムのことについて黙っておくことにした。ノールの後にまたついていくと、今度は広いホールのような場所に着いた。分かりやすく言うと学校の体育館といえばいいだろうか。他の生徒も全員ここにいるだろう。おおよそ百人。誤差は五人ぐらいかな。


「ここは?」

「大広間よ。ここで生徒会長から模擬戦について説明があって、それからその模擬戦の場所に転移されるの」

「へ~。ここにいるのって全員一年生?」

「そうよ」


 食後すぐに戦うとか……辛い。

 なんてことを考えながら話していたら時間になったようだ。壇上に一人の少女が立つ。


「おはようございます。生徒会長のセラ・ディスニーです」


 先ほどまで、友達同士で話していた生徒たちはみんな黙って生徒会長のことを見ていた。


「これから模擬戦について、説明を始めます。今回の模擬戦に参加するのは三人チームが三十三組。二人チームが二組、先生が五人の百八名です」


 生徒会長……面倒だからこれからはセラと呼ぼう。セラの後ろに五名の先生が立ち並ぶ。模擬戦に参加する先生だろう。


「ルールは殺さなければ特にありません。まあ、殺そうとしても殺せないと思いますけど。……戦った相手が戦闘不能もしくは、降参すれば負けた生徒は勝手にここに飛ばされますので安心を。最高の治癒魔術師が五名いますので、たとえ腕が無くなったとしても元に戻せるので大丈夫です。成績は当たり前のように、倒した数が多ければその分成績も高くなります。説明が終わったのでこれからみんなは飛ばされるけど、飛ばされた先にはチームとなった人がいるから。みんな、がんばってね」


 先ほどまでの堅苦しさはどこへいったのか、最後は一気に親しみやすい友達感覚になった。と思っていたら、先ほどセラが言っていたとおりに周りからどんどん光っていき、どこかに飛ばされていっている。俺とノールも眩しいため目を閉じていたが、目を開けて見るとそこは広いホールではなく、どこかの草原に立っていた。少し離れたところに森が見える。俺は近くにあった石を二回ほど手のひらで叩いて座る。しばらく経つとエフィーも飛ばされてきた。


「ノールちゃん。ここは?」

「どこかの……草原みたいね」


 そのまんま! と、喉まできたが突っ込まなかった。後が怖そうだったから。

 ノールとエフィーは周りをキョロキョロと見回している。


「二人とも危機感が薄いと思うよ? 模擬戦はもう始まっているわけだから」


 いつ攻撃されてもおかしくない状況でこれはおかしいと思う。

 ――ま、すでに手は・・うってある・・・・・けど。


「それで、どうすればいいの?」

「なにが?」

「なにが? じゃなくて、なにか面白いことがあるって言っていたじゃない」


 ノールの後ろでエフィーもうなずいている。


「それは後にとっておいて、魔法の授業を始めるよ」

「「……っえ?」」


 二人にバカな子を見るような目で見られた。ノールはともかくエフィーにまでそういう目で見られるとは思わなかった。まあ、そんなことは置いといて。


「いいから、二人ともそこに座って」


 二人とも納得していないが、おとなしく近くにあった石に座ってくれる。というか、俺の話に納得してくれない率が高いと思わない? まあ、いいけどさ。


「…………それに、色々と情報は大事だからね」

「なにか言った?」

「いや何も。そんなことよりも、この世界には魔法の系統? 属性? そういうのは何があるの? たとえばファイアーボールだったら火の系統とか」

「系統魔法のことね。それは火、水、風、土、光、闇の六つだったと思うけど。それに光魔法はエルフ、闇魔法は魔族しか使えないのはさすがに知っているわよね?」

「うん、知っているよ。さあ、授業を始めようか」


 ノールから魔法について俺にとっての必要最低限のことを聞き出し、二人が魔法を使えるようにするための授業を始める。昨日の夜、聞こうと思っていたけど忘れたのは秘密だ。


「まず、学校の授業でどんな魔法があるってならった?」

「そ、それは攻撃魔法と防御魔法のことですか?」


 エフィーとノールの理解力が高くて助かる。俺はどちらかと言うと口下手だからね。


「うん。教えてもらっているのはその二つだけ?」

「そうだけど?」

「まずは、そこからかな。俺は、魔法の種類は三つあると思っている」

「三つですか?」

「うん、三つ。さっき言っていた攻撃魔法に防御魔法。後一つは支援魔法っていうのがあると思うけど、どういったのか大体でいいから分かる?」


 二人は首を横に振る。


「攻撃魔法はそのまま相手を攻撃する魔法。防御魔法もそのまま自分や味方を守る魔法だけれど、ここまでは分かる?」


 今度は縦に首を振る二人。


「支援魔法っていうのは、簡単に言えば力の増幅かな。普通に筋力を上げる。魔法攻撃力や防御力、素早さなんかも上げることができるとかいったの。回復魔法もこの種類に入るね。後は相手を混乱などの状態異常とかにかける、動きを止めるってのもあるね」


 二人とも、へ~っという顔をしている。

 まぁ、アニメや漫画の知識だけどね。それに俺の考えも入るけど。


「そういえば、魔法に関して詳しいけど、優は魔法使えるの?」


 ノールがどこか期待しているような目で俺を見てくる。


「……ごめんね。使えないよ」

「そ、そうだよね……。でもどうしてそんなに詳しいの?」


 見るからに落ち込んだ表情を見せるノール。後ろにいるエフィーも、だ。


「本が好きだからね。よく読んでいたから」


 ラノベだけどね!


「それで続けるけど、魔法を使うのに一番大事なのって想像力だと思わない?」

「想像力ですか?」


 おぉ! エフィーが少し積極的だ。


「そう、想像力。それなしに魔法は使えない」


 俺、魔法使えないのにえらそうだな……。


「と言うわけで、今から始めてみようか」

「始めるって何を?」

「魔法の実践的ななにかだよ!」

「……は、はぁ」


 エフィーに呆れられたよ。ちょっと泣きそう。泣かないけど。


「あ、そのまえにおまじないをしてあげるよ」

「「おまじない?」」

「そ、おまじない。ちょっと俺の前まで来て屈んでくれる?」


 立ち上がって、言われたとおりに俺の前まで来て屈んでくれる。

 俺は二人の頭を二回ほど軽く撫でる。


「はい、おまじない終了」


 二人は立ち上がって体を捻ったりして自分の体を見ている。


「特に変わったところとかないけど?」

「おまじないだからね。まあ、これから俺の言うことをやってみてよ」


 二人とも悩んでいるような感じだったが、また石に座る。まだどこか疑っているみたいだったが、聞くだけ聞いてみてくれるようだ。


「まずは目を閉じて、リラックスして」


 大人しく目を閉じる。


「右手でも左手でもいいから胸の前で人差し指を立てて」


 二人とも言うことを聞いてくれているが、心の中では何でこんなことをするのか不思議でいるだろう。


「そしたらロウソクの火を思い浮かべて。出来るだけ鮮明に」


 眉間に皺が出来ている。どれだけ強く念じているのか。


「肩に力が入っているよ、二人とも。自然体で出来なくちゃ本番で使えないからね。今度はロウソクの火が指先に灯っているように思い浮かべて。魔力を指先に集めるような感じで」


 これはだいぶ時間がかかると思っていた。けれど、そんな心配はいらなかった。だけど魔力を指先に集めるような感じって自分で言っていてよく分かんないのに出来るなんて……。

 二人はほぼ同時に、指先からロウソクのような火が灯った。

 エフィーは青い色を。ノールは赤に紫が少し混じったような色をした火を。


「二人ともそのまま目を開けてみて」


 ゆっくりと目を開ける二人。そして指先に灯る火を見て涙を流し始める。

 しかし、今更ながら本当に模擬戦をやっている雰囲気じゃないよね。

 一応、手はうってあるからいいものの、本来だったら終わっているところなのを理解しているのだろうか? 練習をやると言った俺が言うのもなんだけど。

 ……してないだろうな。いつも下にいることで、勝ちたいという気持ちがあってもどこかであきらめているから、危機感が無くなってきているのだろう。

 俺は、この二人をある程度の魔法が使えるようになるまで、ちょうきょ…………先生になろうと思っていたが、今、考えをあらためた。この二人に下からの景色ではなく、上からの景色を見せてあげようと決めた。


 ──この世界で五指に入る使い手になるまで


 いま、この世界の人たちがどれぐらい強いのか分からない。

 そして二人がどこまで伸びるか分からない。

 途中で放り出してしまうかもしれない。

 それでも俺はこの二人を強くしたいと思った。

 それがただの自己満足だとしても。


 “そして、自己満足じゃなくなることを信じて”

っつても、ストックがあるうちは毎日やけど、切れたら不定期更新になるんやけどね…

ってことでまた次回〜

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